ボッチ席
「あの魔導具が、宝物ですか?」
タンポポが、サスケに尋ねる
「ああ、あれらの魔導具を造ったっていう娘さんは、
天才的なヒラメキの持ち主なんだよ、
ただ、そのヒラメキを上手く生かせていないんだな」
「ホントですか?」
タンポポは、今一つ、
納得出来ない様である
「ああ、例えば、
あの、食べ物を氷付かせたり、
焦がしたりするっていう魔導具だけど、
あれを、風魔法を付与した魔石と組み合わせると、
夏は冷たい風を、
そして、冬は暖かい風を作り出す事が出来るだろ」
「それって、
サスケ様が馬車に付けたみたいな機能ですよね」
ツバキが言った。
「ああ、あれには効率的な問題があって、
馬車の中が狭いから使えているんだが、
広い部屋とかじゃ無理なんだよ、
でも、あの魔導具程の能力があれば、
一般的な広さの部屋だったら、冷やしたり温めたり出来るぞ、
しかも、あれだけコンパクトだから、
部屋の美観も損ねないしな」
「お部屋を、冷やせたり、
温められたら快適そうですわね」
「キキッ!」
「おう、快適な生活が送れる様になるな、
それから、あの井戸の中から、
水を組み上げる魔導具があっただろ」
「ええ、自動じゃない上に、
とても、ゆっくりにしか動かないヤツですよね」と、
ユリが言った。
「ああ、それだ、
あの、魔導具の動きが遅いのは、
トルクを読み間違えているからだな」
「トルクですか?」
「ああ、あの魔導具は桶に入った水どころか、
俺達が、全員乗った馬車を丸ごと持ち上げる力があるぞ」
「ええっ!?
あんなに小さな魔導具に、そんなに力があるんですか」
「ああ、俺が見たところ、
十分に、それだけのスペックがあると思うぞ、
あの、魔導具が遅いのは、
力を強くしようとし過ぎた所為だな、
そこで質問だが、あの魔導具を荷車に付けたら、
どうなると思う?」
「え~と・・・小さな力で、沢山の荷物を運べる?」
「そうだ、お年寄りとか、
子供でも、荷物を満載して引ける様になるな」
「登り坂とかも楽そうですね」
「ああ、物流の大革命が起こるぞ」
「サスケ様が仰りたい事が分かりました。
あの、魔導具店で売られていた物は、
発想が優れているのに、その使用方法が間違っているんですね」
ヒナギクは、先程サスケが言ってた事が理解出来た様だ。
「ああ、隠れたる天才ってやつだな、
この、街を出る前に一度会って、
優秀そうな人物だったら、
是非、我が領にスカウトしたいな」
「そうですわね、優秀な人材の確保は、
領地の発展には欠かせませんから」
どうやら、ミルクも賛成の様だ。
「じゃあ、これから会いに行きますか?」
タンポポが聞いて来た。
「いや、そんなに慌てる事も無いだろ、
今日の、街の観光が終わってからで良いぞ」
「そうですか、分かりました。
では、次はツバキとユリが見つけた
美味しいお菓子を出すという
カフェに行ってみましょう。」
「ほう、美味い菓子か、
それは楽しみだな」
「そう、ですわね」
「キキ~!」
「この店です!サスケ様」
ツバキとユリの案内で着いた店は、
日本の地方都市で時々見掛ける、
チェーン店ではないものの、
ちょっと大きめの喫茶店といった感じの店であった。
「へ~、こっちでは珍しい雰囲気の店だな」
「サスケさん達の世界にも、
こんな感じの店があったんですか?」
「ああ、大都市とかじゃない、
地方都市とかにあって、
変わったメニューを出す店が多かったかな」
「そうなんですか」
サスケ一行は、店の中へと入って見る
「「「いらっしゃいませ~!」」」
店のウェイトレス達が、歓迎の声を上げた。
「へ~、ウェイトレスのユニフォームが、
統一してるなんて珍しいな」
サスケが感心した様に、
こちらの世界では、制服という概念が無いので、
冒険者ギルドの受付嬢以外で、
店の人間が同じユニフォームで揃えているのを、
サスケも初めて見た。
「何か、店員さんが若い娘さんばかりなのですね」
ミルクが言う様に、ウェイトレスのミニスカート姿で、
店の中を飛び回っているのは、
若くて可愛い娘ばかりであった。
「多分、ユニフォームに合わせて、
店員を決めたんだろ」
「そうなのですか?」
「ああ、あの手の服は、
着る人を選ぶんだよ」
(俺も、ミニスカ姿のオバチャンとか見たくないしな・・・)
「お客様方、何名様ですか?」
ウサ耳獣人の、ウェイトレスが尋ねて来た。
「6人です。」
ツバキが人数を告げる
「では、こちらのお席へどうぞ!」
サスケ一行は、ウサ耳嬢の案内で、
店の奥の席へと案内される
「へ~、多人数用の席まであるのか」
サスケらが案内された席は、
地球のファミレスで見る様な、
壁際にベンチの様な20名は座れそうな長椅子があって、
その前に、向い合せて6名使いのテーブルが置かれて、
テーブルの反対側には、3名掛けの椅子が置かれていた。
「お屋敷でもないのに、
こんなに沢山の人が座れる席があるなんて、
面白いですわね」
ミルクが言う様に、貴族の館にある食堂などでは、
多人数の食卓を見かけるが、
一般的な店では、4名掛けの席が普通であった。
「何か、懐かしい感じがするな」
「サスケさんの、居らした所では、
こういった店が一般的だったんですか?」
「ああ、友達とか家族連れで訪れる、
一般的な店は、こんな感じが多かったな、
もっとも、俺は何時も一人だったから、
2名席に一人だったがな!」
「サ、サスケさん、
何か怒ってらっしゃいます?」
「いや、今の幸せを噛み締めているだけだ!」