日本の国民食
「タンポポ、俺のステーキを一切れやるから、
その黄色いライスを一口だけ貰えるか?」
「肉と交換なら、
全然オッケーですよ、サスケ様」
サスケは、タンポポにステーキを取らせると、
ライスを一匙貰って、
まずは、香りを確かめる様にしてから、
口へと運んだ。
「う~ん、ドライカレーっぽいんだけど、
香りが今一つなんだよな~」
「あら?
お客様は、カレーをご存じなんですか?」
サスケの呟きを偶々聞いたメアリーが、
尋ねて来た。
「あっ、お聞きになっていたんですか、メアリーさん、
済みませんね、
折角作って頂いた
お料理にケチを付けてしまいまして」
「いえ、そのドラ・カレは、
冒険者の頃の、勇者ライ様に、
カレーという料理が作れないかと、
依頼された父が作ったものなんですが、
カレーを作る事が出来なかった父が、
出来るだけ近いものをと作った料理なんですよ」
「なる程、そうだったんですか、
確かに辛さはカレーに近いですが、
スパイスの種類が少ない所為か、
香りに奥行きが感じられ無いんですよね」
「ええ、ライ様も、
美味しいんだけど、何か物足りないと、
良く仰っていました。」
「本当のカレーを食べ慣れていたライさんには、
物足りなかったでしょうね」
「カレーという料理は、
そんなに、美味しいものなんですか?」
「ええ、俺やライさんが居た国では、
国民食とまで言われていましたね」
「それ程、万人に愛された料理なんですか、
そう聞くと、一度で良いから食べてみたいですね」
「食べてみますか?」
サスケは『魔倉』にストックしてあった
カレーとライスを取り出した。
「えっ!?
これがカレーなんですか!?」
「ええ、俺は趣味で料理をするんで、
いつも、多めに作ってアイテムボックスに入れてあるんですよ」
「しょ、少々お待ち下さいね」
メアリーは、サスケに告げるや否や、
厨房の方へと引っ込んでしまい、
暫くすると、
シェフらしい人物を伴って戻って来た。
「お客様方、お食事のところを、
お騒がせして済みません
当食堂でシェフを務めて居ります
テツジーンと申しますが、
カレーの完成品があると申しますのは、
本当でしょうか?」
「ええ、これがそうです。」
「おおっ!これがカレーですか」
「ええ、俺やライさんが居た国では一般的な、
ポークカレーという種類のカレーなんですけど、
この国ではポークが手に入らないので、
入手が容易なシモフーリボアの肉を入れてあります。」
「食べてみても宜しいでしょうか?」
「ええ、もう一つ出すんで、
メアリーさんと一緒に食べてみて下さい。」
サスケは、もう一人前を『魔倉』から取り出すと、
テツジーンへ手渡した。
「では、失礼して」
「ご馳走になります。」
テツジーンとメアリーは、
サスケ達のテーブルの、隣の席に着くと、
カレーを食べ始めた。
「これは!?」
「美味しい~!」
「お口に合いましたか?」
「ええ、凄い量の香辛料が使われていますな、
確かに、この香りの奥行きに比べたら、
私が作ったドラ・カレは今一つですな」
「私、辛いものが割と苦手なんだけど、
この料理は、一口食べると止まらなくなりますね」
「ええ、良く冗談で、
中毒性があるんじゃないかって言われてました。」
「この味なら分かりますな」
「うん、分かる分かる」
「気に入って頂いた様で、良かったです。」
「う~ん、しかし味自体は分かったものの、
我が国では、これ程の種類と量の香辛料を入手するのは、
難しいだろうな・・・」
「え~、もう食べられないの?」
「俺の領地で香辛料の栽培をしていますから、
知り合いの商人に頼んで、
定期的に、お送りしましょうか?」
「お客様の領地ですか?」
「ああ、申し遅れました
俺は、ライさんの友人で、
フェルナリア皇国で公爵を、
マッスル・ルクシア両国では子爵を拝命して居ります
サスケ・モンキーフライ・コウガと申す者です。」
「き、貴族様!しかも公爵様ですか!?
こ、これはご無礼をしました。」
「皇国の公爵様でサスケ様と仰ると、
もしかして、英雄様ですか?」
「ええ、英雄の認定を受けました。
ご存じの通り、貴族には成り立てなものですから、
俺自身も、礼儀作法などは碌に分からないんで、
そう、気を使わないで下さい」
「そう、仰って頂けると助かります。」
「ありがとう御座います。英雄様」
「ああ、俺の事は、
英雄じゃ無くて、サスケでお願いします。」
「ご承知致しました。サスケ様」
「サスケ様の、ご領地では香辛料を作られているのですか?」
「ええ、南寄りの場所にあるので、
温暖で香辛料の栽培には適しているんですよ、
また香辛料の他にも、
米や野菜などの栽培に力を入れています。」
「ほう、米も作られているのですか」
「ええ、俺やライさんが居た国は、
主食が米だったんで、まず第一に育て始めましたね」
「香辛料の他に、お米の方も、
お分けして頂けますでしょうか?
ライ様のマッスル王国からも輸入はしているのですが、
生産量が追い付かなく、
少量の確保しか出来ない現状なのですよ」
「ええ、大丈夫ですよ、
俺の品種改良で、病気に強く、育ちが早い米なんで、
必要な量を仰って頂ければ、
香辛料と一緒に、送る様にしますよ」
「ありがとう御座います。
とても、助かります。」
「いえいえ、カレーライスを作れる店が増えるのは、
俺に取っても喜ばしい事ですから」