幕間1
フェルナリア皇国の皇帝であるカムリ8世が、
娘のミルキィ姫に話をしている。
「ミルキィよ、お前の嫁ぎ先が決まったぞ、
アルビナ王国のクロマーク公爵さまだ。」
「お父様、何を仰っているのですか、
私は勇者サブローさまと婚約しているのですから、
他の方に嫁ぐなど出来るはずが無いではないですか。」
「元勇者だ!
それに、サブローは川に落ちて死んだのだ。」
「いいえ、サブローさまは生きていらっしゃいます。
サブローさまをフェルナリア皇国へと召喚した、
宮廷魔術師長のマネイタルネンさまが、
魔力の糸が途切れていないと仰っていました。」
「では、何故サブローは帰って来ないのだ。」
「それは、お父様たちが、
サブローさまに酷い仕打ちをしたからではないですか!
私も部屋に閉じ込めて、
サブローさまに会わせてくれなかったではないですか!」
「嫁入り前の娘を、傷物にされては困るからな。」
「サブローさまとの婚約を発表したのですから、
今更、傷物も無いと思いますが。」
「クロマーク公爵は、それでも構わないと仰ってくれているぞ、
お前とクロマーク公爵が結婚すれば、
アルビナ王国と強い結びつきが出来るのだ、
サブローの所為で我が国は他国に恥を晒して、
信用を失ってしまったからな、
今、勇者ライのお蔭で勢いのあるアルビナ王国と縁を結べば、
我が国が再び他国に対して優位に立てると言う物だ。」
「何故、他国に対して優位に立たねばならぬのですか?
勇者ライさまの仰る様に、皆が仲よく暮らして行けば良いではないですか。」
「ふん!皆が仲よくなどあり得ないぞ、
平和とは力ある者が睨みを利かしてこその物だ。」
「そうしようとして、お父様は失敗したのではないですか、
それが、お分かりにならないのですか?」
「うるさい!お前は大人しくクロマーク公爵に嫁げば良いのだ!
衛兵よ!姫を部屋に連れて行って閉じ込めて置け!」
「「はっ!」」
衛兵たちが皇帝の指示に従って、ミルキィ姫の手を取った。
「は、離しなさい!お父様、まだ私の話は終わっていません!」
「良いから連れて行け!目を離すのでは無いぞ。」
「「はっ!」」
「お父様!お父様!」
ミルキィ姫は衛兵たちに、強引に自室へと連れて行かれてしまった。
自室に戻ったミルキィ姫は、窓から遠くを眺めてサブローを思った。
「サブローさま、
今、どこに居て何をしていらっしゃるんですか、
ミルキィは、サブローさまにお逢いしたいです・・・」