幕間17
ザザ~ッ
全身ずぶ濡れの状態で、
ユーマ湖を見つめるジュリーの視線の先に、
水の中から、直径20メートル程の、
卵を潰した様な、白くて丸みを帯びた物体が、
浮かび上がって来た。
そして、物体の表面に、
縦長の長方形の形をした光が浮かび上がると、
湖畔に佇むジュリーの方向へと、
光の道が伸びて来た。
「・・・・・・・。」
ジュリーが黙って、その光景を眺めていると、
光の道の上を、何者かが滑る様に渡って来て、
湖畔に、ずぶ濡れの状態で佇んでいるジュリーを見ると、
問い掛けて来た。
「コノ寒イノニ、水浴ビデスカ?」
「あんたが乗って来た。
あの、白いのが起こした波で、こうなったんだよ!」
「ソレハソレハ、失礼シマシタ」
その何者かは、何処からか筒状の物を取り出すと、
何かしらの調整の様な仕草をしてから、
ジュリーへと向けて照射した。
すると、ジュリーの体や服が一瞬で乾いて、
驚いた事に、折れた釣竿まで元通りとなっていた。
「その筒は、魔導具なのか?」
「イイエ、コレハ機械ト言ウモノデ、
アナタノ体ノ外部ノミノ時間ヲ戻シタノデス。」
「凄いな、そんな事が出来るのか!?
キカイと言うと、
前に、お頭が言ってたカガクとやらで作った道具か?」
「科学ヲ知ッテイルノデスネ、
ソノ通リデス、コレハ科学デ作ラレタ道具デス。」
「へ~、見た所、
海棲の獣人族とお見受けするが、
タコ獣人の方かな?
あの、空を飛ぶ乗り物と良い、
素晴らしい技術力をお持ちな様だな」
「イイエ、私ハ獣人デハアリマセン
他ノ星カラ、貿易ニタメニ来タノデス。」
「獣人では無い?
他の星って何だ?
他の大陸から来たって言いたいのか?」
「イイエ、星ト言ウノハデスネ・・・」
「?」
「宇宙ッテ言イマシテ・・・」
「?」
「遥カナ、距離ヲ一瞬デ・・・」
「?」
「・・・モウ、他ノ大陸カラ来タ
タコ獣人ト言ウ事デ良イデス。」
「そうか、遠路遥々(はるばる)、
このコウガ領へと、良くお出で頂いたな、
私は、コウガ領を治める御領主サスケ様の配下の者で、
ジュリーと言う者だ。」
「コレハコレハ、ゴ丁寧ニ、
私ハ、ナニワ星カラ参リマシタ
『コテコテ』ト申ス者デス。」
「コテコテさんですね、
宜しくお願いします。
しかし、海から遠く離れた
このコウガの地で、タコ獣人の方と出会えるなんて、
まさに、『栄転でヘベレケ』ですね」
「ソレハ、気持チ良ク酔エソウデスネ」
「あれ?
『青天の霹靂』だったかな?
それとも『A3の職歴』だっけ?」
「ナカナカ、定職ニ付ケナカッタンデスネ」
「まあ良いか、
コテコテさんは、貿易で来たって言ってたよね、
今、ご領主のサスケ様は旅行中で留守なんだけど、
留守中のコウガ領を預かってる、
代官のダンディさんを紹介するから、
一緒に来てくれるかな」
「アリガトウゴザイマス。
デハ、オ願イ致シマスノデ、
一緒ニ、コレデ移動スルトシマショウ」
コテコテは、また何処からか、
宙にフワフワと浮いている、
乗り物らしき物を取り出した。
「さっきの筒を取り出した時も、気になってたんだけど、
コテコテさんて、
獣人なのにアイテムボックスの魔法が使えるの?」
「イイエ、私ハ魔法ヲ使エマセン、
コレハ、異空間ニ荷物ヲ入レテオク道具デ、
『空間庫』トイウ物デス。」
「へ~、凄いんだな、
サスケ様から、頂いた魔導バックみたいに、
何かを持ってるって感じじゃ無いのに、
こんなに大きな物を入れておけるなんて」
「ハイ、コンパクト化ニ励ンダ結果、
コノ大キサニ出来マシタ。」
コテコテが、8本ある腕の内の一本を上げると、
その先に、指輪の様な物が嵌まっていた。
「おおっ!そんなに小さな物の中に、
こんな大きな物が、入っていたって言うのか!?
ところで、このフワフワ浮いてるのって乗り物なの?」
「ハイ、私タチノ星デハ、
一般的ナ乗リ物デ『エアカー』ト言イマス。」
「こりゃ、面白そうだな、
じゃあ、行先を指示するから、
乗せて行って貰うとしようかな」
「ドウゾドウゾ」
ジュリーが、コテコテの指示に従って、
イスらしき物に腰掛けると、
コテコテの操作で、エアカーが音も無く、
滑る様に走り出した。