金の玉が納まる袋
「アルビナ王様、その節は、
大変、お世話になりました。」
「ご無沙汰して居ります。アルビナ王様。」
ザドス王国を後にしたサスケ一行は、
次なる目的地のアルビナ王国へと到着して、
控室に、ヒナギク達やチビリンを残して、
サスケとミルクのみで、
アルビナ王との謁見に望んでいた。
「うむ、頭を上げて下され英雄殿、
英雄認定の事はライにも頼まれたのでな、
気にしないで下され、
それから、ミルク殿も久しいな、
健勝そうで何よりだ。」
「「はい、ありがとう御座います。」」
「この国に来る前に、
ザドス王へも会ったそうだな、どうだ?
相変わらず脳キンであったか?」
「はい・・・い、いえ、その様な事は・・・」
「ハハハ、気にする事はないぞ、
あやつが脳キンなのは、
ライたちも周知の事だからな」
「は、はぁ」
(アルビナ王様も、どちらかと言えば・・・)
「それで、今日はどうしたのだ?
英雄認定会議の事だったら、
先程も言ったが、気にする事は無いぞ」
「はい、そのお礼もあったのですが、
今日は、お礼も兼ねまして、
こちらをアルビナ王様に、お贈りしようかと思いまして、
ご持参致しました。」
サスケは『魔倉』から品物を取り出して、
アルビナ王に見せた。
「ほう、それは煌びやかな美しさを持った
衣装だな、
初めて目にしたが、何と言う名の服なのだ?」
「はい、この衣装は、
私がホーリークロウラーの糸を使って紡いだもので、
私やライ様が、生まれ育った国の衣装でキモノと申します。
その国の女性達が、
晴れの日に着飾る為の服で御座います。」
「ほう、ホーリークロウラーの貴重な糸で、
英雄殿が紡がれた女性の衣装とな・・・
何故、それをワシに贈るのだ?」
アルビナ王は、心持ち疑念を感じている様な視線で、
サスケに質問を投げ掛けて来た。
「はい、それはライ様より、
アルビナ王様が女そ・・・ハッ!
そ、そう!アルビナ王様は奥方を大事になさる方だから、
この衣装を贈ると、喜ばれると伺ったんですよ」
サスケは、ライから、
アルビナ王に女装癖がある事を聞いて居り、
その際に、
もし、その情報をライが洩らしたら、
ライの、お宝袋のシワが無くなるまでハンマーで叩かれるから、
くれぐれも、本人には言わない様にと注意されたので、
ダチョウ的な前フリかと考えて、敢えて告げようとしたのだが、
何か、得体の知れない予感を感じたので、
中止したのであった。
勿論、このサスケの予感には理由があって、
黒魔法の上位の魔法に『監視虫』というものがあり、
この魔法は、体長1センチ程の透明な魔法生物を使って、
対象を監視出来るのだが、
対象相手が気配察知スキルを持っていても、
気付かれないという、優れものであった。
そして、その魔法を、
サスケが、アルビナ王国へ向かうと聞いたライが、
一応の保険の為に、
パサラに頼んで使って貰い、
サスケが話しそうだと聞いたライは、
もし、サスケの所為で、
自分の、お宝袋がシワが無くなるまでハンマーで叩かれたら、
サスケにも、それ以上の苦しみを与えてやるぞ!
と誓ったのであるが、
サスケの、野生のカンが敏感に察知して、
それを、回避したのであった。
「ふむ、そうであったか・・・分かった!
ありがたく、頂いておくとするぞ」
「はい、どうぞ、
お納め下さいませ、
サイズは大きめに造ってあるので、
王様でも十分に着られますよ」
「今、何て?」
「い、いえ、サイズは大き目となって居りますので、
奥方様以外の方でも着られると思いますと・・・」
「ふむ、そうであったか、
合い分かったぞ」
「はっ」
「ふ~、危ないところだった・・・」
アルビナ王との謁見を終えたサスケが、
冷や汗を拭いながら呟いた。
ちなみに、遠く離れたマッスル王国でも、
国王のライが、同じ様に呟いていたのだが、
サスケに、知る由は無かった。
「先程のアルビナ王様との、
やり取りは何ですの?」
サスケとアルビナ王との会話に、
違和感を感じたミルクが問いを掛ける
「ミルク、世の中には、
知らない方が幸せな事があるんだよ」
「は、はあ、そうなんですか・・・」
「ああ、そうだ。
良し!アルビナ王との謁見も無事に終えた事だし、
次は、いよいよ、
リーナさんの、親父さんが店を構えているっていう、
タナーカの街を目指すぞ!
今から、お会いするのが楽しみだぜ」
「そうですね」
「ミルクは、タナーカの街に行った事があるのか?」
「いえ、私は行った事が無いのですが、
世界的にも有名な街ですね、
特に、冒険者の方達は、
一生に一度は訪れてみたい街と聞いて居ります。」
「確か、勇者イチロー縁の街なんだっけ?」
「ええ、勇者イチロー様が、
勇者と成られる前に、
冒険者として登録されたのが、この街と伺って居ります。」
「タナーカの街・・・タナカ・イチローか、
大昔にも、日本から召喚された人が居たって事かな・・・」




