国民性
ヤホーの街にて、
目的であったヒナギクらの冒険者カードを、
無事に入手したサスケ一行は、
目的地であるザドス王国との国境へと到達していた。
「身分を証明出来るものを提示する様に」
いつもの忍者服に身を包んで馬車の御者台に座る
サスケとタンポポを冒険者と見たのか、
フェルナリア皇国側の国境で警備に当たっている兵士が言って来た。
ちなみに、タンポポはイガ村を出立した時の忍者服ではなく、
ヒナギク達と共に、サスケ特製の身体強化や速さ倍増の機能が、
付与された忍者服を来ている、
これは、冒険者になった記念に、
自動回復や状態異常防止が付与された忍者刀と一緒に、
サスケよりプレゼントされた物であった。
「はい。」
国境なので、サスケは冒険者カードではなくて、
英雄証明書の方を提示した。
「英雄様!?では、サスケ公爵様で在られますか!」
「ああ、そうだ。」
「し、失礼を致しました。
どうぞ、お通り下さいませ」
「うむ、ご苦労さん」
「はっ、ありがとう御座います。」
少し進むと、
今度はザドス王国側の国境警備所で、
同じ様に声を掛けられる、
「身分を証明出来るものを提示して下さい」
「はい。」
サスケは、同じ様に英雄証明書を提示した。
「こっ、これは!?
あなたは英雄様で、いらっしゃいますか?」
「ああ、そうだ。」
「俺とヤリませんか?」
「何をだよ!?」
「ザドス王国でヤルと言ったら、
模擬戦に決まってるじゃないですか」
「俺は、この国に来るのは初めてだから、
そんな事しらねぇよ!」
「そうなのですか、
それで、英雄様が我が国を訪れた目的ですが、
やはり、益荒男達との模擬戦の為ですか?」
「何が、『やはり』何だか全然分からないけど、
俺が、この国に来たのは、
ザドス王と、お会いする為だよ」
「ほう、ザドス王と模擬戦を・・・」
「違うよ!
いい加減に模擬戦から離れろよ!」
「えっ?
模擬戦で来たんじゃ無いのですか?」
「何、不思議そうな顔してんだよ!
それ以外の用事で、
この国に来る人なんて、いくらでも居るだろうが!」
「ハハハ、また御冗談を」
「冗談は、お前の脳筋だよ!」
「では、英雄様と私の模擬戦に関しましては、
取り敢えず置いて置きまして、
どうぞ、お通り下さいませ」
「お前と模擬戦する予定は今後もねぇ!」
「まあ、そう言わずに、
英雄様、先っちょだけで良いですから」
「模擬戦の、先っちょって何なんだよ!?」
多少のトラブルはあったものの、
サスケ一行は無事にザドス王国入りを果たしたのだが、
王都へと向かう道すがら、
サスケは度々(たびたび)、兵士達や傭兵達に模擬戦を挑まれた。
「サスケ様、
毎度の事ながら大変ですね」
今日も御者台で馬車を走らせるサスケの横には、
ヒナギクが座っていた。
「ホントだよ、
話には聞いていたけど、
予想以上に、脳筋だらけの国だな」
「何方からか聞かれていたのですか?」
「ああ、知り合いが、
この国の王女様なんだけど、
傭兵王国って呼ばれるだけあって、
この国では、腕っぷしの強さが国民に尊敬される基準らしいぞ」
「それは、また徹底していますね」
「ああ、フェルナリア皇国に召喚された俺でも、
職種がシーフってだけで、あれだけ苦労したんだから、
この国が、
昔から、こんな感じだったとしたら、
同じシーフ職のサイゾウ様は、
相当な苦労をしたんだろうな・・・」
「そうですね」
国境を越えて1週間が過ぎ、
馬車の旅を続けるサスケ達の目に、
いよいよ、ザドス王国の王都ザドスが見えて来た。