情報館
サスケがピロンの街へと来てから1か月が過ぎ、
今日も、いつもの様に冒険者ギルドへ、
クエストの完了報告を済ましに訪れていた。
「サスケさまが、この街に来てから、
もう一か月ですね。」
「そうだな。」
「ピロンの街にも慣れて、
私とも大分打ち解けましたね。」
「街には慣れたが、
モモヨさんと打ち解ける日は金輪際来ない。」
「オホホホホッ、サスケさまったら御冗談ばっかり、
ファンシーラビッツの狩り行きますか?」
「キョンシーだろ!」
「冗談はさておき、明日はどうされますか?」
「今夜は遅くまで治療薬の製造をする予定だから、
明日はクエストは受けないぜ。」
「分かりました。」
常宿としている『鳥の骨亭』へと帰ったサスケは、
食事を済ませた後に、自室へ行って治療薬の製造を行った。
「ふう、こんなもんかな。」
予定の数量を造り終えた頃には、
もう、空が明るくなって来る時間だった。
「ふぁ~、さすがに眠いから、一眠りするか。」
サスケは一つ欠伸をこぼしてから、ベットに横になった。
サスケは、太陽が既に高く昇った頃になって目覚めた。
「ふぁ~、良く寝たぜ、腹減ったから食堂で何か食べるかな。」
食堂に行くと女将さんが声を掛けて来た。
「昨夜は夜遅くまでゴソゴソしていた様ね、
若いから仕方が無いけどハアハアの、し過ぎは体に毒よ。」
「人聞きの悪い事は言わないで下さいよ、
あれは錬金をしていただけです。」
「まあ、ハアハアも何かを生み出す行為と考えれば錬金と言えるかね。」
「ハアハアから離れて下さい!」
(しかし、宿屋で錬金を続けるのも限界かもな、
冒険者ギルドに行って空き家が無いか聞いてみるか。)
サスケは、ピロンの街に来るまでに壊滅させた盗賊たちから、
ぶん捕った現金や貴金属、宝石類などが5千万ギル程あり、
治療薬や魔力回復薬の売り上げも2千万ギル程稼いでいるので、
作業場兼住宅を購入しようと考えて冒険者ギルドを訪れた。
「あら、サスケさま、今日はお休みでは無かったんですか?」
「ああ、クエストは受けないんだけど、
ギルドで住宅の斡旋をしていないか聞きに来たんだ。」
「ええ、冒険者向けの物件を紹介していますよ、
何か条件とか、ご予算とかありますか?」
「ああ、錬金や鍛冶をやりたいから作業場付きで、
予算は一千万ギルぐらいかな。」
「それでしたら、錬金術師ギルドを引退された、
シンディーさまのお屋敷はいかがでしょうか?」
「成る程、元錬金術師の家なら十分な作業場がありそうだな、
でも、後輩の錬金術師が買ったりしなかったのか?」
「この街に、そんなに稼いでいる錬金術師は居ませんからね。」
「そうか、シンディーさんが中級治療薬を造れる、
唯一の錬金術師って言ってたもんな。」
「そう言う事です。」
「じゃあ、その物件を見せて貰おうかな。」
「ええ、ご案内させて頂きます。」
「えっ!?モモヨさんが案内するの?」
「はい、昼間はギルドを訪れる冒険者の方達が少ないので、
私が一人ぐらい抜けても問題ございません。」
「それなら、ベテランのモモヨさんじゃなくて、
若手のメーリアンさんとか、バフィさんとかが良いんじゃないの?」
ギルド受付嬢のメーリアンさんは羊タイプの獣人で、
バフィさんは魔族である。
「いえ、2人とも私に、ぜひ行って欲しいとの事ですので、
ねっ!!」
「「は、はい!」」
「はぁ~、もう良いよ、モモヨさん案内お願いします。」
「畏まりました。」
モモヨさんの案内で訪れた元シンディー邸は、
冒険者ギルドとも、レトリバーさんのお店とも程よい近さにあって、
立地条件としては最高だった。
「でも、モモヨさん、
ここって敷地面積も建物も大き過ぎるんじゃない?
とてもじゃないけど一千万ギルで買える物件とは思えないんだけど・・・」
「はい、シンディーさまは、
ここで、お弟子さんたちを育てられていたので、
普通の住宅より部屋が多いんですよ、
確かに、この大きさの物件なら、
通常でしたら2千5百万ギルは下らないでしょうが、
シンディーさまより錬金をされる方が買いに来たら格安で売るようにと、
申し付かっております。」
「それって、自分の後輩や弟子とかに売りたかったんじゃないの?」
「シンディーさまの、お弟子さんたちは、
世界各地で一角の人物となられていらっしゃるので、
こんな地方都市には参られませんね、
あと、この街において、
シンディーさまの後が務まるのはサスケさましか居られませんよ。」
「そうか、分かったよ、
先輩から、ありがたく譲っていただく事にするよ、
それで、幾ら支払えば良いんだ?」
「800万ギルです。」
「えっ!?そんなに安い値段で良いのか?」
「はい、この街への貢献を期待しての値段ですよ。」
「分かった、清算はギルドで良いのか?」
「はい、結構です。」
「じゃあ、これから支払いに行くよ。」
「承りました。
あっ!一つ伝え忘れた事がございました。」
「何だ?」
「私は2階の日当たりが良い角部屋希望です。」
「お前の部屋はねぇ!!」