チョロパッパ
「それで、村長さん、
この村では、どの様な料理を食べられているのですか?」
「はい、この様な田舎町ですので、
山菜のお浸しやテンプラ、
畑で採れた野菜を漬け込んだものなどが、
良く食べられていますな、
後は、草原で狩ったシモフーリボアやホロホロ鳥、
川で獲った魚などですかな・・・」
「そうですか、
では、俺の方は米を炊いたご飯を、
食べ易く丸めたオニギリという料理の他に、
マッドパイソンを焼いてヤキニクを作りますね。」
「ほう、マッドパイソンというと、
ルクシア共和国では、良く食べられていると聞きますな。」
「ええ、少し癖がある肉なんですけど、
俺が造った『ピロン焼肉のタレ』に浸け込んでから焼くと、
癖が抜けてご飯に合うんですよ。」
「あっ!街にお使いで行った時に、
『ピロン焼肉のタレ』って聞いた事があります。
フェルナリア皇国では、余り流通していないから、
貴族様ぐらいしか食べられないって言ってました。
まさか、サスケ様が造られたとは驚きです!」
ユリが驚いた様子で発言した。
「あ~、皇国には余り出荷していなかったから、
こっちの方までは来ていなかっただろうな。」
「何故、
皇国には余り出荷していなかったのですかな?」
村長が尋ねて来る。
「あ~、イガ村の人達になら話しても良いか・・・」
「ええ、この方達なら大丈夫だと思いますわ。」
ミルクも同意して来た。
「実は、俺はサイゾウ様と同じく、
皇国によってニホンから召喚された
勇者候補だったんですよ。」
「「「「「おおっ!?サスケ様もニホンから!?」」」」」
「ええ、それで、
俺も魔族の罠に嵌まって、
皇国に恥を掻かせたもんだから、
始めから居なかった様な扱いを受けていたんです。
そんな生活に我慢が出来なくなった俺は、
ルクシア共和国へと移り住んで、
師匠や、周りの皆のお蔭で、
英雄にまで成れたという訳です。」
「それでは、まるで・・・」
「ええ、サイゾウ様の上手く行ったケースが、
俺って感じですかね、
だから、ヒナギクさん達から、
サイゾウ様の、お話を聞いた時に、
とてもじゃ無いけど人事とは思えなかったんですよ。」
「その様な事があったのですか・・・」
「良く、その様な事があったのに、
皇国の王女であるミルク様と結婚出来ましたね。」
「私が王女の地位を捨て去って、
ルクシア共和国のサスケさんの元へと、
押し掛けたのですわ。」
「わ~!ミルク様やるぅ!」
「押し掛け女房とは、思いきりましたね。」
「ええ、あの時は必死でしたので、
何でも出来る様な気がしていましたわ。」
「それが、今回あった『魔王熱』の件を解決した事で、
和解した訳なんですね?」
「ええ、何時までも、
いがみ合ってても仕方が無いので、
水に流す事としました。」
「そして、今までのお詫びも込めて、
お父様が、サスケさんを皇国の公爵位へと、
叙爵した訳ですわ。」
「その様な事が、皇国で起きていたなどとは、
露程も気が付きませなんだ。」
「ええ、皇国も隠す様にしていたので、
中央の一部の者しか知らないと思いますよ。」
「その様な重要な事を、
私共に教えても宜しかったのですか?」
「ええ、イガ村を含めた
この森は、俺の領地となった訳ですから、
村長さん達は身内も同然ですからね、
身内には、俺の事を理解して置いて貰いたかったので、
お話する事と致しました。」
「分かりました。
イガ村の村民一同、
サスケ様の信頼に応えられるべく、
行動して行く事をお約束致しましょう。」
「はい、宜しくお願いします。」
それから、晩飯の準備に取り掛かったサスケたちだが、
サスケは考えがあって、
『魔倉』に大量に保管してある、
ご飯やオニギリは使わずに、
魔法で釜戸を造って、
『魔倉』から出した鉄釜で米を炊き始めた。
ヤキニクの方は、同じく魔法で造った
大きな焼き台の上に金網を乗っけて置いて、
マッドパイソンの肉はタレに浸け込んでおき、
食べる直前に焼く事とした。
「サスケ様、ゴハンを炊いている釜の蓋の周りから、
シューシューと蒸気が噴き出していますけど、
蓋を取らなくて良いんですか?」
調理を手伝って貰っているヒナギクが尋ねて来た。
「ああ、その蒸気圧が重要なんだよ、
ニホンには、
『始めチョロチョロ、中パッパ、赤子泣いても蓋取るな。』って、
ご飯の炊き方を現した言葉が残っているぐらい、
ご飯は炊きあがるまで、蓋を取らない様にしているのさ。」
「へ~そうなんですか、
お聞きしていなかったら、
直ぐに蓋を上げちゃいそうですね。」
「ああ、その辺も、
村の人達に憶えて貰おうかと思ってね。」
「それは、どういう事ですかの?」
様子を見に来た村長が聞いて来る。
「俺の『魔倉』
あ~、アイテムボックスの様なものの中に、
米の他に、種籾や苗も入れてありますので、
イガ村に提供しますよ。」
「それは、この村でもコメが作れるという事ですかの!?」
「ええ、土の質は悪く無い様だし、
村の近くにある泉の水も良質ですから、
水路を作って田んぼに引き込めば、
良い米が育つと思いますよ。」
「おおっ!サイゾウ様が夢見て成し得なかったコメ作りが、
300年の時を経て、漸く叶うと言う訳ですな。」
「ええ、ニホン人が米に掛ける思いは分かりますから、
良い米が出来たら、
サイゾウ様の墓前にも供えてあげて下さい。」
「ええ、必ずや、お供えしますとも!」