サスケの仮説
「サスケ様の仮説ですか?」
「ええ、実は俺の部下にも、
職種が忍者の者達が居るんですけど、
武器の手入れぐらいは、自分で出来た方が良いと思って、
鍛冶の作業を教え込んだんですよ、
すると、鍛冶の腕前がある程度になった段階で、
皆、中忍へとレベルアップしました。
その時は、それ程気にしていなかったんですけど、
一人、錬金術もやってみたいと言う者が居たので、
教えて見た所、ある程度のレベルの、
治療薬や魔力回復薬を調合出来る様になった段階で、
その者だけが、上忍へとレベルアップしたのです。」
「ほう、上忍は我が村でも、
久しく確認されて居ませんな。」
「ええ、ヒナギクさん達からも、
そう聞きました。
長い事、忍者としての修行を積んで来られた
イガ村の皆さんが到達していない上忍へと、
元冒険者の私の部下が成れた事から鑑みると、
ニンジャマスターへと至るには、
修行によって下忍になった者が、
鍛冶や錬金などの生産職を究めたら成るのではないかと、
俺は考えるんですよ。」
「なる程、それは非常に興味深いお話ですな、
確かに、我がイガ村の開祖であるサイゾウ様は、
刀を打ったり、薬水作りや忍者服作りが得意であったと、
伝わって居りますな、
ニンジャマスターを目指すばかりに、
忍者の修行のみに打ち込んでいたのが、
却って遠のく結果となっていた訳ですな。」
「残念ながら、そうだと思います。」
「う~む、そうと分かれば、
私たち年寄りは仕方が無い事だが、
若い者たちには挑戦させてあげたいものですな、
どうでしょうサスケ様、
ヒナギクたちを、サスケ様の部下として、
使って頂けませんでしょうか?」
「ヒナギクさん達をですか?」
「無論タダでとは申しませんぞ、
我らイガ村の村民一同、
サスケ様に忠誠を尽くすとお約束致します。」
「いえ、そこまでして頂く訳には行きませんよ、
確かに、皆さんの様な手練れが、
味方に加わって頂くのは助かりますが・・・」
「サスケさん、
このお話を受けた方が宜しいのではありませんか?」
「えっ?ミルクは、そう思うのか?」
「はい、サスケさんが気にされているのは、
サスケさんが一方的に得をすると、
考えられているのでしょうが、
イガ村の皆さんにも、
サスケさんの保護下に入る事で、
他の貴族とのトラブルを防げるというメリットがあります。」
「そうなのか?
でも、この隠れ里に住んでる分には、
他の貴族とのトラブルも無いんじゃないのか?」
「この村に来る時に少し話したではありませんか、
この村へと続く道に施されている結界は、
徐々(じょじょ)に弱まって居ります。
シーフ職を持つ者なら、気付く者も居ると思いますよ、
現に、コギクちゃん達を誘拐した者が、
入り込んだではありませんか。」
「そうか、そういう事なら、
イガ村の皆さんに部下になって貰った方が良いかもな、
でも、どういう形にすれば良いんだ?
長年住んで居る、この土地を捨てて、
付いて来て貰う訳にも行かないだろ。」
「お父様に話して、
この村がある森を頂けば良いではありませんか、
あれ程サスケ様に、
皇国の領地を持って欲しがっていたのですから、
二つ返事で了承すると思いますよ。」
ミルクの父、フェルナリア皇国の皇帝カムリ8世は、
皇国の公爵となったサスケに対して、
ルクシア共和国とマッスル王国から領地を受けているのだから、
皇国からも受けてくれと、再三に渡って要請していたのだ。
「管理が難しいからと、今まで断っていたけど、
この森ぐらいなら、
村長さんに代官を務めて貰えば良いか。」
「ええ、お父様も喜ばれると思いますわ。」
早速、皇帝に魔導通信機で問い合わせてみたところ、
ミルクの言葉通りに、直ぐに了承の意を表明してくれた
そればかりか、気が変わられては困るとばかりに、
国の内外へと、直ちに発表するとの事であった。
「陛下が、俺の領地にして構わないってさ。」
「そう仰ると思いましたわ。」
「そういう訳で、
村長さん、この森は俺の領地となりましたから、
管理の方を宜しくお願いしますね。」
「畏まりました。
村人一同、こちらにて研鑽を続けて、
有事の際は、直ちに駈け付けますので、
今後とも、宜しくお願い申し上げます。」
「ええ、こちらこそ宜しく、
それから、ヒナギクさん達の事は、
ちゃんと引き受けますので、
ご安心を・・・」
「ありがとう御座います。」
「それでは、話し合いが付いた事ですし、
新しい仲間となったイガ村の皆さんへ、
俺から、晩飯をご馳走させてくれませんか?」
「それでは、話しが逆ですぞサスケ様、
これから、お世話になるのは我らの方なのですから、
夕餉の準備は当方で行います。」
「村長さん、サスケ様にご馳走になった方が良いと思うよ!」
「これ!タンポポ、何を申して居るんじゃ!」
「村長さん、サスケ様のご馳走って、
米を使った料理なんだよ。」
「何!?米というと若しかして、
サイゾウ様が作ろうとして、成し得なかったという、
あの米なのか!?」
「そう、その米だよ、
お昼に、ご馳走になったんだけど、
サイゾウ様が、何とか作ろうとなさったのが、
良く分かる美味しさだったよ。」
「ぬ~、米か、
しかし、サスケ様にご馳走になる訳には・・・
だが、食してみたいのも確かじゃ・・・」
「では、こうしたらどうでしょう?
お互いに料理を作って、
ご馳走し合えば良いんですよ。」
「ううむ・・・分かりました!
サスケ様に、そこまで仰って頂けるのならば、
そう致しましょう!」
「そうですか、良かったです。」




