オムチキ
フェルナリア皇国の山奥に隠れ住むという、
イガ村を目指すサスケ一行は、
サスケが御者を務める馬車に、皆を乗り込ませて、
街道を進んでいた。
「申し訳ありません、
公爵様に御者を、やって頂くなんて恐れ多いのですが、
うちの村には、馬や馬車が無いので、
私たちでは、操車が出来ないのです。」
恐縮した様子で、
リーダーのヒナギクが言って来た。
「ああ、気にするな、
御者は良くするし、自分で改造した馬車だから、
愛着もあるしな。」
「サスケ様が、改造されたのですか?」
「ああ、振動や音が気になったから、
軽減したんだよ。」
「馬車って、こんなに振動や音がしないものなんだと、
感心していたのですが、
実際は違うんですね。」
「ええ、そうですよ、
私も、サスケさんの馬車に乗るまでは、
体中が痛くなったし、
音が煩くて、走行中に会話など出来ませんでしたわ。」
「へ~、それ程なんですか、
では、サスケ様の技術力は凄いんですね・・・」
「ええ、この馬車に乗られた
他国の王族の方々も欲しがる程ですわ。」
「それ程なんですか!?」
「ヒナギク君、
イガ村には、後どれくらいで着くんだ?」
「そうですね・・・
この馬車の速度なら、後1時間といった所でしょうか?」
「そうか、じゃあ、
そろそろ昼になるから、昼食を食べるとするか。」
「サスケさま、
なにか、おいしいモノくれるの?」
「コ、コラ!
コギク、何、失礼な事を言ってるのよ!」
「ハハハ、構わないぞ、
コギクちゃん、美味しいお昼をご馳走するから、
楽しみにしとけよ。」
「ワ~イ、ワ~イ!」
「もう・・・」
サスケは、街道の脇に少し拓けた場所を見付けると、
馬車を停めて、昼食の支度を始めた。
「サスケ様が、調理をなさるんですか!?」
「ああ、料理は趣味なんだ。」
「皆さん、驚かれると思いますよ、
サスケさんの料理は、どれも絶品ですから。」
サスケは『魔倉』から、
態と冷まして置いたゴハンを取り出すと、
フライパンで炒め始めた。
「サスケ様、その白いのは何ですか?」
ゴハンを見たタンポポが尋ねて来る。
「ああ、これは、
コメと言う穀物を炊いたもので、
ゴハンって言うんだ。」
「「「「コメ!?」」」」
「みんな、コメを知ってるのか?」
「はい、サイゾウ様が、
栽培されようとしていたそうなのですが、
結局、断念されてヒエやアワなる物を、
食されていたと聞いて居ります。」
(あ~、俺の場合は、女神様から貰ったスキルで、
稲を出したから栽培できたけど、
原種を改良してなんて素人じゃ無理があるもんな・・・)
「そうだったのか、
じゃあ、せっかくだから、これ食ってみろよ。」
サスケは『魔倉』から、ホカホカのオニギリを取り出すと、
皆に手渡した。
「サスケ様、これは?」
「オニギリって言うんだけど、
俺的には、ゴハンを一番美味しく食べる方法だと思うものだよ、
さっ、暖かい方が美味しいから、食べた食べた。」
「は、はい、では頂きます。」
「「「「「「「いただきま~す!」」」」」」」
「おお~っ!これがコメなのか!
噛めば噛むほど甘みが出て来る気がするな!」
「ほんのりとした塩味が絶妙ですね!」
「私は、周りに巻いてある草の香りが好きだな。」
「確かに、サイゾウ様が栽培しようとされたのが、
良く分かる美味しさですね。」
「その、オニギリの周りに巻いてあるのは、
海で採れる海藻でノリって言うんだ。」
「サスケさま、ウミってナ~ニ?」
「ああそうか、海って言うのは、
しょっぱい水が、池や泉よりも、たくさん溜っている所だよ。」
「ふ~ん、そうなんだ、
しゅっぱいミズが、そんなにタクサンあったら、
シオがイッパイつくれるね。」
「それが、そう簡単には行かなくて、
海の水から塩を作るのは難しいらしいぞ。」
「それはザンネンだね。」
「ああ、まったくだ。」
皆に、オニギリを振る舞ったサスケは、
昼食作りへと戻った。
ホロホロ鳥の肉と、野菜を細かく切った物を炒めてから、
先程、炒めたゴハンに混ぜて、
トマトのペーストと、塩コショウで味を調えてから、
お皿に盛り付ける、
後は、ホロホロ鳥の卵を半熟に焼いたものを、
上から被せれば出来上がりだ。
「よ~し!サスケ特製オムチキンライスの出来上がりだぞ!」
サスケは、トマトのペーストを上に塗りながら宣言した。
「先程、頂いたオニギリと同じ、
コメを使った料理ですね。」
「ああ、さっきのはシンプルに塩味のみで楽しんで貰ったが、
こっちは色々な味を楽しんでくれよ。」
「では、早速、いただきます。」
「「「「「「「いただきま~す!」」」」」」」
「これは!う・ま・い・ぞ~!」
「トロトロ卵と、酸味の効いたゴハンが絶妙です!」
「サスケさま、ちょ~おいしいです。」
「こんな、おいしいもの食べたの、はじめてです。」
「チビリンちゃん、こんな、おいしいもの、
いつも食べられてイイな~。」
「キキキ~!」