消された歴史
「コギクたち、
中々(なかなか)、目を覚まさないな・・・」
心配そうに、タンポポが呟いた。
「これを、飲ませてみろ。」
サスケは、『魔倉』から中級治療薬を取り出すと、
リーダーのヒナギクに手渡した。
「公爵様、これは?」
「俺の事はサスケって呼んでくれ、
それは、中級治療薬だよ、
殆どの状態異常から回復する筈だから、
子供たちも目覚めると思うぞ。」
「ちゅ、中級治療薬なんて、
高価なものを使う訳にはいきません!」
「ああ、それは俺が造ったもんだから、
タダで構わんぞ。」
「サスケ様が造られた?
サスケ様は錬金術も、お出来になるのですか?」
「ああ、ちなみに鍛冶も出来るぞ、
この忍者刀は、俺が造ったんだぜ。」
サスケは、忍者刀を鞘から抜いて見せた。
「刀鍛冶まで!?
それと、やはり、
その刀は、忍者刀なんですね、
それを、お使いになられていると言う事は、
サスケ様も忍者スキルを、お持ちになってらっしゃるんですか?」
「ああ、ニンジャ・マスターだ。」
「「「「ニンジャ・マスター!?」」」」
「やっぱり、実在していたのね!」
「作り話じゃ無かったんだ!」
「サイゾウ様の伝説は真実だったんだ!」
「まさか、ニンジャ・マスターのスキルを持った
お方に、実際にお会い出来るとは!」
「どう言う事だ?」
「はい、サスケ様、
私たちの村は『イガ村』と申すのですが、
およそ300年程の昔に、
サイゾウ様と仰る、お方が作った村と言い伝えられて居ります。
その、サイゾウ様のお持ちになっていたスキルが、
ニンジャ・マスターだったと伝わっているのですが、
サイゾウ様以来、そのスキルに目覚める者が居なかったので、
存在が危ぶまれていたのです。」
「へ~、300年も前に、
俺と同じスキルを持った人が居たんだ・・・
300年前と言えば、
勇者イチローが活躍した頃だな。」
「はい、サイゾウ様もザドス王国によって召喚された
勇者候補だったそうです。」
「へ~、そうなんだ、
ミルクは知ってるのか?」
「いえ、サイゾウ様と仰る、お方は存じ上げません。」
「サイゾウ様の事は、歴史から消されているので、
私らの村の者しか知らないと思います。」
「どうして、歴史から消されたんだ?」
「はい、村に伝わる話では、
サイゾウ様が、魔族の奸計によって、
世界に仇なす行為を働いた為に、
ザドス王国によって居なかった事にされたとの事です。
ザドス王国で暮らせなくなったサイゾウ様は、
フェルナリア皇国の山奥へと、落ち延びて、
イガ村を作ったそうです。」
「マジか・・・」
「サスケさん、それって・・・」
「ああ、とても他人事とは思えんな。」
「サスケ様、
実際にニンジャ・マスターのスキルを、
お持ちになったお方を、
村の者たちにも、逢わせてあげたいので、
一緒にイガ村へと、
お出で頂く訳には行きませんでしょうか?」
「ああ、急ぎの旅という訳でも無いし、
俺も、サイゾウさんが作ったっていう村を、
この目で見てみたいから構わないぜ。」
「ありがとう御座います。
では、頂いた治療薬で、
コギクたちを、
今、起こしますので、少々お待ち下さい。」
「ああ、分かった。」
「サスケさん、
チビリンちゃんが眠らせた誘拐犯は、
どうするのですか?」
「ああ、魔導通信機で陛下に連絡して、
近くの街から、兵士を寄越して貰う様にしよう。
そいつが乗って来た馬車の中にある檻に、
縛って転がしておけば、
魔獣に襲われる事も無いだろ。」
「分かりました。」
「う・・・う~ん、あれ?」
「コギク、目が覚めたのね!」
「お姉ちゃん、ここどこ?」
「あんた達、悪いヤツらに攫われたのよ。」
「お姉ちゃん達が、助けてくれたの?」
「あちらに、いらっしゃる、
サスケ様たちが助けて下さったのよ、
ちゃんと、お礼を言いなさい。」
「サスケ様、お姉さん、ありがとう。」
「おう!」
「どう致しまして。」
「キキ~!」
「そうそう、あの小さな子も、
コギクたちを助けてくれたのよ。」
「うわ~可愛い!
この子、何て言うの?」
「そいつは、チビリンって言うんだ。」
「チビリンちゃんも、ありがとうね。」
「キキッ!」
「どう致しまして、だってさ。」