救出
「まずは、君たちの言い分から聞かせて貰いたいんだが、
誰かリーダーは居るのかな?」
「はい、私です。」
黒のロングヘアーを巻き上げて留めている、
真面目そうな感じの娘が名乗り出た。
「そうか、じゃ君から話を聞くとするかな、
俺はサスケって言うんだが、
君の事は何て呼べば良いかな?」
「私の名前はヒナギクと申します。」
「そうか、ヒナギクさんか分かった。
それで、ヒナギクさん達は何で、
この馬車を追い駆けていたのかな?」
「その御者を含んだ一味が、
私たちの村から子供たちを攫ったんです。」
「う、嘘だ!そいつらは盗賊なんだ!」
御者が慌てた様に大声を出した。
「あんたの話は後から聞くから、
ちょっと黙っててくれないか。」
「そ、そいつらの話を聞く必要なんて無いんだ、
俺はフェルナリア皇国からの依頼を受けて、
税を納めない村から、
奴隷にする子供を集めているだけなんだよ、
そ、そうだ!俺の邪魔をしたら皇国の兵士に捕まって、
重い罰を受ける事になるぞ!」
「ほう、皇国からの依頼ね・・・
ミルク、税が納められないからって、
子供を奴隷として捕まえるなんて事あるのか?」
「いいえ、そんな話は聞いた事がありません。」
「た、ただの冒険者が、
そんな事を知っている筈が無いだろ!
俺は、皇帝陛下からの指示で動いているのだから、
早く解放した方が身の為だぞ!」
「この辺の土地って、
陛下の領地なのか?」
「ええ、確かに、
お父様の領地では、ありますね。」
「じゃ、一応確かめてみるか・・・」
「お前たち、一体何を言ってるんだ?」
サスケは、『魔倉』から魔導通信機を取り出すと、
皇帝へと連絡を取った。
(俺の叙爵式の後に、
陛下にも魔導通信機を渡して置いたのが、
早速、役に立ったな。)
「あっ、もしもし陛下ですか、
ええ、サスケです。
先日はお世話になりました。
実は・・・」
サスケは、今日、遭遇した出来事を皇帝に相談して、
確認を取った。
「ええ、分かりました。
俺の方で対処して置きますので、
また宜しくお願いします。」
サスケは、魔導通信機を切った。
「その魔導具は・・・あんた達、一体・・・」
「陛下は、お前なんて知らないって言ってるぞ、
それと、税が払えないからって子供を攫うなんて、
ありえないとの事だ。」
「あんた達は、一体何者なんだ?」
「俺か?
俺は、先日、フェルナリア皇国の公爵に叙爵された。
サスケ・モンキーフライ・コウガ公爵だ。」
「英雄サスケ!?
すると、こちらの方は・・・」
「ああ、皇帝陛下の娘ミルクだよ。」
「王女様!?
くそっ!」
御者が、馬車を置いて突然逃げ出した。
「チビリン、逃がすな!」
「キキッ!」
タンポポの首に刀を突き付けていたチビリンが、
シュッと消えた。
「うわっ!」
声がしたので、ナデシコたちが、
そちらの方向を見てみると、
チビリンに刺された御者が、ドサッと倒れ込むところだった。
「公爵様?
あいつを殺しちゃったんですか?」
「いや、チビリンの刀には、
ホントは眠り薬が塗ってあるだけなんだ、
だから、あいつは眠っているだけさ。」
「そうなんですか・・・」
ナデシコたちは、誘拐犯とはいえ、
目の前で死なれるのは、寝覚めが悪いのか、
ホッとした表情をしている。
「さて、子供たちを救出するか。」
「「「「はい!」」」」
サスケたちが馬車に乗り込むと、
大きな檻の中に、
数人の子供たちが閉じ込められて居り、
薬を使われたらしく、皆、眠って居た。
「くそ~鍵が開かないや、
あいつが持ってんのかな~?」
大きな錠前をガチャガチャやっていたタンポポが、
根を上げた。
「ちょっと、退いてみ。」
サスケは、タンポポを錠前から退かせると、
忍者刀でキン!と切り付けた。
ガチャッ!と、真っ二つに切れた錠前が、
下に落ちるのを見たナデシコたちが息を飲んだ。
「鋼鉄製の錠前を真っ二つなんて!?」
「見ろ!あの刀、刃こぼれ一つして無いぜ!?」
「あの刀って、私たちのと似てるわね・・・?」
「刀も然る事ながら、
公爵様の腕前も相当なものよ。」
「子供たちに怪我は無い様だな、
どうやら、薬で眠らされているだけみたいだ。」
檻を開けて、子供たちの様子を見ていたサスケが、
ナデシコたちに告げた。
「コギク!しっかりするのよ!」
ヒナギクが、良く似た子供を抱き上げて、
声を掛けて居る。
「コウメちゃん、目を開けて!」
コウメちゃんは、コギクちゃんと同じくらいの年で、
地方の村の子供らしく、素朴な可愛さを持っている。
「ノバラ、もう大丈夫だぞ!」
ノバラちゃんは、2人より少し年上に見える、
将来が楽しみの美少女だ。
「コケモモ、村に帰れるんだぞ!」
タンポポに、両肩を掴まれてガクガクと揺さぶられている、
コケモモ君は、唯一の男の子で、
眠ってはいるものの、快活そうな顔をしていた。
「しかし、子供の名前にコケモモって・・・」