トレジャーハント
「魔力波測定器と言えば、
追加で30台程造って来たので、
子供たちの教育に役立てて下さい。」
サスケは、『魔倉』から、
新しい魔力波測定器を取り出すと、テーブルの上に並べた。
「おおっ!これは助かりますな、
学院の経営が大変な時なので、
助かります。」
学院長のエクリプスは、サスケに礼を言った。
「学院の経営が大変なんですか?」
「ええ、ご存じかと思いますが、
魔法学院は元々、フェルナリア皇国が運営していたものを、
各国の共同経営という形にしたのですが、
運営費の5割を皇国が負担して、
残りの5割を各国で負担しているんですよ、
それで、今回の『魔王熱』騒動によって、
皇国の財政が傾いたものですから、
運営費の拠出が難しいとの連絡があったのです。」
「5割は大きいですね。」
「ええ、頭の痛いところです。」
「俺たちは、これから各国を回る予定ですから、
運営費の増額を、各国に働きかけてみましょうか?」
「おお、それは助かりますな、
お願い出来ますか。」
「分かりました。」
「それで、サスケさん達は、
これから授業の見学をする予定でしたかな?」
「ええ、ひと通りの授業を見学させて頂いてから、
街の観光をしてこようかと考えています。」
「そうですか、では授業の方はナビに案内させましょう。」
「ありがとう御座います。」
サスケと、ミルクとチビリンは、
ナビの案内で、子供たちの授業風景を見学して回ったのだが、
子供たちに、チビリンが大人気だったのは言うまでも無い。
「じゃあ、後は適当に、
俺たちで観光して来ますから、
ナビさん、ご案内ありがとう御座いました。」
「分かりました。
どうぞ、ごゆっくり。」
サスケ達は、ナビに礼を言って別れた。
「サスケさん、ライ様から伺った『忌山』に、
行ってみるのですか?」
「ああ、パサラちゃんが封印されていたという、
クリスタルを見てみたくてね。」
サスケは、ミルクとチビリンを伴って、
当時の年齢で、既に父親である『魔王』の魔力を、
上回っていたパサラを恐れた
時の為政者たちが、
パサラを封印していた『忌山』を訪れる事とした。
「ここが『忌山』か・・・
ホントに、草一本生えていないんだな。」
「サスケさん、この山全体を魔力が覆っていますよ。」
「そうか、ミルクは魔力を目視出来るんだったな。」
「はい、私の目には白魔法の波動が見えています。」
「へ~、見た目は黒い山なのに、
覆っている魔力は白魔法なんだ。」
「はい、恐らく封印系の魔力だと思います。」
「どの辺から出て来ているのか分かるか?」
「山の中腹辺りの魔力が濃いですね。」
「パサラちゃんは、
山の頂上の入り口から入って、
地下の方に封印されていたって、
ライさんが言ってたから、
山を覆っている封印の元は、どうやら別の場所の様だな、
先に、パサラちゃんが封印されていた場所を見てから、
そっちに回って見るとするか。」
「分かりました。」
「キキッ!」
サスケたちは、ライに聞いた道を辿って、
パサラが封印されていた地下の空間を訪れた。
「おおっ!確かにライさんが言ってた通りに、
クリスタルのカケラみたいなのが、
バラバラになって転がっているな。」
「これは、もしや!」
「これが、何か知ってるのかミルク?」
「はい、この魔力の波動は、
恐らく『精霊石』だと思われます。」
「どれどれ、『解析』っと・・・
うん、ミルクが言う通りに『精霊石』で間違い無いな。」
「これ程、大量の『精霊石』なんて、
私は初めて見ました。」
「貴重なもんなのか?」
「はい、魔石とは比べ物にならない程の、
大量の魔力を溜めておける物なので、
その需要は、とても高い物なのですが、
強力な魔力が溜っている鉱山から、
極少量しか産出されない物なので、
貴重品となって居ります。」
「じゃあ、これだけの量があれば、
ラメール国の財政が少しは楽になるかな。」
「はい、かなり潤うと思いますよ。」
サスケたちは、手分けして『精霊石』を集めると、
『魔倉』に収納してから、地下の間を後にした。
「次は、山を覆っている魔力の元を調べる番だな、
ミルク、どっちの方から魔力が出てるか分かるか?」
「はい、あちらの方向だと思います。」
サスケたちは、
ミルクが見て、魔力が濃く見えている方向を、
目指して移動する事とした。
「あそこから、出ている様ですね。」
ミルクが、指差す方向を見ると、
石で作られた小さな祠の様な物だ建っているのが、
サスケの目に入った。
「行ってみよう。」
「はい。」
「キキ~。」
サスケたちが近付いてみると、
それは、縦・横・奥行1メートル程の石の箱に、
これも石で出来た屋根が、片流れの形で乗っている物だった。
「良く今まで、誰かに触られなかったもんだな。」
サスケの言葉に、
ミルクが石箱の、扉の様な部分を見てみると、
『この扉に、決して触れるべからず』と掘り込んであった。
「俺なら、絶対、触っちゃうけどな。」
「多分、この山が、
地元の人達から、良く無い場所と思われていたから、
人自体が近付かなかったのでしょう。
草木や魔獣も居ないので、
冒険者の方達が付かづく機会も無かったでしょうし・・・」
「なる程な・・・と言う訳で、
早速、扉を開けて見るとするか。」
「気を付けて下さいね。」
「キキッ。」
「ああ、一応、
ミルクたちは、少し下がっててくれるか、
チビリン、ミルクを護っててくれよな。」
「分かりました。」
「キキ~!」
サスケは、
ミルクとチビリンが、少し離れたのを確認してから、
石箱の扉に手を掛けて開いた。