特効薬
フェルナリア皇国にて猛威を振るっている病、
魔王熱の特効薬の製造に目途が立ったサスケは、
直ちに、聖教会の重鎮であるサクラへと、
特効薬を量産する為の、手伝いをする錬金術士の派遣を要請した。
それと同時に、サンたちに『ソーマ』の原材料となる、
ホーリークロウラーの素材を採取に行かせたり、
自らは、転移魔導具を駆使して、
カマゾネス村へ行き『賢者の石』を入手したり、
ケンタウロス村にて『ウコン』を入手したりした。
「ヴィン爺ィ、魔王熱は特効薬で治療するとして、
原因となっているらしい『サダ湖』は、
どうすれば良いかな?」
「魔王熱は、
『魔王のカケラ』によって引き起こされるそうじゃから、
白魔法による『浄化』が効果があると思うぞい。」
「白魔法のスペシャリストと言えば、
マッスル王国の、ルクアさんだな。」
サスケは、マッスル王国に居るライへ、
魔導通信機で連絡を取り、ルクアの協力を取り付けると、
すぐさま、転移魔導具でマッスル王国へと跳んで、
沢山の魔石に、ルクアの強力な『浄化』の魔法を、
付与して貰った。
「ありがとう御座います。
ルクアさん。」
「いいえ、一部とはいえ、
私の国も、皇国とは接しているのだから、
とても、他人事では居られないわ、
それに、外に出たからと言っても、
皇国がミルクさんの母国なのに変わり無いんだしね。」
「ええ、そうですね。」
サクラが派遣した、教会の錬金術士たちや、
ヴィン爺ィ、スクルたちと共に、
サスケは、不眠不休で特効薬作りに励み、
ようやく、1万本の特効薬が完成した。
「でも、1万本で足りるのかな?」
「症状が軽い者なら『浄化』の魔法で回復するから、
この特効薬は、症状が重い者にだけ与える様にすれば良いぞい。」
「そうなんだ、
分かったよヴィン爺ィ、
そんじゃ、皇国へ向かうとするぞミルク。」
「はい、サスケさん。」
「お頭、馬車の操車の方は任せて下さい!」
「え~、ロリーが操車するのか?」
「今回は、
仕方がありませんよ、お頭、
ウチらの中で、一番早く馬車を走らせられるのは、
ロリーなんですから。」
「お前らは、ロリーの操車でも良いのか?」
「いえ、お頭、
今回は、なるべく馬車を軽くした方が早くなりますから、
私と、リンとジュリーは残ります。」
「お前ら、逃げたな~!」
「「「いえ、決して、その様な事は・・・」」」
3人は、サスケから目を逸らしながら言った。
結局、皇国へ向かうのは、
サスケとミルクの他は、
重量に、余り関係が無いチビリンと、
馬車を走らせるロリーのみとなった。
サスケは『魔倉』に特効薬と、
『浄化』が付与された魔石を仕舞い込むと、
魔導具で強化された馬たちが引く、
同じく魔導具で軽量化された馬車へと乗り込んだ。
「そんじゃ、行って来るぜ。」
「皆さん、行って参ります。」
「キキ~!」
「今日も、カッ飛ばすぜ!」
「「「行ってらっしゃい、お頭、ミルクさん。」」」
「「「「「行ってらっしゃいませ、ご主人様、奥様。」」」」」
「「「「キキキ~。」」」」
「お主らが留守の間も、特効薬作りは進めておくぞい。」
皆の見送りを受けて、
サスケとミルクは、
もう、帰る事は無いだろうと思っていた皇国の、
皇都へ向けて出発した。
「ハイヤ~!」
ロリーが声を掛けると、
馬たちがガッ!と地面を蹴りつけて、
ゴッ!という音と風を残して、馬車が走り去った。
「うわあぁぁぁ~!早すぎるぅぅぅ・・・」
馬車と共に、サスケが上げる悲鳴が、
ドップラー効果で小さくなりながら、
消え去って行った。
普通に行けば5日は掛かる皇都への旅であるが、
ロリーの操車技術と、
魔導具による馬たちへのドーピングの効果もあって、
一昼夜で皇都の城が見えて来た。
「や、やっと見えて来た・・・」
サスケは、息も絶え絶えな様子である。
「いいえ、サスケさん、
ヴィン爺ィ様が仰っていましたが、
まずは、元を絶たねばなりません、
皇都は一度通り過ぎて『サダ湖』を目指さねばなりませんわ。」
「ええっ!一度、皇都で休もうよぉぉぉぉ・・・」
再び、サスケの叫びが消え去って行った。
「陛下、しっかりなさって下さい!」
病に伏せる皇国の皇帝カムリ8世の枕元で、
皇国宰相のバケテナーイが声を掛けている。
皇帝の体を覆う黒点は、
既に、かなりの大きさとなって居り、
皇帝の主治医を務めるヤーブーも、
回復は望めないと悟っていた。
「バケテナーイよ、
私は、もう然程長くはないのであろう。」
「何を仰いまするか陛下、
陛下ともあろう、お方が、
そんなに弱気な事で、どう致しまするか!」
「もう良い、
自分の体の事は、自分が一番良く分かるのだ。」
「へ、陛下!」
「死に行く者の頼みを、
一つだけ聞いては貰えぬか?」
「何で御座いますか?陛下。」
「お主が、サブロー殿やミルキィと、
もし、会う機会が訪れたら、
私が、詫びを言っていたと伝えて欲しいのだ。」
その時、皇帝と宰相の会話に割り込む、
第三者の声が上がった。
「い~や、そいつは直接言って貰わなきゃ、
許す訳には行かないな。」
年明けは、3日か4日に再開致します。
良いお年を!