ポリゴン面
「陛下、コウガ領へと向けて放った間者が、
一人として戻って参りません。」
フェルナリア皇国の皇帝であるカムリ8世の元へと、
宰相のバケテナーイが報告に訪れた。
「何!?
それは、どう言う事だ?」
「戻らないので、正確な事は分かりませんが、
あの偽勇者めが、何らかの防衛措置を、
講じたと見るべきでしょうな。」
「う~む、今までは自由に入り込めた事から考えても、
そう見るべきであろうな、
よし、コウガ領内へは立ち入らぬ様にして、
国境の間際で監視しながら、
こちらへと報告を入れる様に指示を出しておけ。」
「御意に。」
皇国の皇帝と、宰相が会話を交わす少し前、
ルクシア共和国とマッスル王国の共有地として、
新たに立ち上げられたコウガ領に置いて、
領地の中心となる『コウガの街』(旧ギッテルの街)の、
領主の城に置いて、
新領主のサスケと、その妻のミルク、
そして、サスケの下で新たな代官として、
コウガ領を運営して行くダンディが話し合いをしていた。
「しっかし、この城は、
キンキラキンの成金趣味みたいで、
品が無いよな。」
「ええ、貴族なので、
ある程度の装飾は必要ですが、
これは、少しやり過ぎですわね。」
「お館様、
ここは、センスのある私めが、
他の貴族家の連中が、
感心する様な城へとリフォーム致しましょうか?グワッツ!」
サスケは、ダンディが経営していた宿屋『豚の骨亭』が、
とても良いセンスで飾られていた事を思い出して、
返事を返した。
「ああ、もっと領内が落ち着いたら、お願いするよ、
余計な置物とかは処分しちゃって良いから、
代金はリフォーム費用とか、領地の運営費にあててくれ。」
センスは兎も角、
金や宝石を、ふんだんに使った置物等は、
高値で売れるだろうと見たサスケが、
ダンディへ告げた。
「畏まりました。グワッツ!」
「さて、この城の方は、それで良いとして、
コウガ領は、何から手を付ければ良いかな?」
「領民の混乱に乗じて、
諜報活動を行う間者が、
入り込んで来ると思いますから、
国境線の強化をした方が良いと思いますわ。」
「奥様の、ご意見に私も賛成です。
不安になっている領民を扇動して、
騒ぎを起こされると鎮圧などで、
余計な時間が取られますから。グワッツ!」
「そうか、国境線の警備の強化か・・・
今現在は、その辺は、どうなってんだ?」
「はい、ギッテル領に居た皇国の兵士たちは、
先日、捕虜を返還する際に、
一緒に皇国へと送還致しましたので、
今現在の国境の警備は、
ピロンの街の、ご領主様よりお借りした兵士の方達によって、
守られています。」
「オークス様から、借りた兵士の人達でって言っても、
そんなに多くは無いんだよな?」
「はい、ここコウガの街の、
他の街や村で警備に当たる者も必要でありますので、
そう多くの人数を、
国境のみに割く訳にも行きませんからな。グワッツ!」
「街や村の警備は、
ちゃんと血の通った普通の兵士の人達に当たって貰いたいから、
国境を警備するゴーレムでも造るかな。」
「ゴーレムと言うと、
チビリンちゃん達や、ハンターウルフで造ったみたいなのですか?」
「いや、今回は威圧感を持たせる為にも、
もっと大きくて、見た目もゴーレムっぽく造るとしよう。
ゴーレムが出来るまでの間は、
サンたちに依頼して警備に当たって貰うとするかな。」
「サンさん達なら安心ですね。」
「ああ、へたなシーフ連中じゃ、
あいつらの目を掻い潜っての、
国境越えは不可能だろうな。」
「ヴィン爺ィ様や、ダンミーツさん達は、
この城に、お呼びにならないのですか?」
「ああ、ヴィン爺ィたちを呼び寄せるのは、
もっと、領内の政治が安定してからだな、
ピロンの街にある屋敷は、チビリンたちに護らせているし、
オークス様にも、お願いしてあるから大丈夫だろう。」
ミルクやダンディと打ち合わせた通りに、
サスケは、ピロンの街より、
サンたちを呼び寄せると、国境の警備へと当たらせた。
度々(たびたび)に渡って皇国の間者が、
コウガの領内への侵入を試みたが、
その事如くが、サンたちに寄り阻まれて無力化された。
「お頭、捕まえた間者は処分するんですか?」
「そんな、勿体無い事、する訳無いじゃん、
それなりの腕前は持ってるヤツらだから、
催眠の魔法で洗脳して、
マッスル王国との間にある『魔の森』で、魔獣を狩らせているよ。」
「なる程、リサイクルって訳ですね。」
「そう言う事だな、
あと、明日から、お前たちは国境の警備を止めて、
コウガの街の警備に移ってくれるか。」
「じゃあ、新しいゴーレムって言うのが完成したんですか?」
「おお、出来上がったぜ、
倉庫に居るから、見てみるか?」
「はい、是非、拝見させて下さい。」
サスケは、国境の警備から、
報告と、捕まえた間者を連れて来たサンとリンを伴って、
城の倉庫へと訪れた。
サスケが、倉庫の大きな引き戸をズゴゴゴゴッ!と、引き開けると、
サンたちの目に、巨大な何かが整列しているのが、見て取れた。
「こっ、これは・・・
皆、2メートルを遥かに超える大きさですね。」
「お頭、このゴーレムのベースになった魔獣って、
何なんですか?」
「おう、ライさんに相談したら教えてくれたんだけど、
アルビナ王国に生息しているメタルモンキーって魔獣なんだよ、
体が、やたらと硬くて、黒魔鋼製の剣で切り付けても、
剣の方が折れるんだぜ。」
「それは、驚きの硬さですね。」
「お頭、このゴーレムの顔って、
ゴツゴツしているけど、何か私に似ていませんか?」
「そりゃ似てるさ、俺が一番慣れているのは、
チビリンがベースのゴーレムだからな、
こいつらもチビリンと一緒で、
お前がモデルになってんだよ、
そうだな・・・全部で20体造ったから、
ゴリリン1(ワン)、ゴリリン2(ツー)とかって名付けるかな。」
「チビリンたちは、まだ良いけど、
ゴリリンは、ちょっとヤダな~。」