布告
サスケとミルクの結婚披露パーティーの席上で、
サスケが子爵の爵位を叙爵されると、
発表されてから3日後の午後、
ピロンの街にある、領主のスライバーの城に置いて、
サスケの授爵式が行われていた。
「ルクシア共和国、マッスル王国の両国に置ける、
子爵の爵位をサスケに授ける。」
ライが美しい装飾が施された剣を、
サスケの肩に押し当てて告げた。
「謹んで叙爵致します。
我が剣は、我が国と、我が君を護る為に振るわれる事を、
ここに誓います。」
サスケが、それに答えてから剣を受け取って叙爵が成った。
「これで、ようやくサスケも貴族の仲間入りだな。」
「そうですね、
でも、自分で造った剣を、自分に下賜されるって、
何か変な感じですね。」
「そりゃ、しょうがねぇな、
サスケは、この国でも・・・
いや、この世界でもトップクラスの鍛冶師だからな。」
「トップクラスは言い過ぎじゃないですか?」
「いや、こと魔法剣に関しては、
サスケの腕前はカナリのもんだと思うぞ、
普通の剣で、業物と呼ばれる優れた剣は数々あるけど、
それに、魔法を付与するとなると至難の業だからな、
良い剣が魔法を付与し易いとは限らないから、
造った剣に確実に魔法が付与出来るサスケの剣は、
規格外だと思うぜ。」
「あれ?剣て、
皆が皆、魔法が付与出来る訳じゃ無いんですか?」
「むしろ、付与出来る剣の方が珍しいと思うぞ。」
「じゃあ、兵士が100人魔法剣を持っている、
ピロンの街って・・・」
「街に限っての火力で言えば、
世界でもトップクラスだろうな。」
「知らなかった・・・
魔法剣って、もっと有り触れた物だと思ってました。」
「まあ、ルクシアと、ウチの国以外には、
気軽に売らない様にしてくれれば良いさ。」
「分かりました。
気を付ける様にします。」
サスケに爵位を与えてからの、
ルクシア共和国とマッスル王国の行動は素早く、
翌日には、国の内外に向けて大々的に発表された。
各国の街の布告が掲示される場所には、
『ルクシア共和国及びマッスル王国の危機を救った英雄として、
サスケに両国の子爵の爵位を与えて、
サスケ・モンキーフライ・コウガ子爵家を起こし、
フェルナリア皇国より賠償として譲渡された土地を、
新たな領地として与えてコウガ領とする。』旨が貼り出された。
当然、フェルナリア皇国の街では発表されなかったが、
他国から訪れる商人や冒険者などによって、
国民へと情報が入ってくるのを防ぐ手立ては無かった。
「おい、あの偽勇者がルクシアとマッスル王国で貴族になって、
領地を与えられたらしいぞ。」
「どう言うことだ?
何の能力も持って居なかったんじゃ無かったのか?」
「それが、あの『怒髪天』を退けたと言う話だぜ。」
「ええ!?あのゴンザレス千人隊長が負けたって言うのか!?」
「ああ、それも、部下の殆どが討死したって話だ。」
「『怒髪天』の部下って言やぁ、
傭兵王国のザドス王国の兵士にも、
引けを取らない精鋭揃いって話だろ、
じゃあ、あの偽勇者の実力もカナリのもんじゃ無いのか?」
「いや~、一人で、そんなに沢山の相手と戦える訳が無いだろ、
きっと周りのヤツらが強かっただけじゃ無ぇのか?」
「それで、あの偽勇者が貴族に成るのは変じゃ無ぇか?」
「それも、そうだなぁ・・・」
この手の噂はアッと言う間に広がって行くので、
10日もすれば、皇国内でも多くの国民が知る事となっていた。
「おのれ、ルクシアとマッスルめ、
寄りによって、我が国から巻き上げた土地の領主として、
あのサブローめを据えるとは、
我が国に対する挑発のつもりなのか!」
皇国の皇都に聳え立つ城の執務室で、
皇帝のカムリ8世が怒りの声を上げていた。
「いえ、恐らくは、
我が国が、偽勇者やミルキィ様へと、
手を出し辛くする為の策略でしょう。
もし我が国が、あの二人に対して何らかの行動を起こせば、
他国からは、ルクシアやマッスルに対する侵略行為に見える様に、
計算した事と思われます。」
「なる程な、今の我が国は、
ザドスやアルビナへの、隙を与える訳にもいかんからな、
仕方が無い、サブロー及びミルキィに関しては、
暫くの間は、間者を放つなどして情報収集に徹せよ。」
「はっ、御意に。」
その頃、ピロンの街にある、
サスケの屋敷に客が訪れていた。
「ごめん下さいませ、
サスケ様は、御在宅でしょうか。グワッツ!」
「ご主人様、どなたか、
お客様がお見えになった様です。」
「ああダンミーツ、
あの人は、顔を見なくても誰か分かるから、
居間へ案内してくれるか。」
「はい、畏まりました。」
少しすると、ダンミーツに案内されて、
黄色のチャイナドレスに身を包んだ男が居間に入って来た。
「お久し振りです。ダンディさん。」
「こちらこそ、
ご無沙汰致しましたサスケ様。グワッツ!」
「手紙でお願いした件ですが、
こちらへと、お出で頂いたと言う事は、
お受け頂けると考えて宜しいのでしょうか?」
「はい、私も何か新しい事を、
始めたいと考えていた時でしたので、
サスケ様からの、領地運営のお話しは、
私に取っても、渡りに船で御座いました。グワッツ!」
「それは良かったです。
じゃあ、ラッスンの街の『豚の骨亭』の方は、
弟のボンビィさんが引き継がれるんですか?」
「はい、経営が安定した物件を運営するのは、
弟の方が向いているので、安心して任せられます。グワッツ!」
「今度、ダンディさんに見て頂く領地は、
フェルナリア皇国から、
ルクシア共和国とマッスル王国へと所有権が変わった場所なので、
領地に暮らして居る人達も、暫くは混乱するでしょうから、
まずは、その辺から、お願い出来ればと思います。」
「はい、分かりました。
私も、領地経営は初めての試みなので、
その辺りに詳しいアドバイザーをお付け頂きたいのですが、
お願い出来ますでしょうか?グワッツ!」
「ええ、俺の妻になったミルクが、
前に領地経営なんかの勉強をした事があるそうですから、
アドバイス出来ると思います。」
「奥様なら、ご安心ですね。グワッツ!」
「前から、そんなに『グワッツ!』って言ってましたっけ?」
「登場人物が増えたので、
私なりにキャラを立てようかと思いまして。グワッツ!」
「キャラ立てとか言うな!」




