甲賀
「サスケ、叙爵の話を受けてくれて助かったぞ。」
来賓の祝辞も終わり、
皆が、思い思いに動き回って食事や会話を楽しみ始めた頃、
サスケとミルクの元へ、ライと領主のスライバーがやって来た。
「ええ、ウチの連中の事を考えても、
保険は多い方が良いですからね。」
「ああ、俺やオークスさんも、
サスケには、出来るだけの協力をして行くから、
何でも相談してくれよな。」
「ええ、ありがとう御座います。
それで、さっそくのご相談なんですけど、
ライさんか、オークス様の知り合いで、
どなたか領地を取り仕切る代官が務まりそうな方が、
いらっしゃいませんか?」
「あ~代官か、俺の国は新興国の所為もあって、
人材が不足しているからな~、
サスケに紹介出来る程の人物は、ちょっと思いつかんかな、
オークスさんは、どなたかいらっしゃいませんか?」
「サスケ、モモヨに相談してみたら、どうだ?」
「モモヨ、お断りです!」
「いや、そうじゃ無くて、
あいつは顔が広いから、
誰か優秀な人物を知ってるんじゃないかと思うぞ、
それに、モモヨが居なくなると、
この街の冒険者ギルドが立ち行かなくなるから、
あいつはダメだな。」
「そう言われて見れば、
冒険者のクエストで、あちこちの街に行く度にモモヨさんの、
知り合いが居たよな・・・
分かりました。誰か良い人が居ないか相談してみます。」
「うむ、それが良いと思うぞ。」
「あとサスケ、叙爵して領地持ちになるんだから、
家名を決めなくちゃなんないぜ。」
「あれって自分で決めれば良いんですか?」
「おう、同じ家名だとダメって言われるから、
なるべく変わったのにした方が良いぜ。」
「それで、ライさんはマッスル王国にしたんですね。」
「ああ、あっちの言葉なら、
まず被らないだろうと思ってな。」
「なる程、それは参考になりますね。」
「明後日に、オークスさんの城で、
簡単な叙爵式をやっちゃうから、
それまでに考えて置いてくれるか。」
「分かりました。」
ライとスライバーが自分の席へと戻ったのを見計らって、
サスケは、モモヨの元に相談に行って見る事とした。
「モモヨさん、ちょっと良いですか。」
「ムムム~ムムムムム。」
「口の中に一杯入っている料理を飲み込んでから、
返事をして下さい。」
「モグモグモグモグ、ゴックン。
サスケ様が作った料理って美味しいですわね。」
「それは、良かったです。」
「それで、私に相談とは何でしょうか?」
「モモヨさんの、お知り合いで誰か、
領地の管理を出来そうな方が、いらっしゃいませんでしょうか?」
「そうですわね・・・
ダンディは、如何でしょうか。」
「ダンディさんて、
ラッスンの街のダンディ・イタイノさんの事ですか?」
「そうですわ、彼女・・・いえ、彼は見掛けはアレですけど、
優れた経営センスを持っているから、
領地の運営も熟せると思いますわよ。」
「確かに宿は大繁盛していたしな・・・」
「彼は、客が入らなくて潰れた宿を買い取って、
繁盛店にまでした手腕ですから、
期待が持てると思いますわ。」
「でも、ダンディさんに来て貰うのは良いのですが、
宿の方が立ち行かなくなっちゃうんじゃ無いんですか?」
「宿の方は、弟のボンビィに任せれば良いのですわ、
兄のダンディは攻めの経営が得意なんですけど、
弟のボンビィは守りの経営が得意ですから、
あそこまで軌道に乗っていれば、
宿の方はボンビィでも十分です。」
「なる程、そうなんですか、
分かりました。
ダンディさんに打診してみます。」
「ダンディがダメだったら、
特別に、私が代官になりましょうか?」
「それだけは、お断りします。」
サスケの叙爵の話題も手伝って、
結婚披露パーティーは大盛況のうちに幕を閉じた。
その日の夜、
サスケの屋敷の居間に、
いつものサスケ家のメンバーと、
ライの家族が集まって寛いでいた。
「お頭、この前の戦に、
何でアタイたちを連れて行ってくれなかったんですか?」
リンが、サスケに質問して来た。
「そりゃ、リンたちが冒険者だからだよ。」
「お頭だって、冒険者じゃないですか。」
「俺は、今回の騒動では当事者だったからな、
さすがに知らない振りは出来ないさ、
戦ってもんは、貴族や兵士や傭兵なんかがやるもんだからな、
そりゃ、その地を納める領主に依頼された冒険者が、
傭兵の真似事みたいな事をする事もあるが、
自主的に参加なんかしたら、
普段から集団戦闘の訓練を積んでいる兵士の人達の、
邪魔になるだけだと思うぞ。」
「そうだな、自分が暮らす街が危ないとか言う事態になったら、
戦闘に参加するかも知れないけど、
冒険者が自分から進んで戦に赴くなんて事は無いかな。」
サスケの言葉を、ライも肯定する様に発言した。
「へ~、そうなんですか。」
「そうね、私たちも冒険者をやってた頃は、
クーデターに巻き込まれた事はあっても、
戦に参加した事は無かったわね。」
「その節は世話になったね。」
ルクアの言葉に、エルザが答えた。
「やっぱり、元S級冒険者の皆さんでも、
戦に参加した事は無かったんですね。」
サンが納得の様子で発言した。
「そう言えばサスケ、家名の方は決まったのか?」
「ええ、ライさんが地球の言葉にした方が、
他の領主と被らないって仰ってたんで、
コウガにしようかと思います。」
「なる程、甲賀流忍者のコウガか。」
「ええ、サスケ・モンキーフライ・コウガ子爵で行こうと思います。」
「割と安直な感じもするが、
俺のベンチプレスよりは、格段マシだな。」
「ライさんの失敗談を聞いてたんで、
シラフの時に決めました。」
「ううっ、あの時、酔ってさえいなければ・・・」