表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転落勇者の人生大逆転物語  作者: シュウさん
142/238

戦のあと・・・

フェルナリア皇国の皇都にある城で、

皇帝のカムリ8世が午後のお茶をたしんでいると、

廊下をドスドスと走って来る足音が近付いて来るのが聞こえて、

ノックも無しに部屋のドアがバン!と開かれた。

「陛下!一大事で御座いますぞ!!」


「何事だバケテナーイ、

その様に、あわてて如何いかにしたと言うのだ?」

部屋に飛び込んで来たのは、

皇国宰相のバケテナーイであった。


「た、ただ今、ギッテル子爵の部下の者が、

こちらに連絡に参りまして・・・」


「うん?ゴンザレスの部下では無く、

ギッテルの部下なのか?」


「はい、その通りで御座います。」


「それで、偽勇者とミルキィの身柄は確保出来たのか?」


「それどころでは御座いませんぞ、

その者らが申すには、

ゴンザレス千人隊長の部下は、その多くが戦死し、

残りの者は、負傷してルクシアの捕虜となったとの事です。」


「何だと!

ゴンザレスとギッテルは、どうしたのだ!?」


「お二方とも、ルクシアの虜囚りょしゅうとなった様です。」


「ゴンザレスも居たと言うのに、何をやっているのだ!

ルクシアごときにおくれを取ったと申すのか!?」


「それが、逃げ戻った者の話では、

凄腕の冒険者と見られる集団がり、

大規模な広範囲魔法による攻撃を受けた様ですな。」


「それにしても、

我が国の兵の方が、数でも練度れんどでもまさっておろうに!」


「それなのですが、

陛下、こちらの剣をご覧下さいませ。」

皇帝の御前ごぜんに上がるので、

厚手の布にくるんであった剣を、

テーブルの上に乗せて、その布をいた。


「この剣が、どうしたと言うのだ・・・うん?

これは、魔法が付与されて居るのか?」

剣を手に取った皇帝は、

剣から発する魔力に気付いて問い掛けた。


「はい、その通りで御座います。

錬金術士に確認を取ったところ、

身体強化や治癒に加えて、疲労回復作用がある様であります。」


「そうであるのか?

剣を持った感じでは、その様な効果があるとは感じられぬのだがな。」


「それが、その剣は決まった持ち主にしか、

その効果を発揮しない制約がされているとの事です。」


「何!?その様な事が出来るのか?」


「少なくとも、我が国の錬金術士では不可能との事でした。」


「そうであるか、

そうすると、この剣は、いず名立なだたる鍛冶師や錬金術士の、

手による逸品いっぴんという事であるな。」


「それが、ルクシアの兵士の多くが、

その剣を手にしていたとの事なのです。」


「何だと!?

一介いっかいの兵士の多くが、

これ程の剣を手にしていたと申すのか?」


「はい、その剣は偶々(たまたま)地に落ちていたものを、

拾い上げて来たのでありますが、

ルクシアの兵の多くが同型の剣を使っていたそうであります。」


「ルクシアに、

これ程の剣を作る事が出来る、鍛冶師や錬金術士がるなだと、

聞いた事など・・・まさか!?」


「はい、ルクシアに放った密偵が申して居りましたが、

あの偽勇者めは、鍛冶や錬金の才能に恵まれていた様なので、

恐らくは・・・」


「あやつめが、これ程の剣を作り上げたと申すのか!?」


「一般の兵に持たせるぐらいでありますから、

もっと、高性能の剣も作れるのではないかと思われます。」


「あのサブローに、そんな才能が・・・」

皇帝は、今更ながらに自分が手放してしまったものの、

重要さに気が付いた。


「大体、サブローに、

それ程の才能があったなどと、

私の耳には入って来なかったと思うのだが?」


「はい、私も、そう思いまして調べてみたのですが、

あやつの教育にたずわった者達は、

陛下の『勇者らしく仕立て上げよ。』との、

お言葉を鵜呑うのみにして、

ステータス・チェックもおこなわずに、

騎士や戦士の訓練を課したそうであります。」


「何と、おろかな・・・

召喚された勇者が、何かしらの才能をゆうしているのは、

周知の事実ではないか!」


「恐らく、あの魔族めも、

サブローの才能が露見ろけんせぬ様に暗躍あんやくして居ったのでしょう。」


「う~む、まったく持って腹の立つ・・・

それで、ルクシアの方は何か言って来たのか?」


「いえ、まだ何も・・・

しかし、いずれ多くの捕虜との引き換えを条件に、

多額の損害賠償を求めて来る事かと・・・」


「ふん、ある程度の事は、仕方があるまいな、

ギッテルめの資産を処分して払えば良いだけの事よ。」


「ルクシアが過分な要求をして来た場合は、

如何いかがしますか?」


「この様な剣があったとしても、

しょせん我が国と、ルクシアでは国力や軍事力に、

天と地ほどの差があるのだ、

その時は力尽ちからずくで黙らせるまでの事よ。」


かしこまりました。」



一方、圧倒的な勝利を収めたピロンの街では、

戦勝の雰囲気に沸き立っていた。


通常、戦の後と言えば、

勝利を収めても、多くの死者や負傷者をおもんばかって、

手放しで喜ぶ訳には行かないものだが、

サスケ達の薬や魔法によって、死者・負傷者ゼロなのだから、

その盛り上がりは、かなりのテンションとなっていた。


そんな中にあって、

ただ一人、そのお祝いムードに参加出来ない者が居た。


「あれ?マクソンさん、飲んでないんですか?」


「おお、サスケか・・・」


「そんなに、しょんぼりして、どうしたんですか?」


「サスケ、

今、そいつに、それを聞いてやるなよ。」


「ああ、ジャイケルさん、お疲れ様です。」


「おう!お前も敵の総大将を捕まえる大活躍だったらしいな。」


「いえ、それも、ジャイケルさん達が、

敵の目を引き付けてくれたからこそですよ。」


「はぁ・・・俺は、もうお仕舞しまいだ・・・」


「あの・・・ジャイケルさん、

マクソンさんの、この落ち込み様は一体・・・?」


「こいつは、今日の戦で勇ましく先陣を切って、

敵に突っ込んで行ったは良いが、

転んで意識を失って、気が付いた時は戦が終わってたんだよ。」


「それはまた・・・何と言ったら良いのか・・・

あれ?俺が造った剣を持ってたのに、

すぐに意識が戻らなかったんですか?」


「それが、転んだ拍子ひょうしに手放してしまったらしくて、

剣を失くした事でも、隊長に大目玉を喰らったんだよ。」


「それは、何と言ってフォローすれば良いのか・・・」


「ううっ、俺は、もうお仕舞だ・・・」


「え~と・・・分かりましたマクソンさん!

これを、差し上げますから見付かったって事にして下さい。」

サスケは『魔倉まそう』から、

予備に何本か造ってあった魔法剣の内、

一本を取り出してマクソンへと差し出した。


「えっ!?いいのか、サスケ。」


「ええ、マクソンさん達には、いつもお世話になっているので、

その、お礼として受け取って下さい。」


「うお~っ!ありがとなサスケ、

これで、隊長にも何とか勘弁かんべんしてもらえるよ。」


「ちゃんと、魔力を登録するのを忘れないで下さいよ。」


「おう、分かってるって、

早速さっそく、隊長に報告してくるわ。」


「ええ、行ってらっしゃい。」


「サスケ、お前は甘いな~。」


「それは、分かってるんですが、

みんなが、こんなに盛り上がってるのに、

一人だけ、しょんぼりしてたら可哀想じゃないですか。」


「そりゃそうだがな・・・

まあ良いか、それがサスケの良い所でもあるしな。」


「はぁ・・・?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ