チートな戦い
「敵は、たった一人だ、
数で押せば勝てるぞ!」
「ゴンザレス隊長を、お救いするのだ!」
「突撃~!」
「「「「「うお~~~!」」」」」
「あら、ライ様一人では、ありませんですわ。」
「そうそう。」
「さ~て、ひと暴れするかな。」
「殲滅。」
「皆さん、程々(ほどほど)にね。」
再び、街の門が開いて、
フローラ、リーナ、エルザ、パサラ、ルクアも出て来た。
「我々も、ライ様たちに続くのだ!」
「「「「「おう!」」」」」
引き続いて、カタブツに率いられた街の兵士たちも出て来る。
「私たちが、大きいのを打ちますから、
兵士の皆様方は続いて突撃して下さいませ。」
「分かりました。フローラ殿。
皆の者、今のお言葉を聞いて居ったな?」
「「「「「はい!」」」」」
「では、私から行きますわよ!
『サウザンツ・アロー!』」
フローラが天に向けて放った矢は、
空中で無数に分離すると、皇国の兵士の上から豪雨の様に降り注いだ。
「「「「「ぎゃ~~~っ!」」」」」
「次は、アタイね、『フライング・ハンマー!』
ふっ、峰打ちだ安心せい。」
「うわ~!兄貴の首が、変な方向に曲がっている~!」
「俺の親友の腰が、曲がっちゃイケナイ方向に曲がってるぞ!?」
「ワシの息子の体が、ハンマーに潰されてペシャンコだ!?」
「リーナ・・・。」
「こう言う事もあるよね、テヘッ。」
「テヘッじゃねぇ!」
「皇国のヘナチョコども!
ザドス王国の殲滅姫が相手をするよ!
『斬檄!』」
エルザが、アダマンタイト製の大剣を大きく横向きに振ると、
その方向に居た皇国の兵士たちの上半身が、
下半身を残してボトボトと地面に落ちた。
「うわ~!ザドスの殲滅姫エルザ王女だ!?」
「鬼姫が、何でこんなとこに居るんだ!?」
「聞いてないよ~!?」
「『煉獄』。」
パサラが暗黒魔導を唱える。
「うわ~!体が沈む~!」
「た、助けてくれ~!」
「いやだ~、誰か助けてくれ~!」
皇国の兵士たちが、黒いドロドロとした謎空間に沈んで行った。
「矢や槍で反撃するんだ!」
「「「「「おう!」」」」」
皇国の兵士たちが、
フローラたちに向けて、矢や槍を放つが、
全て、ルクアが張った白魔法のシールドに、
カン!カン!と跳ね返されている。
「よし、今だ!突撃~!」
「「「「「うおぉ~~~~!」」」」」
カタブツの合図で、
サスケが造った魔法剣を持った兵士を中心として、
およそ300名の兵士たちが、皇国軍へと突入した。
「こいつら、ホントにルクシアのヤツらなのか?
ザドス王国の兵士並みに強いぞ!?」
「強いのは、あの変わった剣を持ってるヤツらだけだ、
他のヤツらは大した事は無いぞ!」
「まだまだ、数では我らが勝っているんだ、
何とか持ち堪えて、押し返すぞ。」
サスケの魔法剣の威力で、
何とか互角の勝負に持ち込めているものの、
戦慣れしているゴンザレスの部下たちが、
粘っているので、
中々(なかなか)、戦局を有利には出来無いでいたルクシア勢だが、
ここで、変化が現われた。
「うっ!」
「ぐっ!」
「うおっ!」
混戦の中、ゴンザレスの部下たちがバタバタと倒れ始めたのだ。
「何だ!?何が起きているんだ!?」
「応援の兵たちが、次々倒れているぞ!?」
「まて!あれは・・・サルか?」
「「「「「キキキ~!」」」」」
サスケの命を受けたチビリンたちが、
ゴンザレスの部下を鎧で見分けると、
強力な眠り薬を塗布した忍者刀で、プスプスと刺していったのだ。
粘りを見せていたゴンザレスの部下たちが居なくなった事により、
戦局はルクシア側へと、大きく傾いた。
「何と言う事だ・・・」
皇国軍の本陣では、次々と討ち取られていく味方の兵たちを見て、
ギッテル子爵が、呆気に取られていた。
「はっ!こうしちゃ居れん、
こうなっては、私だけでも逃げ延びねばならんぞ、
皆の者、退却の準備だ!」
子爵が、部下たちに退却の号令を出すが、
部下たちはボ~ッと前方を見たまま、返事をしなかった。
「お前たち、どうしたのだ?・・・ひっ!」
訝しげに部下たちの様子を、
キョロキョロと見ていた子爵の首筋に、
刀の刃が押し当てられた。
「子爵、俺たちに関わるなって忠告したよな、
そんなに早死にしたいのか?」
「おっ、お前は!?」
「ご指名のサスケだよ。」
「私の部下たちに何をしたのだ!」
「ちょっとした幻術で、
幻を見て貰ってるよ。」
「おのれ!卑怯なマネを!」
「いきなり奇襲を掛けて来たアンタに、
言われたくは無いな。」
「ミルキィ様を、お返ししろ!」
「この前も言ったろ、
ミルキィ姫は、もう居ないんだよ、
この街に居るのは、タダの冒険者のミルクだけなんだ。」
「ふざけた事を申すな!
お前が、ミルキィ様を騙して連れ出したのであろうが!」
「もう良いよ、
あんたとは会話にならないみたいだから、
ちょっと眠っててくれや。」
サスケは、子爵の首筋に手刀を入れて、
意識を刈り取ると、
ヒョイと肩に担ぎあげて、その場を後にした。
サスケが、立ち去ってから暫くすると、
幻術の効果が切れた部下たちが意識を取り戻して来た。
「うん?俺は何してたんだ・・・?
子爵様!?子爵様はどこだ!?」
「子爵様が消えた!?」
「どこへ行かれたんだ!?」
総大将が消えてしまった皇国軍は、
指揮系統が混乱を来たし、
残された兵たちが、降伏を宣言するまで、
いくらも時を要しなかった。
皇国軍約1500名の内、
戦死者は800名を数え、重軽傷者の捕虜が600名、
総大将のギッテル子爵や、ゴンザレス千人隊長は捕虜の身となり、
皇国へと逃げ帰れたのは、
突撃に参加しなかった子爵の部下、わずか100名のみであった。
対するルクシア側の被害は、
戦死者30名、重軽傷者50名、捕虜はゼロであった。
なお、サスケと、領主のスライバーとの相談によって、
死者及び負傷者は、サスケの造った薬と魔法によって、
復活したのは言うまでも無い。




