ソーマ
「さてと、まずは低級治療薬のマアマアキキ草からにするかな、
街から西の草原で採れるって言ってたな。」
サスケは、街から出る為に門へと向かった。
「こんにちは、ジャイケルさん。」
「おお、レトリバーと居たヤツだな、
無事に冒険者に成れたのか?」
「ええ、お蔭さまで、この通り成れました。」
サスケは冒険者カードを見せながら言った。
「ふむ、サスケって言うのか、
この辺りは、それ程強い魔獣は居ないが気を付けろよ。」
「はい、最初は薬草の採取とかから始めます。」
「おう、それが良いな。」
「マクソンさんと一緒じゃないんですか?」
「ああ、あいつは今日は早番なんだ、
こいつはマーダンってヤツだ。」
「よろしくな、サスケ。」
「よろしくお願いします。マーダンさん。」
サスケは街の門を出て、草原へと向かった。
「うん?街の近くで野兎に返り討ちになってる冒険者が居るな・・・
だが、彼に関わると、この世界の管理者に怒られるからスルーだな。」
サスケは1時間程歩いて草原に着いたので、
魔法で薬草を探す事とした。
「え~と、マアマアキキ草だな・・・『感知』と、
うん、それ程まとまっては居ないけど、
結構生えていそうだな。」
サスケは草原を分け入って、
魔法が反応した辺りで薬草を採取して行った。
たまに魔獣のカモネギ鳥が襲ってきたが、
サクッと倒して『魔倉』に収納した。
「レトリバーさんとの契約は、
月に低級治療薬200本と、中級治療薬50本だったから、
マアマアキキ草は、こんなもんで良いかな・・・」
サスケは、既に低級治療薬400本分を集めたので、
次に中級治療薬用のナカナカキキ草を採取する為に、
街の南にある森へと向かった。
「中級治療薬はナカナカキキ草だな・・・『感知』と、
おっ、そんなに森の奥まで行かなくて良さそうだな。」
サスケは10分程歩いただけで、
薬草が群生している場所に着いた。
「錬金術士ギルドからシンディーさんが居なくなってから、
採取依頼が出ていなかったんだろうな、
これなら、この場所だけで集まりそうだな。」
サスケは、それ程時間を掛けずに、
中級治療薬100本分の薬草を集めて『魔倉』へ収めた。
「良しこれで、今日、予定していた量の薬草は集まったな、
まだ時間が早いから、
他にも目ぼしい薬草が生えていないか探してみるかな、
対象を絞らないで・・・『感知』と、
森の中央付近に何か大群生してるな、行ってみるか」
サスケは1時間程掛けて、森の中央付近まで歩いて行った。
途中でボタンボアやモミジディアに襲われたが、
これらもサクッと返り討ちにして『魔倉』へ収納した。
魔法が感知した場所に着いたサスケは目を見張った。
「おおっ!こんなに沢山群生している、
トンデモハップン草を見るのは初めてだぜ!」
そこには上級治療薬の原料となるトンデモハップン草が、
大群生していた。
「おおっ!こりゃ丁度良いぜ、
ケンさんとは3か月に一回、10本の上級治療薬を頼まれているからな、
20本分位採取しておくかな。」
『魔倉』に入れておけば劣化しないものの、
あまり沢山採取すると生態系に何か影響が出るかも知れないので、
必要最低限だけ採る事にした。
「良し!こんなもんで十分だな。
うん?」
サスケは、気配察知に魔獣の反応があったので、
そちらの方を見てみた。
「げっ!芋虫の魔獣かよ、虫系は余り好きじゃ無いんだけどな。」
そこには、体長2メートル程の白い色をした芋虫魔獣が、
20匹程居て、トンデモハップン草をモシャモシャと食べていた。
「見た事無い魔獣だけど、変異種なのかな?
よし『鑑定』の魔法で・・・
名前は『ホーリークロウラー』で、
体内に『神光石』を持つ。か、
『神光石』って何だ?
『解説』の魔法っと・・・
『ソーマ』の原料となる。か、『ソーマ』だって!?」
『ソーマ』とは、奇跡の神薬と言われていて、
その効果は一人に対して一回に限られるものの、
死んだ者を蘇らせる事が出来るのである。
「まあ、俺の『言霊魔導』を使えば、
寿命以外なら『蘇生』で生き返らせる事が出来るけど、
カモフラージュにはなるか・・・
よし、何匹か狩っておくかな。」
サスケは、
ホーリークロウラーの群れがトンデモハップン草を食べている方に、
隠密を使いながら近づいて行き、魔法を発動した。
「出来れば触りたく無いからな、『凍結』っと、
そのまま『魔倉』に収納だな。」
他のホーリークロウラーに気付かれない様に、
サスケは10匹のクロウラーを凍らせてから『魔倉』に入れていった。
「よし、今日は大収穫だったから、これで帰るとするか。」
サスケは、森を後にして街へと帰る事にした。
「よおサスケ、手ぶらみたいだけど、
薬草は採れなかったのか?」
街へと戻ると門の警備をしていたジャイケルが話しかけてきた。
「いえ、大量に採れました。
こう見えてアイテムボックス持ちなんですよ。」
「へ~、若いのに優秀なんだな、
まあ、何にせよ元気に帰って来れたのが一番だな。」
「ありがとうございます。」
サスケは宿に帰って一休みしてから、
サクッと治療薬を調合して、
レトリバーの店へと持って行った。
「『何でも屋ゴールデン』か、
ここだなレトリバーさんの店は、よし入るか。」
サスケは店の入り口から、中へと入った。
「いらっしゃいませ~って、
ギロッポンか、何か買いに来たのか?」
「いえ、今日は治療薬の納入です。
レトリバーさんに、お願いがあるのですが、
ギロッポンと言う名前は、
訳あってフェルナリア皇国限定の名前なので、
これからはサスケで、お願いします。」
「そうなのか?
まあ、何か事情があるんだな、
分かった、これからはサスケって呼ぶ様にするよ、
正直、ギロッポンて言いにくかったからな。」
「はい、ありがとうございます。」