勃発
「子爵殿、お体の具合の方は、
もう、宜しいのか?」
「ええ、ご迷惑をお掛けしました。ゴンザレス殿。」
フェルナリア皇国の南部に位置する、
ギッテル領の、ギッテルの街にある子爵の城にて、
城主のギッテル子爵と、
戦の加勢に訪れた千人隊長のゴンザレスが会話を交わしている。
「な~に、部下たちには訓練と休養を十分に取らせておいたから、
良い気分転換になったであろう、
これで、心置きなくルクシアのヘナチョコ共を、
捻れると言うものよ。」
「それは、大変、心強いですな、
正直申し上げて、我が配下の兵士たちは練度も低く、
戦慣れもして居らなんだので、
ルクシアの兵士と、いい勝負でしょうからなぁ、
戦上手のゴンザレス殿と、部下の方々が居られれば、
我が方の勝利は間違い無しですな。」
「うむ、期待して頂いても宜しいですぞ。」
「では、予定通りに、
明日の朝、進軍開始という段取りで宜しいかな?」
「おう、部下たちには既に申し伝えてあるので、
それで、構いませんぞ。」
子爵の病も癒え、
大幅に予定より遅れていたルクシア共和国に対する進軍が、
漸く、行われる運びとなった。
「それでは、
これより、神の家の御元に集いて、
サスケ、ミルク両名の婚礼の誓いの儀を、
執り行いたいと思います。」
ルクシア共和国にある、ピロンの街では、
いよいよ、サスケとミルクの結婚式が始まろうとしていた。
「では、2人とも神の御前に進み出なさい。」
本日の式を取り仕切っているサクラは、
いつものシスターの姿では無く、
高級そうな神父の様な服を着ている、
恐らくルクアが言っていた枢機卿の服装なのであろう。
「「はい。」」
神妙な顔をしたサスケとミルクが、
祭壇の前に進み出た。
「それでは、今から女神フェルナ様に、
2人の誓いの言葉を届けるために、
お呼び立ての儀を行います。
〇〇△□〇××〇〇△△□□・・・」
サクラが唱えているのは神言と呼ばれている言葉で、
これを唱える事によって、
神が耳を傾けてくれると言われているものである。
だが、言語理解のスキルがあるサスケとライには、
『フェルナちゃん、フェルナちゃん、
3番テーブルご指名です。』と聞こえて来た。
「「キャバクラかよ!」」
「サスケさん、キャバクラって何ですか?」
「俺が地球に居た時に、一番行って見たかった店だな。」
「はあ、そうなのですか・・・?」
サクラが神言を唱え終わると、
祭壇に祭られている女神の像が、うっすらと光に包まれた。
「今、皆様の前に、女神フェルナ様がいらっしゃいましたので、
神の御前にて誓いを立てましょう。
汝サスケよ、あなたは神の前にて偽る事無く、
妻ミルクを愛し続けると誓いますか?」
「はい、誓います。」
「では、汝ミルクよ、やっぱり考え直した方が良いんじゃない?」
「余計な事、言うなよサクラ!」
「サスケさん、サクラ様に失礼ですよ!」
「はい、ごめんなさいルクアさん。」
「冗談はさて置き、生涯、夫となるサスケを支え、
愛し続ける事を誓いますか?」
「はい、誓います。」
ミルクが告げた途端に、
天から射した光が、サスケとミルクを柔らかく包み込んだ。
「今、ここに2人の言葉に偽り無き事が、
女神フェルナ様により証明されました。
ここに、お集まりの皆さんが証人となります。
2人の、これからに幸多き事を願いて、
無事、誓いの儀を終える事を宣言いたします。
2人とも、おめでとうございます!」
「「「「「おめでとう!!ワ~、パチパチパチパチ!」」」」」
無事に式を終えたサスケたちは、
披露パーティー会場となっている、
街の集会堂へと移動した。
「え~、では、ただ今より、
サスケ君、ミルクさんの結婚披露パーティーを、
ご開催したいと思います。
申し遅れましたが、私、
本日の司会進行を務めさせて頂きますレトリバーと申します。
新郎のサスケ君とは、
この街に、案内して来た頃からの付き合いとなって居ります。
どうぞ、宜しくお願いします。」
「「「「「ワ~、パチパチパチパチ!」」」」」
「ほう、あの者がサスケを、この街に連れて来てくれたのか。」
「はい、お館様、
門の警備を担当しているジャイケルからも、そう伺って居ります。」
レトリバーの挨拶を聞いた領主のスライバーが、
警護に付いているカタブツに確認を取っていた。
「そうか、それは何か褒美を取らせねばいかんな。」
「街で、店舗を構えているとの事なので、
城で使う物を仕入れる様にするのが宜しいかと存じます。」
「ふむ、そうだな、それが良いだろう。」
「では始めに、
皆さん、ご存じの世界的な英雄であり、
ご夫婦共に、サスケ君とミルクさんの大親友という、
『雷撃の勇者』こと、
マッスル王国ライ国王様より、お祝いのお言葉を、
ご頂戴頂きたいと存じます。
ライ国王様、お願い申し上げます。」
「おう!
サスケ、ミルクさん、ご結婚「大変だ~!!」
うん?」
ライがお祝いの挨拶を始めた時、
集会堂のドアをバン!と開けて、兵士が走り込んで来た。
「何じゃ、騒々しい、
今は、ライ国王様のご挨拶の最中であるぞ!」
カタブツが、走り込んで来た兵士を叱責した。
「カタブツ隊長、それどころではありません!
皇国の軍が攻めて参りました!」
「何!?それは、本当なのか!」
「はい、およそ千を超えると思われる軍勢が、
物見の塔より確認出来ました。」
「面白い、皇国の連中には、
俺の挨拶を台無しにしてくれたツケを、
払って貰わなくちゃなんないな。」
「ライ国王様!?」