神託
今日は結婚式の2日前なので、
サスケはミルクと共に教会へ最終の打ち合わせに訪れたのだが、
ピロンの街の教会へ挨拶をしておきたいと言うルクアと、
暇を持て余していたパサラとポラレも、
シロとクロを引き連れて一緒に来ていた。
「お早うございます。
サスケですけど、サクラさん、いらっしゃいますか?」
「当教会へようこそ!見知らぬ人よ。」
「サスケの事、知らないって言ってるよ。」
「ボケた?」
「つい、この間、会ったばかりだろ!」
「オホホホッ!イッツ、ホルスタイン・ジョーク!」
「も~ジョークは、ええっちゅうんじゃ!」
「もしかして、あなた様は、
サクラ・ホルスタイン枢機卿猊下ですか!?」
「えっ!?ルクアさん、
枢機卿って、教皇様の次に偉い人達ですよね?」
「そうよミルクさん、
良く、ご存じね。」
「おや、アルビナ王国の聖女様じゃない。」
「はい、私の事はルクアとお呼び下さいませ。」
「ルクアさんは、サクラさんの事を知ってるんですか?」
「当たり前ですサスケさん、
サクラ様は、聖教会の長い歴史の中で、
始めて女性の枢機卿になられた方なんですよ。」
「サクラさんて、偉い人なんだ。」
「見えない。」
「え~、このサクラさんが?
何かの間違いじゃないんですか?」
「サスケさん、パサラちゃん、
サクラ様に対して、その言葉使いは失礼ですよ。」
「良いのよルクアさん、
ここに居る私は、ピロンの街の教会を司る、
一シスターなのですから。」
「そもそも、何で皇都の聖教会詰めのサクラ様が、
こちらの教会にいらっしゃるのですか?」
「神よりのお告げがあったのです。」
「ご神託ですか!?」
「ええ、『皇都より離れて、
フェルナリア皇国と接した他国の街を守護せよ。』との事でした。」
「それは、また皇国で何かが起きるという事でしょうか?」
他国に移り住んだとはいえ、
生まれ育った母国なので、ミルクは心配そうだ。
「それは、まだ分かりませんが、
私と同じ様に『神の声』を聞いた者は、
既に、アルビナ王国、ザドス王国、ラメール国にて、
任に付いています。
残念な事に、他のお偉方には聞こえなかった様で、
皇都で、踏ん反り返っていますけどね。」
「マッスル王国には、どなたも来られなかった様ですが?」
「何を言ってるのルクアさん、
マッスル王国には、『聖女様』が居るのだから、
必要ないではありませんか。」
「私で大丈夫なのでしょうか?」
「今回の任に付いている者で、
あなた程の白魔法の使い手は、そうは居ませんよ、
それに、あちらの白い子も、相当使えるんじゃありませんか?」
「見ただけで、シロが白魔法が使えるのを見抜いたんですか!?」
サクラの発言に驚いたサスケが、思わず言葉を発した。
「あれ程の白き魔力を纏っていれば、
同じ、白魔法使いであれば気付きますよ、
ねぇ、ルクアさん。」
「ええ、シロちゃんの魔力の強さであれば分かると思います。」
「へ~、そうなんだ。」
その後、サクラと話した結果、
皇国に関しては、
取り敢えず火急の事態では無いとの事なので、
様子を見る事として、
結婚式の段取りなどを打ち合わせてから屋敷に帰った。
午後からは、
領主のスライバーに連絡を取ったところ大丈夫との事なので、
サスケはライと一緒に、領主の城を訪れた。
「こんにちは~。」
サスケは、城の入り口を警備している兵士に、
いつもの様に声を掛けた。
「おや、サスケさん、
また来られたんですか。」
「ええ、領主様には連絡を入れてあるので、
お取次ぎをお願いします。」
「分かりました。
それと、そちらの方は?」
「こちらは、マッスル王国のライ国王ですよ。」
「ライ国王陛下!?
こ、これは大変、失礼しました!
た、ただ今、主人にお取次ぎ致します!」
「そんなに慌てなくて良いぜ、
今日の俺は、サスケの友人で、
元冒険者のライとして来てるんだからな。」
「は、はい!分かりました。」
少しすると、兵士に呼ばれてカタブツがやって来た。
「サスケ殿、こちらのお方が?」
「はい、ライ国王様です。」
「これはこれは、ライ国王陛下、
わざわざの御運び、いたみいります。
私は、ピロンの街を納めている、
オークス様に仕えるカタブツと申す者です。
以後、お見知りおきの事、宜しくお願い申し上げます。」
「武士?」
「シ~ッ、ライさん、
カタブツさんは生真面目な方なんですよ。」
「そうか、分かった。
カタブツさん、宜しくな。」
「はっ、ありがたきお言葉。
ただ今、主人の元へとご案内申し上げますので、
どうぞ、こちらへとお出で下さいませ。」
「うむ、お願いするよ。」
サスケとライは、
カタブツの案内で、スライバーの執務室へと向かった。
「お館様、ライ国王陛下とサスケ殿をご案内致しました。」
カタブツさんが、執務室のドアをノックしてから、
中へと声を掛けた。
「うむ、ご苦労である、
お二人に、お入り頂け。」
「はっ、どうぞこちらへ。」
カタブツは、執務室のドアを開けて、
2人を部屋の中へと招き入れた。