ブッチャケラッチョ
「では、こちらが残りの剣となりますので、
カタブツさん、お確かめ願えますか。」
サスケは、スライバーより依頼された剣の残りを、
『魔倉』より取り出すと、
数量に間違いがないかを確かめて貰うために、
カタブツにお願いした。
「はい、暫しお待ちを・・・
うむ、確かに残りの数量に間違い御座いません、お館様。」
「そうか、分かった。
ご苦労であったなサスケよ、
代金は、冒険者ギルドで受け取れる様に手配しておくから、
後日取りに行くが良いぞ。」
「はっ!ありがとう御座います。オークス様。
それと一応、こちらをお渡ししておきますので、
必要に応じてお使い下さいませ。
また、今、ウチの師匠たちに、
低・中・上級治療薬を造って貰っていますので、
出来上がり次第お持ちする様にします。」
サスケは、再び『魔倉』から薬ビンに入った薬剤を10個程取り出すと、
テーブルの上に置いた。
「治療薬が備蓄出来るのは、確かにありがたいが、
こちらの、見慣れぬ薬剤は何なのだ?」
「そちらの薬剤はソーマで御座います。」
「何!?ソーマだと!?
あの、死者を蘇らせるというソーマか?」
「はい、そのソーマであります。」
「これは、どの様にして手に入れたのだ?」
「私が造りました。」
「何!?
その製造方法が遺失して居り、
新たな作成は不可能となって居ると聞いた覚えがあるのだが、
違って居ったのか?」
「いえ、私も偶然に、その材料を手に入れましたので、
オークス様の認識で間違い無いと思われます。」
「材料を偶然に手に入れたとしても、
その加工に関する知識は、どうしたのだ?」
「これから、お話する事は内密にお願いしたいのでありますが、
私の魔法は、材料さえあれば、
魔力で加工出来るものと、お考え頂ければ宜しいかと存じます。」
「何!?その様な魔法は聞いた事がないぞ!?」
「はい、現在、この魔法が使えるのは、
恐らく私と師匠以外居ない事かと思われます。」
「現在と言う事は、過去には居たと言う事なのか?」
「はい、恐らく勇者イチローが、
使っていたのではないかと思われます。」
「勇者イチローと同じ魔法だと!?
では、お前と師匠が使える魔法というのは、
あの、『言葉魔法』なのか!?」
「ええ、正確には師匠が改良を加えていますので、
『言霊魔導』と申します。」
「なる程な、という事は、
今、お前の屋敷に居る師匠というのは、
かの『大賢者』ビンセント・オナルダスという事か・・・」
「さすがオークス様、師匠の事をご存じでしたか。」
「当り前であろう、
まだ若いサスケは知らないだろうが、
当時、『大賢者』の大いなる知識を手に入れる為に、
どれ程の権力者たちが、
右往左往した事か・・・」
「そうなんですか。」
「もしかして、これらの剣も『言霊魔導』で造っているのか?」
「ご明察通りで御座います。」
「ふぅ・・・
まさかサスケが、かの『大賢者』の弟子とはな、
通りで、やる事成す事規格外であると思ったわ。」
「そんなに、規格外でしたか?」
「本人に自覚が無いのが、また始末が悪いな。」
「申し訳、御座いません。」
「時にサスケよ、このソーマであるが・・・」
「はい、オークス様に全部差し上げますから、
国家元首様にも、いくつかお分けして構いませんよ。」
「そうか、それは助かるな、
フェルナリアと事を構える事となれば、
一応、カメオークにも渡して置きたいからな。
それと、これは単なる好奇心から聞いてみたいのだが、
ソーマの材料とは何なのだ?」
「はい、ピロンの街の北側に広がる森の奥に、
上級治療薬の材料となるトンデモハップン草という、
薬草が群生しているのですが、
その薬草を好んで食べるホーリークロウラーの素材が材料になります。」
「何と、そんなに我が街から近い場所に、
生息する魔獣の素材とはな。」
「ええ、この街の周辺に生息している魔獣は、
比較的弱い種が多いので、
上級治療薬を必要としなかったのも、
今まで、ホーリークロウラーが発見されなかった要因でしょうね。」
「なる程、その様な要因があったのだな、
そのホーリークロウラーの生息数は、どうなのだ?」
「はい、エサとなるトンデモハップン草を採り過ぎない様に、
気を付けて居りますので、
大体、100匹前後で推移しています。」
「一匹のホーリークロウラーから、
どの程度のソーマが造れるのだ?」
「一匹からだと、
先程、お渡しした10個程度が造れます。」
「それでは、それ程、数を造る訳にはいかんな。」
「ええ、ホーリークロウラーの生息数に注意を払いながら、
少量ずつ生産して増やしていくしかないと思います。」
「うむ、そうだな、
それと、生息地の保護などの必要は無いのか?」
「一応、街道からは離れて居りますし、
冒険者ギルドの狩場にもなって居りませんので、
大丈夫であると思われますが、
ご心配でありましたら、
ギルドマスターのモモヨさんに、
あの森の奥には冒険者たちを立ち入らせない様に、
手配して貰えば宜しいのではないでしょうか。」
「うむ、そうだな、
一応、モモヨの他に、
錬金術士ギルドにも申し渡しておくとするか。」
「そうですね。」
「それで、今現在の段階で、
サスケの元にはソーマが如何ほど残って居るのだ?」
「多分、50個程が残って居りますが、
ライ国王より『賢者の石』を頂きましたので、
師匠に『命の父ゼェ~ット!錠』へと改良して貰ってます。」
「何!?『賢者の石』を貰っただと!?
あれが、どれ程に高価な物なのかサスケは分かって居るのか?」
「ええ、大変に高価な物だというのは伺いましたが、
冒険者時代に大量に手に入れる機会があったとかで、
普通に沢山くれました。」
「『賢者の石』を大量に・・・
まあ、サスケの知り合いだけにライ国王も規格外という事なんだな、
それで、その『命の父ゼェ~ット!錠』というのは、
どの様な薬剤なのだ?」
「はい、ソーマの上位に当たる薬で、
死後の時間に関係なく何回でも使用出来て、
体が欠損していても元通りになるそうです。」
「ハハハ・・・何でもアリだな・・・分かった。
もう、何も言うまい・・・
それで、その薬が出来たら、また何個か頂けるのかな?」
「はい、お持ちのソーマと交換して頂く様にして、
回収したソーマにも、改良を施す様に致します。」
「了解した。
その薬が出来たら連絡する様にしてくれ。」
「はい、分かりました。」