中級治療薬
「では、次にご出身地は?」
「ザドス王国のトザーワ村です。」
「まあ、あのトザーワ村からですか!?」
「えっ!?知ってるんですか?」
(て言うか、あるのか?)
「いえ、知りません。」
「こ、こいつ・・・」
「では、年齢は?」
「19歳です。」
「プッ、その顔で。」
「顔は関係無いだろ!」
「イッツ、ホルスタイン・ジョーク!」
(ぶっとばして良いかな?良いよね。)
「では、職種は何ですか?」
「ニンジャマスターとアルカナマスターです。」
(『言霊魔導士』は内緒にしておいた方が無難だな。)
「ニンジャマスターとアルカナマスターですか?
私は聞いた事が無い職種なのですが、
それは、どのような職種なのでしょうか?」
「ニンジャマスターはシーフの上位職で、
アルカナマスターは錬金術や鍛冶といった生産職の上位職です。」
「シーフと生産職の上位職ですか、
錬金術の上位との事ですが、
サスケさまは治療薬の製造は出来ますか?」
「ええ、中級までなら・・・」
(上級が造れるのは内緒にしておいた方が良いな。)
「今、お持ちになっていますか?」
「ええ。」
サブロー改めサスケは、『魔倉』から中級治療薬を取り出して、
カウンターの上に置いた。
「鑑定してみても、宜しいでしょうか?」
「ええ、どうぞ。」
モモヨは、カウンターの引き出しから、
鑑定魔導具のメガネを取り出して掛けた。
「こちらは上級鑑定魔導具で『スケスケに「知ってるから良いです。」
あら、ご存じでしたか、これは私の師匠が造ったんですよ。」
「えっ!?じゃあ、モモヨさんは、
フェルナリア皇国のシャルムの街で店を出してる、
ケンさんの兄妹弟子なんですか?」
「ええ、ケンをご存じなんですか、
確かにケンは、私と姉弟弟子ですよ。」
「へ~、世間は狭いですね。」
(年齢に付いては触れない方が良いんだろうな。)
「でも、私たちの師匠には3000人の弟子が居るから、
結構な確率で会えると思いますよ。」
「弟子多すぎだろ!」
「では、失礼して、『サオリちゃんのは何色かな?鑑定!』」
「ケンさんは、そんな呪文唱えていませんでしたが・・・」
「まあ、ケンたら師匠の教えを守っていないのね!」
「師匠が考えたのかよ!」
「確かに中級治療薬ですわね、
しかも保存期間や効能もカナリの物のようですわ、
サスケさま、物は相談なのですが、
この治療薬を定期的に冒険者ギルドに卸して頂けませんでしょうか?」
「それは、錬金術士ギルドのシンディーさんが引退されたからですか?」
「まあ!もうご存じなんですか、
ええ、サスケさまが仰った通りです。
この街で唯一、中級治療薬を造れた彼女が引退してしまったので、
他の街から高価に買い付けなくては、ならなくなってしまったんですよ、
この街では中級治療薬が必要な程の怪我を負う事は、
それ程無いのですが、
それでも、もしもの時の為に、
冒険者には1本持っておいて貰いたいのですよ、
中級治療薬が高価になって、
冒険者の皆さんが買い控えるのを防ぎたいのです。」
(モモヨさんて、ギャップが凄いな・・・)
「それでしたら、この街のレトリバーさんの店に、
治療薬を売る約束をしているのですが、
そちらから購入して頂く形でも宜しいでしょうか?」
「まあ!レトリバーをご存じなんですか、
成る程、ケンとはその関係で知り合ったんですね、
ええ、その形でも大丈夫です。
レトリバーの『何でも屋ゴールデン』に卸して頂けば、
それ程、高値で販売する事はありませんし、
冒険者の皆さんも良く使っている店ですから。」
「そうですか、良かったです。」
「登録の方は、あと使用スキルとなりますが、
こちらはサスケさまが教えられる範囲で構いません。」
「じゃあ、短剣術、投術、隠密、危険察知、錬金術、鍛冶でお願いします。」
「承りました。
見かけに依らず多才なんですね。」
「『見かけに依らず』は余計だろ!」
「お聞きする内容は以上となります。
サスケさまは、G級冒険者からのスタートとなりますが、
あちらの掲示板に級別のクエストが貼りだされていますので、
受けたいクエストの用紙を、
こちらのカウンターにお持ちいただければ、
登録の手続きを行わせて頂きます。
クエストは個人では一つ上の級まで、
パーティーでは二つ上の級まで受けられますが、
失敗した場合、多額の違約金が発生いたしますので、
ご自分たちの身の丈に合ったクエストをお薦め致します。」
「分かりました。」
「登録料は5万ギルとなりますが、
今日、お支払いになりますか?」
「ええ、これでお願いします。」
「はい、丁度で頂きました。
それでは、こちらがサスケさまのギルドカードになりますので、
街の入り口や、ギルドで提示を求められたら見せて下さい。
なお、無くされたり盗難に遭われますと、
再発行には10万ギル掛かりますので、ご注意下さい。」
「分かりました。」
「本日は、クエストをお受けになりますか?」
「いえ、先に街の周辺の草原や森を見て周って、
治療薬に使う薬草の分布を調べようと思います。」
「そうですか、この街の周辺だと、
低級治療薬の原料となるマアマアキキ草は西側の草原で、
中級治療薬の原料となるナカナカキキ草は南側の森で見かけられます。」
「ありがとうございます。
モモヨさんの情報を参考にさせて戴きます。」
「はい、是非お使い下さいませ。
それでは、サスケさまの冒険者生活のご成功をお祈りいたします。」
「ありがとうございます。」