幕間14
「もうすぐ、完成しそうですな棟梁さん。」
「おお、村長さんじゃねぇか、
ああ、もう一息っていうとこだな。」
ケモイヤー村の宿泊施設新築現場にて、
村長のソン・チョーが、
大工の棟梁であるゲインに話し掛けている。
「モゴモゴモゴモゴ。」
「何言ってるか分からねぇよ、
口に入ってるお菓子を呑みこんでから話せや、
ジュリー嬢ちゃん。」
「モグモグ・・・ゴクン、
おいどん達が作っていた足湯も、広場に完成したでごわすしね。」
「おお、あれは良いもんだな、
足だけ入れてるのに、体までポカポカしてくるから不思議だがのう。」
「あれに足を入れながら飲む酒が、また美味ぇからな、
嬢ちゃん達もホント良いもん作ってくれたぜ。」
「それ程でも無いでごんす。
村の皆が喜べば良いでごわすよ。」
「おお、そうか、
嬢ちゃん、もっと菓子食うかい?」
「ごっつあんです。」
「「「「キキッ!」」」」
「おお、レッドたちも食いたいか、
良いぞ良いぞ、どんどん食えや。」
「「「「キキ~!」」」」
「レッドたちに一言、言っておく事があるでごわす。
この村が平和だからと言って、
毎日、温泉三昧をしているでごわすが、
体が鈍って動けなくなるでごわすぞ。」
「あんたが言うな!」
「何でごんすかリンどん。」
「ジュリー、あんたね~、
いくら村の皆が、食べ物を次々とくれるからって、
毎日、食っちゃ寝の生活をしているから、
丸々と太っちゃったじゃないのよ!」
「ツッパリの威力は5割増しでごわすぞ?」
「忍者がツッパリの威力を上げて、
何の意味があるのよ!?」
「フォッフォッフォッ、これは一本取られたでごわす。」
「あんたね~、早いとこ元の体重に戻さないと、
お頭にクビにされちゃうわよ。」
「それは困るでごわすな、分かったでごわす。
今日から一日8食だった食事を、5食に減らすでごわす。」
「そんなんで減るわけ無いでしょ!
ちゃんと一日3食にして、体も動かさなきゃダメよ。」
「ちゃんと森に行って、木にテッポウをしてるでごわすがな~。」
「だから、忍者が相撲取りの稽古をして、
どうすんだって~の!」
「分かったでごわすよ、
ちゃんとダイエットを始めるとするでごわすよ、
・・・・・・・・明日から。」
「ちゃんと、今日から始めなさい!」
その日から、ジュリーの大ダイエット作戦が決行され、
ジュリーの傍には、
常にサンたちが誰か付いている様にして、
間食を摂らせない様に注意した。
また、食事も獣人が必要とする、
最低限のタンパク質を摂取できる量の肉を食べる様にして、
野菜も積極的に食べさせる様にした。
体重が落ちて体が動く様になるまでは、
露天風呂の中を歩いてヒザに負担が掛からない様に運動をして、
ある程度、体重が落ちて来てからは通常の訓練をする様にした。
「いや~、一時はどうなる事かと思ったよ、
やっと、元の体重に戻ったみたい。」
「もう、本当に気を付けなさいよジュリー、
私たち忍者はスピードが命なんだからね。」
「もう、カバみたいにバカバカ食うんじゃないわよ。」
「タダでさえ、私たち獣人の食生活は肉食が中心なんだから、
その他に間食するとカロリーオーバーになり易いんだからね。」
「分かった分かった、
これからは、ちゃんと規則正しい食生活を心掛けるから、
もう、その辺で勘弁してよ。」
「気を付けるのよ、ホントにもう・・・」
「おう、ジュリー嬢ちゃんは居るか?」
大工の棟梁のゲインが来た様だ。
「うん、ここに居るよ。」
「おう、すっかり元通りの体型に戻ったじゃねぇか。」
「サン達にも、かなり協力して貰ったからね。」
「持つべきものは、良い友人だな。」
「そうだね、
それでゲインさん、私に何か用があるの?」
「おお、そうだそうだ、
宿泊施設の方は、ある程度の目途が立ったんで、
サスケに頼まれてた別荘作りに取り掛かろうかと思ってな。」
「お頭に頼まれた別荘作りですか?
それで、何でジュリーに?」
「お頭に、私の家を改造させてくれって頼まれたんだ。」
「ジュリーの家を?」
「うん、私だけで使うには広すぎるし、
家って偶に使わないと傷んじゃうんだってさ。」
「へ~、それで、どんな別荘にするんだって?」
「何か、お頭の田舎にあったみたいな建物にするって言ってたよ。」
「そうじゃな、囲炉裏を囲む宿とか言ってたぞ。」
「イロリって何なの?」
「何でも、部屋の中央で焚火が出来る様にして、
そこで魚を焼いたり、鍋を作ったりしながら、
皆で食べたり語らったりするらしいぞ。」
「ああ、ジュリーの家にあったアレか。」
「へへ~、私の部屋も作ってくれるんだ~。」
「えっ?ジュリーの部屋も作ってくれるの?
良いな~。」
「アタイ達の部屋は?」
「リン達は実家があるんだから必要無いじゃない。」
「そりゃ、そうなんだけどさ~。」
「偶には、私の部屋に泊めてあげるよ。」
「ホント!?やった~!」
「じゃあ、ジュリー嬢ちゃん、
美味いもんでも食いながら、改築の打ち合わせでもするかの。」
「うん、今日はガッツリ食べようかな。」
「「「おい。」」」