魔獣の正体
「それで、その強力な魔獣ってのは、
どんなヤツなんですか?」
「それが、目撃証言がハッキリしないのよん。」
「どう言う事ですか?」
「共通してるのは、
小さくて、空を飛んで、動きが早くて、強力な魔法を使うってとこ何だけど、
後の証言は、色が黒かったとか、白かったとか、
黒魔法を使ったとか、白魔法を使ったとか、
可愛い顔付きだったとか、凶悪な顔をしていたとか全然一致しないのよん。」
「う~ん、それは姿を変えているのか、
別々に2匹居るんですかね?」
「かも知れないわねん。」
「分かりました。
ちょっと見に行って来ますよ。」
「お願いねん、サスケちゃん。」
サスケは、カマゾネス・リーダーに洞窟の場所を聞いてから、
一人で調べに行く事にした。
最初はリーダーも案内で着いて来ると言ったのだが、
移動速度や隠密性を考えると一人の方が良いので、
リーダーの同行は遠慮して貰った。
「リーダーさんの話だと、この辺だよな・・・」
サスケは、普通に歩くと1時間程掛かる道程を、
15分程で駆け抜けた。
「おっ、あそこに洞窟があるな、
多分、あの洞窟がそうだろう。」
サスケは、それらしい洞窟を発見したので、
気配を消して近づいて行った。
洞窟は高さ2メートル、横幅1メートル程の大きさで、
サスケは地球に居た頃に見た事がある、
戦時中に作られたという、
防空壕の入り口に似ていると感じた。
(やっぱり2匹分の反応が奥の方にあるな・・・)
サスケは、魔獣に気付かれない様に慎重に歩みを進める。
洞窟の入り口から、大体50メートル程進むと、
高さ5メートル、横幅10メートル程の広さがある、
円形の空間が広がっていた。
(おっ、居たぞ!
あれは・・・見た感じピーピング・モンキーに似ているけど、
亜種なのかな?体毛が黒いのと白いのが居るな。)
洞窟の奥の方に2匹の魔獣が寄り添う様にして、
体育座りで膝を抱えて眠っていた。
(どうするかな?
聞いた感じじゃ、使えそうなヤツらだから捕獲したいとこだよな・・・)
サスケは、取り敢えず捕獲の方向で行く事にした。
気配を察知されない様にソロソロと近づいて行くと、
5メートル程進んだ辺りで何かに触れた感じがした。
(まさか、こいつら魔法障壁が張れるのか!?)
「キキッ!」
「キキキ~ッ!」
サスケの予想通りに白い方が気付いて、
隣で寝ていた黒い方を起こした様だ。
「バレちゃったんじゃ、しゃ~ねぇな、
ここは、堂々と行かせてもらうぜ!」
サスケは、隠密を解除して魔獣の前に姿を現した。
「「キキキ~ッ!?」」
「おっ、お前たちチビリン達と同じ言葉を話せるのか?
聞いた話じゃ、中々強いらしいじゃねぇか、
こう見えて、俺も腕前には自信があるんだ、
ここは、いっちょ腕比べと行こうぜ!」
ところが、強いと聞いていた魔獣は一向に攻撃してくる気配が無く、
サスケに向かって土下座の様なポーズを取っている。
「うん?どうしたんだ、お前ら、
何で、掛かって来ない訳?」
「「キキッ、キキキ~キ~。」」
「誰が、サル神様だっ!
俺は正真正銘の人族だっちゅうの!」
「「キキキッ?キキ~。」」
「『またまた、ご冗談を』とか言ってんじゃねぇ!」
魔獣たちの話を聞いて見ると、
やはりピーピング・モンキーの変異種らしく、
見た目が違う事から、群れを追い出されてしまったそうで、
最近、この洞窟に住み着いたとの事であった。
体毛が黒い方はコウモリの様な羽根を付けていて、
黒魔法が得意だそうで、
体毛が白い方は天使の様な羽根をしていて、
白魔法が得意なんだそうだ。
「お前たちが、ここに住んでいると、
カマゾネス村の人達と、
オナーベ村の人達が安心して行き来、出来ないそうだから、
俺と一緒に来るか?」
「「キキッ!キキキ~。」」
「『サル神様と一緒になんて恐れ多くて』とか言ってんじゃねぇ!
俺は人族だって言ってんだろ!」
結局、魔獣たちは一緒に連れ帰る事として、
名前が無いと不便なので、
それぞれ、シロ、クロと名付けた。
2匹には、カマゾネス村の近くに隠れて貰って、
サスケは、魔獣が居なくなった旨の報告をする為に、
村へと引き返して来た。
「ただ今、戻りました。」
「あらん、サスケちゃん、ずい分早かったのねん、
若いから早いのは仕方が無いわねん。」
「あんた、何言ってるの?」
「フフフッ、冗談よん、冗談。」
「洞窟に住み着いていた魔獣を追い払ったから、
村長さんに報告したいんだけど。」
「あらん、サスケちゃんが追い払ってくれたの?
あの、魔獣たちは矢鱈と動きが早い上に、
髭が濃くなる黒魔法とか、
せっかく切り落としたナニが生えてくる白魔法とかを使うんで、
ほとほと手を焼いていたんで助かるわん。」
「強力な魔法って、そんなんかよ!」
「今、村長の元に案内するから、着いて来てねん。」
「サスケちゃん、お帰り~ん、
もう、問題を解決してくれたんだって?」
「ええ、敵も中々の強さだったので苦戦しましたが、
何とか、追い払う事が出来ました。
洞窟には魔獣避けの結界を張って置いたので、
もう、魔獣が住み着く心配は無いと思います。」
「それは、助かるわん、
サスケちゃんには何か、お礼をしなくちゃならないわねん。」
「いえ、人として当たり前の事をしただけですから、
お気になさらないで下さい。」
(実際に追い払った訳じゃ無いからな・・・)
「何もいらないなら、
せめてもの、お礼に私のキッスを贈るしかないわねん。」
「やっぱり物で下さい!」
サスケは、カマゾネス村特産のお礼の品を貰って、
皆に感謝の言葉を送られながら村を後にした。
なお、サスケの手の甲に付けられたカマゾネス・リーダーのスキル、
『ネバー・エンディング・ストーカー』は無事に消して貰えた事を、
ここに追記して置く。
村から見えなくなった辺りまで来てから、
サスケは森に向かって声を掛ける。
「シロ・クロ居るか?」
「「キキッ!」」
「よし、じゃあ、これから一緒に帰るから、
俺の前に一匹づつ立ってくれ。」
サスケは、転移魔導具を取り出すと、
クロとシロを登録した。
「登録完了っと、
じゃあ、俺とクロとシロを指定して、
行先はマッスル王国の魔導投影機にして、
スイッチ・オン!」
サスケが転移魔導具を動作させると、
サスケとクロとシロは、シュン!と消え去った。