プロトタイプ
「ライさん、転移魔導具のプロトタイプが出来ました。」
開発に取り掛かってから3日後に、
サスケは、ライへ報告した。
「おお、もう出来たのか、
さすがサスケだな、それで新しい転移魔導具ってのは、
どんな魔導具なんだ?」
「これです。」
「なんか見た目はタブレットみたいな感じだな。」
「ええ、デザイン的にピッタリな感じだったんで、
タブレットに似せて造ってみました。」
「ライ様、タブレットって何ですの?」
「タブレットって言うのは、
前に話した事があるパソコンと、
スマートフォンの中間に位置する電子機器で、
手軽に持ち歩けるんだけど、
そこそこ大きな画面が付いていて見易いんだよ。」
「魔導通信機の様な物で、文字を沢山送れるって事ですか?」
「ああ、文字だけじゃなくて、
図形や地図なんかも見られるんだよ。」
「それは便利ですわね。」
「それでサスケ、
コレは、どうやって使うんだ?」
「まずは、2メートル程離れたテーブルの上か、床に本体を置いて、
その正面に立って自分のデータを魔導具に読み込みます。」
実際にサスケは自分のデータを読み込んで見せた。
「この魔導具一台の中に30人分のデータを、
保存する事が出来ます。」
「へ~、30人分のデータが入るなら、
俺ん家みたいな大所帯でも大丈夫だな。」
「次に、あらかじめ目的地となる場所に、
この魔導投影機を設置して置きます。」
サスケは、バレーボールぐらいの大きさの丸い魔導具を持って説明した。
「やっぱり、あらかじめソレは置いとかなきゃならないんだな?」
「ええ、行く行くは冒険者ギルドとかに、
設置して貰う様になると思いますが、
まだ、転移魔導具本体が普及していないので、
目的地付近の森とか洞窟に魔獣避けの結界石とかと一緒に、
置いとくしか無いと思います。」
「しばらくは、そうするしか無さそうだな。」
「サスケさん、転移先は、何か所設定できるんですか?」
「一つの魔導具に対して50か所程です。」
「魔力は、どの位、使いますの?」
「例の省エネ回路が組み込んでありますから、
どんな遠くまで跳んでも、
ファイヤーボール一個分の魔力程度しか消費しません。」
「それなら、魔力が少ない人でも簡単に使えますわね。」
「ええ、魔導具本来の姿は、
誰でも手軽に使えるのが基本ですからね。」
「それで、行先に投影機を設置したら、
後は、どうすんだ?」
「え~と、転移魔導具で誰が跳ぶかを選びます。
今は、俺しか入力していないので、
ここに表示されている、俺の名前をタッチします。」
サスケが、画面をタッチすると、
画面に表示されていたサスケの名前の色が変わった。
「次に行先を決めるんですが、
魔導投影機を設置すると、この様な表示が現われます。」
サスケが、投影機の表面に付いているボタンを押すと、
転移魔導具の画面に地図が表示されて、
マッスル王国の場所で光点が点滅し始めた。
「この地図は、画面のハジに表示されているプラス印で拡大、
マイナス印で縮小出来ます。」
サスケが、プラス印を一回タッチすると、
地図が拡大されて、コエドの街を中心とした周辺の地図に切り替わった。
「魔導投影機を増やしていけば、
この光点が増えていきますので、
後は行きたい場所の光点をタッチする様にして下さい。」
「このプロトタイプは、もう使えるのか?」
「ええ、大丈夫だと思いますよ、
ちょっと使って見せましょうか?」
「おお、見せてくれるか。」
「じゃあ、パサラちゃん、
この魔導投影機を、どこかに置いて来てくれるかな?」
「分かった。」
パサラは、徐に魔導投影機を地面に置くと、
思いっきり蹴飛ばした。
投影機はギュン!と大空に飛び去ってキラッ!と輝く星になった。
「え~と、どっかその辺で良かったんだけど・・・」
「聞いて無い。」
「ですよね~。」
サスケは、転移魔導具で投影機の行先を調べて見た。
「サスケ、大丈夫か?壊れちゃって無いか?」
「いえ、象が乗っても大丈夫な造りにしてありますから、
投影機本体が壊れる事は、まずありませんね、
どうやら、300キロ程離れた、
アルビナ王国の山奥に飛んでった様なんで、今から取って来ますね。」
「おう、気を付けて行って来いよ。」
「ここに、帰還用の魔導投影機を置いて行きますんで、
動かさない様にお願いします。」
「オッケ~任せろ。」
「ダチョウ的なアレじゃ無いですからね。」
「分かったから、早く行って来いよ。」
サスケは、転移魔導具を操作する様に見せてから、
サッとライの方に向いて見る。
すると、魔導投影機の頭を押さえたライの向こうで、
ゴロウマル・ポーズをしているパサラちゃんが見えた。
「何、2人してラグビーのゴールキックみたいなポーズしてるんすか!?
それが、どこかに行くと帰って来れないんですから、
お願いしますよホント!」
「ハッハッハッ、ちょっとしたジョークだよ、
何もしないから、安心して早く行って来いよ。」
「全然、安心出来ないっすよ、
ホント頼みますよ、ダチョウ的な意味じゃ無く。」
「そこで、お前がダチョウ的なとか言うから、
もしかしてサスケも期待してるのかな~って、
なっちゃうんじゃないか?」
「そうなんですか?俺の所為っすか?
分かりました。
では、くれぐれも、その投影機には触れない様にお願いしますよ。」
「あ~、何かライたちの気持ちも分かるわね、
サスケさんに、そうやって念を押されると、
何か逆に触りたくなるのよね。」
「ええ、究極のイジられ体質ですわね。」
「私も、少し分かる様な気がします。」
「ミルクまで!?」