太郎と次郎
「どうだい?パサラちゃん、ポラリちゃん、
俺が造った魔導具で訓練すれば、
今までの3倍ぐらい魔法や身体強化が使える様になるんだぜ。」
サスケは、チビリンと遊んでいる2人に問いかけた。
「サスケって、割と凄いんだね。」
「意外と使える。」
「割と、とか意外とは、いらないからね。」
「おっ、サスケは、もうパサラたちと打ち解けたのか。」
「打ち解けたと言いますか、
下に見られてると言いますか・・・」
「2人とも割と人見知りだから、
こんなに早く受け入れられる人は珍しいんですよ。」
「そうですよサスケさん、
私も口を利いて貰うまでに3日ぐらい掛かりましたもの。」
「へ~、ミルクでも3日掛かったのか。」
「それでも早い方ですわよ、
人相の悪い兵士なんて、
半年ぐらい顔を見たら逃げられるって、
へこんでましたわ。」
「へ~、俺って子供が打ち解けやすい顔なのかな?」
「そうかも知れませんね、
ほら、子供ってサルとか好きじゃないですか。」
「ルクアさん、それは俺がサルに似てるって言ってるんですか?」
「い、いえ、そうじゃなくて、
サルの様に打ち解けやすい顔と言うか、
サルの様に警戒感を与えない顔と言うか・・・」
「基本サル入ってますよね。」
「某怪盗の3代目みたいでカッコイイじゃん。」
「いや、ライさん、あの人もサル顔でしょ?
もう良いですよ、俺がサル顔なのは事実なんで、
小学校の学芸会ではサルかに合戦のサル役だったし、
中学の文化祭ではサル回しのサル役だったんで・・・」
「生徒にサル回しのサル役なんて、
よく先生からクレームが付かなかったな。」
「ええ、俺が立候補したんですよ。」
「自らかよ!?」
「そう言えば、
今日は、リーナさんとエルザさんは、お出かけなんですか?」
「ああ、あの二人は冒険者の付添で森に入ってるぜ。」
「付添ですか?」
「ああ、2人も知ってると思うけど、
この国の『神代の森』他国で言うところの『魔の森』には、
貴重な魔獣や薬草なんかが生息してるんで、
届け出た冒険者には採取の許可を出してるんだけど、
かなり強い魔獣が闊歩してるんで、
命を落とす冒険者が結構居たんだよ、
そうすると、警戒して冒険者が来なくなる恐れがあるもんだから、
冒険者のパーティーに、街の兵士を付ける様にしてるんだ、
それで、人手が足りない時はリーナたちも駆り出されるって訳さ。」
「この街の兵士って、そんなに強いんですか?」
「ああ、元々は他の冒険者たちの様に、
森の魔獣などを狩りに訪れた冒険者や傭兵だったんだが、
強い魔獣だからレベルが上がり易いのと、
素材が高く売れるんで実入りが良いのを気に入って、
兵士に就職を希望してきた連中なんだよ、
今でも非番の日なんかは、
休みが合った連中でパーティーを組んで、
森に小遣い稼ぎに行ってるぜ。」
「確かに街道に出て来るレベルの魔獣でも、
ミルクのレベルの上昇がハンパじゃ無かったですから、
しょうちゅう森の奥に入ってたらレベルが上がるでしょうね。」
「ああ、お蔭で初めて来た冒険者たちでも、
命を落とす事が無くなったよ、
そればかりか、稼ぎが良いのを気に入ったリピーターや、
他の兵士みたいに就職希望してくる連中が増えて大助かりさ。」
「確かに、そこまでして貰ったら嬉しいですもんね。」
「ボランティアの付添で国が潤うんだから、
損して得取れってヤツだな。」
「まったくですね。」
「そうだ、サスケは、この国は初めてだろ?
何か見たいもんとか、あるなら案内するぜ。」
「では、例のワープゲートを見せて頂けますか?」
「おう、そう言えば、前に見たいって言ってたな、
それなら、この屋敷の隣の建物にあるから見せてやるよ。」
「お願いします。」
サスケとミルクは、
ライの案内で屋敷の隣にある、
ワープゲートが収められた社を訪れたが、
チビリンに聞いたところ興味が無いとの事だったので、
パサラちゃんたちと遊びに行かせた。
「ここがそうなんですか、屋敷を見た時も感じたんですけど、
何か神社っぽい建物ですね。」
「ああ、元々、この場所には結界に包まれた、
この社が建っていたんだよ、
屋敷の方は、この建物に合わせた様式で建てたって訳だな。」
「なる程、そういう訳なんですね。」
「サスケ、ミルクさん、こっから入ってくれるか。」
ライが、社の横にある引き戸を開けて入って行ったので、
2人も、それに続いて入って行った。
社の中には20畳ほどの空間が広がって居り、
建物の奥の壁際に、姿見の鏡の様な形をした物が何枚か並んでいた。
「これらがワープゲートで、
上の壁に書いてあるのが、その行先だ。」
ライの説明通りに、ワープゲートの上の壁には、
『ザドス王国』『アルビナ王国』などと書かれているのだが、
サスケとミルクは『魔族島』と書かれたゲートの事はスルーして置いた。
「ちょっと見せて貰って良いですか?」
「おお、全然構わないぜ、
でも、魔力を発して触ると、
どっかに飛ばされちゃうから注意しろよ。」
「分かりました。」
サスケは『分析』や『解析』の魔法を使って、
ゲートを直に触らない様に注意しながら調べを進めて行く、
ライとミルクは、その様子を興味深そうに見守っていた。
30分程調べていたサスケが、
不意に二人の方に振り返って告げた。
「大体の仕組みが分かりました。
この、ワープゲートっていう魔導具は、
俺たちが考えている転移装置とは別物ですね。」
「どういう事だ?」