コエド
『魔の森』の中に走る街道を進むと、
道の先の方に、街の防壁が見えて来た。
「ミルク、あれがマッスル王国の首都で間違い無いか?」
「ええ、あの壁の向こう側がそうです。」
しばらく、道なりに馬車を進めて行くと、
壁の一部に入り口の門が見えて来て、
その前に警備している兵士が立っているのが見えて来た。
「こんにちは~。」
「はい、こんにちは、
あなた方は、マッスル王国の首都に見得られたのですか?」
「はい、ライ国王様にお届け物をお持ち致しました。」
「では、身分を証明するものを提示して下さい。」
「はい、どうぞ。」
サスケとミルクは、冒険者ギルド発行のギルドカードを、
門番へ提示した。
「ルクシア共和国の冒険者でサスケさんですか・・・
もしかして、国王が持って来た治療薬を造られた方ですか?」
「ええ、多分、そうだと思います。」
「おお!やはり、そうですか、
あの治療薬には、皆とても助けられて居りますよ、
この街の周りには強力な魔獣が多いので、
時には重傷を負う事があるのですが、
あの治療薬を服用すれば、ほぼ完治しますからね。」
「それは良かったです。」
「ああ、カードの確認は済みましたので、
どうぞ、街の中へお入り下さい。
サスケさん、ミルクさん、マッスル王国の首都コエドにようこそ!」
「コエドって・・・」
街の入り口を潜ったサスケは、
脱力した様に言った。
「どうかしたんですか?」
「ああ、この街の名前のコエドだけど、
俺やライさんが居た国の首都がトウキョウって街だったんだけど、
大昔はエドって街だったんだよ、
それを捩って、古びた感じの街をコエドって呼んでいたんだ。」
「なる程、ライ様は、そこから街の名前を取ったんですね。」
「そう言う事だろう。」
街の中をミルクの案内で進んで行くと、
石で作られた巨大な鳥居に突き当たった。
「この向こうが、ライ様たちが暮らす館です。」
「この向こうって、鳥居の向こうには何も無いじゃないか。」
「何でも、大昔からの結界が残っていて、
特殊な魔力が付与された護符を身に付けていないと、
中に入れないそうなんですよ、
向こう側に何も無い様に見えますが、
結界を超えると館が現われるんです。」
「そりゃ、セキュリティ面では万全だが、
ライ国王に用事がある人は、どうしてるんだ?」
「私が護符を頂いているので、
私たちは、このまま入れますが、
一般の人たちは、あちらの魔導具で館に連絡して入れて貰うんですよ。」
サスケは、ミルクが指差す方を見てみると、
鳥居にインターホンの様な魔導具が取り付けてあった。
「おお、なんかインターホンみたいだな。」
「いんたーほん、ですか?」
「ああ、俺たちの国に、
あれに良く似た形の通信装置があったんだよ。」
「そうなんですか、
じゃあ、そろそろ結界に入りますから、
私と手を繋いで貰えますか。」
「おう、分かった。」
サスケがミルクと手を繋ぐと、
ミルクは鳥居の向こう側に向かって、
サスケの手を引きながら進んで行った。
一瞬の違和感の後に、サスケは空気が変わった様な感じを受けた。
「サスケさん、結界を超えましたよ。」
「ああ、そんな感じがしたな、
もし、護符を持たないで結界に触れると、どうなるんだ?」
「入ったはずの場所から、また出るそうです。」
「ああ、結界に、よくあるパターンだな。」
「そうなんですか?
あっ!あちらに見える館がレイ様たちの住まいですよ。」
「おお!まるで神社みたいな建物だな、
造りが良く似ているし、
何か厳かな雰囲気を持ってるしな。」
「じんじゃ、ですか?」
「ああ、俺たちが居た国の神殿みたいなもんだな、
そこに神様が住んでいて、願い事がある人たちが訪れて、
願いを叶えてくれる様に、神様にお願いするんだよ。」
「サスケさん達が居られた国では、
神様に、お会いする事が出来たんですか?」
「いや、実際に会って、お願いするんじゃなくて、
そこに行って願えば、神様に声が届くって言われていたんだよ。」
「ああ、それなら、確かに神殿と似ていますね。」
「悪いところも似ていて、
中には金儲けしか考えていない様な神社もあったがな。」
「どこにでも、その様な不届き者が居るんですね。」
「まったくだな。」
サスケは、神社っぽい建物の近くまで馬車を進めると、
馬たちに停まる様に命じた。
「ミルキィさん!」
「ミルキィさん。」
建物の近くで遊んでいた女の子たちが、
ミルクを見つけると走って来た。
「こんにちは、パサラちゃん、ポラリちゃん、
今はミルクって名前になったから、そう呼んでね。」
「ミルクさん、ですね。」
「ミルクさん。」
「俺は、サスケって言うんだ、よろしくな!」
「サスケね。」
「サスケ。」
「ミルクは、さん付けなのに、
俺だけ呼び捨てかよ!」
「何か、さんって感じじゃ・・・」
「サスケで十分・・・」
「何なの!?この扱いの違いは。」
「キキ~!」
「うわ~、カワイイ!この子は何なんですか?」
「カワイイ。」
「俺が造ったゴーレムでチビリンって言うんだ。」
「チビリンちゃん、よろしくね、
私、ポラリって言うんだ。」
「チビリンちゃん、私、パサラ。」
「キキ~!」
「何か、チビリンの方が扱い良くね?」