レベリング
ギッテルの街を通り過ぎたサスケ一行は、
フェルナリア皇国とマッスル王国の間に広がる、
『魔の森』の中に、新たに通った街道に差し掛かっていた。
「サスケさん、ギッテル子爵に仰ってた事なんですが・・・」
「ああ、あれは単なる脅し文句だよ、
あんな皇帝といえども、ミルクの父親なのには間違い無いからな、
命を奪うまでの事態には勿論しないさ。」
「そうですか、ありがとうございます。」
ミルクは、ホッとした様に言った。
そうこうしている内に、
また、森の中より街道へと魔獣が現われた。
「よっしゃ!魔獣の足止めをしたから、
眠らせるんだ、チビリン!」
サスケは、森から出て来た魔獣にミスリルで造った網を被せて、
動きを停めるとチビリンに合図を出した。
「キキ~!」
チビリンが、
魔獣に、強力な睡眠薬を塗布した忍者刀を、
プスッ!と突き刺すと、魔獣はクタッと崩れ落ちた。
「よし!止めを刺すんだミルク。」
「はい。」
ミルクが、サスケから借りた忍者刀に魔力を通しながら、
魔獣の首にサクッ!と突き刺すと、
魔獣は呼吸を止めた。
「さすがは『魔の森』の魔獣たちだな、
ミルクのレベルの上がり方が半端じゃねぇぜ。
ただ単にレベルだけなら、大分サンたちに近付けたな。」
「ええ、こんな急激にレベルが上がるなんてビックリしました。
でも、自分だけで魔獣を狩って上げた訳では無いので、
経験は圧倒的に足りていませんね。」
「ああ、取り敢えずレベルを上げておけば、
身体能力やHP.MPが上がって怪我をし難くなるからな、
魔獣の討伐経験はピロンの街周辺の弱い魔獣で積めば良いのさ、
サンたちは、最初から、それなりのレベルだったから、
いきなり戦闘スキルを叩き込んだけど、
ミルクは、お姫様だったから、
まずは、怪我をしない体造りから始めなきゃならなかったんで、
この森は丁度良かったよ。」
「そうなんですか、
もっとも、普通なら森を通り抜けるだけでも大変らしいのですが、
サスケさんと、チビリンちゃんに掛かれば、
ただの狩場になっていますね。」
「ああ、この森には、
ここだけにしか生息していない希少な魔獣が多いから、
今までに倒した魔獣の素材だけでも良い稼ぎになるんだぜ。」
「ライさん達に断りも無く、
魔獣の素材を回収しても良いのですか?」
「ああ、マッスル王国の法律で、
この街道に出て来た魔獣は、
自由に討伐して素材を採って良い事になってるんだよ、
森の中に入る場合は、
ちゃんと、マッスル王国に申請しなければならないんだけどな。」
「そうなんですか、
でも、そうすると街道で倒した魔獣か、
森の中に入って倒した魔獣かが分からないんじゃ無いのですか?」
「いや、街道に出る魔獣でも確かに良い稼ぎなんだが、
森の中の魔獣は強さが桁違いなんだよ、
討伐した場所を誤魔化す程度の冒険者じゃ、
森の中に踏み入るのは自殺行為なのさ。」
「なる程、そう言う事ですか、
『魔の森』で魔獣が狩れる程の冒険者ならば、
その、人となりも一流と言う事なんですね。」
「そう言うこった。」
「サンさん達なら、この森で狩りが出来ますか?」
「う~ん、森の浅い部分までなら大丈夫かな?
それより奥となると、俺が一緒じゃなきゃ心配だな。」
「サンさん達ほど戦えても、森の浅い部分までなんですね、
それでは、定期的に森の奥まで魔獣の数を間引きに行ってる、
ライさま達の腕前は相当と言う事ですね。」
「当たり前だぜ、ライさん達は世界でも数える程しか居ない、
S級冒険者が3名も所属するパーティーなんだからな、
パーティーのみの力で考えれば、
世界最強だろうな。」
「サスケさんのパーティーは、
世界的に見ると、どのくらいの位置に居るのでしょうか?」
「そうだなぁ・・・
まともに正面から戦うとなると、まだまだなレベルだけど、
ウチはチビリンたちも含めて隠密行動に特化しているからな、
何でもアリの戦いだったら、かなりの上位だと思うぞ。」
「何でもアリですか?」
「ああ、シーフ職の醍醐味は、
ワナや薬剤などを使ってこそだからな。」
「そう言う意味ですか、
戦士などの方々は、そう言う手口を嫌いますからね。」
「ああ、そんな事を言ってても、
死んじまったら終わりなんだけどな。」
「ホントですね。」