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転落勇者の人生大逆転物語  作者: シュウさん
109/238

プッツン

「うん?冒険者よ、そなたの隣に腰掛けてるのは、

そなたの女か?」


「はい、我が妻のミルクと申します。」

(ここは、妻と言って置いた方が良さそうだな。)


「こちらからだと横顔しか見えんが、中々の美しさと見た。

ワシの妾としてゆずる気は無いか?」


もう、すでにこの時点で、

サスケは、かなりカチンと来ていた。


子爵ししゃく様には申し訳ございませんが、

私は、とても妻を愛して居りますので、

容赦ようしゃの程をお願い申し上げます。」


「ふん、そうか、

おい!そこの女、ワシの妾になれば冒険者なぞより、

良い暮らしが出来るが、どうじゃ?」


「私は、今の冒険者生活が気に入って居りますので、

申し訳ございませんが、ご勘弁願います。」


「おい、そこの女!

ギッテル様が、折角お誘い下さって居るのに断るとは何事だ!

この無礼者が!」

「そうだそうだ!お前は黙って妾になれば良いんだよ!」

「とっとと、こっちに来て、

ギッテル様に土下座をして、お願いせんか!」


サスケは、突然、馬車を停車させた。


「うん?冒険者、馬車が停まった様だが、

一体どうしたのだ?」


「あ~、もう我慢できねぇや、

黙って聞いてりゃ調子に乗りやがって、

チビリン!兵士どもを眠らせろ!」


「キキ~!」


「うわっ!」

「ぐっ!」

「何!?」

チビリンが、強力な眠り薬が塗布とふされた忍者刀で、

兵士たちをプス!プス!プス!と刺すと、

ガクッと意識を手放した。


「な!何じゃ、この小さいのは!?

おい、冒険者!ワシの兵士たちに何をしたのじゃ!」


「こいつは、チビリンって言って、

俺が造ったゴーレムさ、

兵士たちは、五月蠅うるさいから眠らせたんだよ。」


「何!?それは、お前が造ったゴーレムだと申すのか!?

その様な、生き物に見えるゴーレムは初めて目にするぞ?

それに、ワシの兵士たちを眠らせて、どうする積りじゃ?

フェルナリア皇国の子爵位であるワシに無礼を働いたら、

他国に所属する冒険者と言えどタダでは済まんぞ。」


「ギッテル子爵様、『フェルナリア皇国の貴族は高潔こうけつであれ。』と言う、

初代皇帝陛下のお言葉をお忘れになったのですか?」


「お前の様な平民の女に、そんな教えを説かれる覚えは無いわ!」


「は~、平民の服を着てるだけで自国の王女の顔も分からないなんて、

ホント、皇国の貴族はろくなもんじゃ無いな。」


「サスケさん、よろしいのですか?」


「ああ、どの道、これから冒険者として売れてくれば、

遅かれ早かれ、俺たちの正体に気付くヤツらが出て来るだろうからな、

ギッテル子爵には皇帝へのメッセンジャーになってもらおう。」


「王女じゃと?」

子爵は、ミルクの顔をいぶかしげに見つめている。

「ま、まさか!ミルキィ王女様でらせられますか!?」


「それは、もう捨てた名前です。

今の私は、ルクシア共和国の冒険者ミルクですわ。」


「王女、何をおっしゃられて居るのですか、

あなた様が居なくなられてからの皇帝陛下のご心痛は、

はかり知れませんぞ!」


「お父様が心を痛めているのは、

私の事では無くて、他国への対面ですわ、

もう、私はお父様の道具として使われる気はございませんから、

私の事は、お忘れ下さいとお伝え下さいませ。」

「それから、皇帝には、

俺たちに手を出す気なら、かなりの被害を覚悟して来た方が良いぞって、

言っといてくれ。」


「冒険者よ、

お前は、さっきから無礼な口をいて居るが、

お前は王女様の何なのじゃ?」


「俺か?

俺は、お前たちの国に勝手に呼び出されて、

勝手に捨てられた恨みを持つ男さ。」


「お主何を言って・・・ま、まさか!?

お主は、偽勇者のサブローか!?

皇都で川に落ちて死んだのでは無かったのか!?」


「生憎と、俺は悪運が強くってな、

お前らに、ぞんざいな扱いを受けた恨みを晴らすまでは、

死んでも死にきれないから、地獄の淵から舞い戻って来たんだよ。」


「ふん、たかが偽勇者ごときに何が出来ると言うのじゃ、

さっさと皇帝陛下に王女を返されてから、

さばきを受けるのじゃな。」


「勇者じゃ無くても、これくらいの事は出来るぜ。」

サスケは、ギッテル子爵にそう告げると、

シュッ!と消え去った。


「ぬっ、ど、どこへ消えたのだ・・・ヒッ!」

サスケが突然消えたのでキョロキョロと探していた子爵の首に、

忍者刀のやいばが押し当てられた。


「俺は、騎士や戦士には成れなかったが、

シーフの才能に恵まれていたみたいでな、

皇帝の寝所に忍び込むなんて、

俺に取っちゃ造作も無い事だから、

俺たちに手を出せば、

夜も眠れない生活が待ってると伝えておいてくれや。」

サスケは、ギッテル子爵にそう告げると、

首筋を手刀で打って意識を奪い去った。


「さってと、何か子爵の身分を証明するもんは無いかな?」


「多分、紋章が入った短剣を持っていると思うのですが。」


「うん?内ポケットに入ったコレかな?」


「はい、その短剣ならばギッテル子爵の証明となると思います。」


「じゃあ、これで良いか。」


「その短剣を、どうなさるのですか?」


「ああ、ギッテルの街に寄るのが面倒だから、

使わせて貰おうかと思ってな。」


「はあ、そうなんですか。」

ミルクは、今一つ、サスケの意図が分かっていない様であった。



「よ~し、ギッテルの街が見えて来たから、

この辺で良いかな、

ここなら街から近いし、街道沿いは定期的に魔獣が狩られているから、

少しの間なら大丈夫だろう。」

気絶したギッテル子爵や兵士たちを縛り上げてから、

馬車で運んで来たサスケは、

ギッテルの街が見えて来た所に馬車を停めると、

道端に子爵たちを放り出した。



「あの~、すいませんが、

ここは、ギッテルの街で間違いございませんか?」

サスケは、馬車をギッテルの街まで走らせると、

入り口の門番に話し掛けた。


「うん?お前は冒険者か?

いかにも、ここはギッテルの街だが中に入るのか?」


「いえ、私共は急ぎの旅の途中なので街には立ち寄りませんのですが、

この先の街道にて、ギッテル子爵様よりの言伝をお預かりいたしまして。」


「何!?ご領主様よりの言伝だと?」


「はい、この先で馬車が故障したので、

変わりの馬車を寄越す様にとの事でした。」


「それは、真の事であろうな?」


「はい、この短剣を見せれば分かると仰られていたので、

お預かりして来ました。」

サスケは、先程、子爵から取り上げた短剣を門番に手渡した。


「うむ、確かに、この紋章はご領主様のものに間違い無いな、

分かった、すみやかに代わりの馬車を出すとしよう、

ご苦労であったな。」


「いえ、お役に立てて何よりです。

それでは、私共はこれにて失礼申し上げます。」


「うむ、気を付けて行くのだぞ。」


「はい、ありがとうございます。」

サスケたちは、何食わぬ顔でギッテルの街を後にした。





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