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転落勇者の人生大逆転物語  作者: シュウさん
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天才錬金術士ソンナン

普通なら街道が整地してあるとはいえ、

結局は土や砂利じゃりの道なので、

わずかな地面の凹凸を拾っては、

ガタゴトと車輪を鳴らしながら進むはずの馬車の旅だが、

サスケ特製の馬車は音も振動も出さずにスイスイと進んで行く。

「もうすぐ、ここギッテル領の領主が城を構える街のギッテルだな。」


「ギッテルの街には寄ってくのですか?」


「いいや、領地持ちの子爵ししゃくともなれば、

皇帝の城で顔を合わせた事があるかも知れないだろ?

もし街に寄りでもしたら、何の拍子に子爵と会うか分からんからな、

俺やミルクの顔を憶えていると面倒な事になりそうだから、

危険を避ける為にも、ここはスルーしてくぜ。」


「そうですね、私もその方が良いと思います。」

「キキ~。」


無意味な危険を避ける事にしたサスケたちだが、

トラブルは向こうの方から近寄って来た。

「ミルク、あの道端みちばたでトラブってるキンピカの馬車、

何かイヤな予感がしないか?」


「ええ、派手な装飾そうしょくをしていますが、

馬車の作りは貴族向けの丁寧ていねいな物ですね。」


「チビリン、一応屋根の上に隠れててくれるか。」


「キキッ!」

チビリンはシュッ!と一瞬で消え去ると、

その気配が馬車の屋根へと移動した。


チビリンが隠れたのを確認したサスケは、

前方に見えている派手な馬車へと向かって、

自分の馬車を進め始めた。


「そこの馬車、停まれ!」

サスケの馬車が近付いて来るのに気付いた兵士が、

居丈高いたけだかに停止を命ずる。


「うん?何事だ、スリゴマス。」

兵士が上げた大声を聞き付けたのか、

故障しているらしき馬車のドアから主人と見える男が顔を出したのだが、

馬車にも負けない程のキラキラした衣装を着込んでいた。


(うわ~、なんつう悪趣味な衣装なんだよ・・・)


「はっ、子爵様、

冒険者らしき者が御者を務める馬車が近付いて来ましたので、

停車を命じました。」


「おお!それは丁度ちょうど良いではないか、

直ちに、その馬車を接収せっしゅうして街へと戻るぞ。」


「はっ、畏まりました。子爵様。」



「おい!そこの冒険者、その馬車はギッテル領主でらせられる、

ギッテル子爵様が接収されるとのおたっしだ、

すみやかに馬車を差し出して立ち去るが良い!」


(見た目通りのクソ貴族か・・・)

「子爵様には申し訳ございませんが、

この馬車の所有者は私では無く、

ルクシア共和国の、ピロンの街に御座います、

冒険者ギルド所有の馬車となっておりまして、

ただ今、

マッスル王国のライ国王様への献上けんじょうの品を運搬中ですので、

お渡しする訳には参りませんのです。」


「何!?ライ国王への献上品だと!?

貴様、接収を逃れようと嘘を申して居る訳ではあるまいな、

ライ国王への献上品を、

その方の様な若い者らに運ばせる訳が無かろう!」


「こう見えまして私はBランク冒険者でありまして、

こちらにギルドカードとクエスト証が御座いますので、

ご確認ください。」

サスケはギルドカードと共に、

モモヨに頼んで作って貰ってあったクエスト証を兵士に手渡した。


「むう、確かにBランクとなって居るな、

その若さでBランクとは、人は見かけによらぬものだな、

クエスト証も確かに冒険者ギルド発行のものに間違い無い様だな。

仕方が無い、少々待って居れ。」


「はい、分かりました。」



「子爵様、申し訳ございませんが、

あの馬車はルクシア共和国の冒険者ギルド所有の物で、

しかも、マッスル王国のライ国王への献上品を運搬中との事ですので、

接収は避けた方がよろしいかと存じます。」


「何!?ルクシアとマッスル王国だと!?

むう、確かに両国とは事を構える訳には行かんな、

仕方が無い、街まで乗せて行く様に申し付けるのだ。」


(「申し付けるのだ。」って、

そんな大声で話してたら、直接聞こえてるっつうの、

こんなに近くに居るんだから、直接話せば良いのに・・・)


「おい!冒険者、馬車はもう良いから、

この先にあるギッテルの街まで、子爵様をお乗せするのだ。」


「分かりました。

どうぞ、お乗り下さい。」

サスケは、ミルクを御者台に移動させると、

子爵と3人の兵士たちを馬車へと案内した。


「では、出発いたします。」


「うむ、よきにはからえ。」


しばらくは、黙って馬車に揺られて(揺れないのだが)いた子爵だったが、

徐々(じょじょ)に驚愕きょうがくの表情となって来て、

我慢が出来なくなった様に驚きの声を上げた。

「おい!お前、この馬車は全く音や揺れが無いが、

どのような作りになって居るのだ!」


「はっ、子爵様、この馬車はルクシア共和国の首都ポルポートの街に住む、

天才錬金術士ソンナン・オルカイナ様が造られたと聞きおよんで居ります。」

自分で造ったと告げると面倒な事になりそうなので、

サスケは適当に答えて置いた。


「ほう、オルカイナと申す者が造ったのか、

これ程の腕を持った錬金術士ならば耳に入りそうなものだが、

聞き覚えが無い名だな・・・

スリゴマス、お前は聞き覚えがあるか?」


「はっ、確か前に聞いた事がある様な無い様な・・・」


(無ぇよ。)


「そうか、それではギッテルの街に着いたら、

直ちにポルポートへと向かって馬車を注文するのだ、

これ程の馬車は皇帝陛下でもお持ちになられないと思うぞ。」


「はっ、必ずや子爵様のご要望ようぼうにお応えします!」


(それは無理だと思うぞ、スリゴマス。)


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