幕間12
サスケとミルクに先んじて、
ピロンの街から旅に出たサンたちは、
多少の問題はあるものの、
一応、順調にケモイヤー村へと近づいていた。
サスケが造った荷馬車は、
馬車の前部が、3人横掛けの座席が、前後ろに2列並んでいて、
馬車後部が空間拡張魔法が付与された荷台となっていた。
そして、大工のゲインたちは、自分たちの馬車に乗って来ている。
「「「「「「「チョンピ~チョンピ~、仕事サボろ~、
ブ~ブブブブブブブ~、チョンピ~チョンピ~」」」」」」」
「あの~、ゲインさん、
馬車に乗っている間は、別に歌わなくても良いんじゃ無いでしょうか?
大声で歌われているので、魔獣が寄って来て結構大変なんですが・・・」
「何を言っておるんじゃ、
移動中に、こうやって結束を高めているからこそ、
仕事が捗るんじゃぞ。」
「はあ、そうなんですか・・・」
「ちょっと!ジュリーも一緒になって歌ってないで、
魔獣を倒すのを手伝いなさいよ!」
「「「「キキキ~!」」」」
「ほら、レッドたちも怒ってるわよ。」
「ハッ!私は、いつの間に歌を歌ってたんだ!?」
「どんだけ、感化されてんのよ・・・」
ジュリーも、魔獣討伐に加わったので、
いくらか楽になったものの、
相変わらず魔獣が引き寄せられてくる現状に変わりは無かった。
「ここは一つ、私が馬車を操車して、
魔獣たちを、ぶっ千切るっていうのは、どうかしら?」
「却下!ロリーが操車したら、
魔獣だけじゃ無くて、
ゲインさん達の馬車も、ぶっ千切っちゃうでしょ!
護衛が、護衛対象を置いてってどうするのよ。
だいいち、この荷馬車で、そんな荒っぽい事して、
万一、お頭が付与した魔法が解けたら、
街道に材木が溢れかえって閉鎖状態になっちゃうわよ、
そんな事になったら、いったい幾ら罰金とられたり、
罪に問われるのか分かったもんじゃ無いわよ。」
「私に限って事故は起こさないわよ。」
「事故を起こす人は、大概、そんな事を言ってるのよ。」
そんな揉め事を起こしつつも、
馬車の旅は順調に進んで、
ピロンの街を出てから3日目の昼前には、
ケモイヤー村がある森が見えて来た。
「今回は、すぐ村に戻って来たわね。」
「ホント、この前、お頭たちと来た時には、
数年振りの帰郷だったのにね。」
「お頭に貰った装備のお蔭で、
私たちだけでも、道中の魔獣を危なげなく倒せたしね。」
「そうね、村から出て冒険者に成る為に旅に出た時は、
魔獣に遭わない様にビクビクしながら歩いてたもんね。」
街の入り口が見えて来ると、
誰かが立っているのが見えたので、
ジュリーが声を掛けた。
「また来たよ~!」
「うっわ~!また、ジュリーが出たぞ~!」
「みんな、食べ物を隠すんだ~!」
「村の倉に鍵を掛けろ~!」
「はいはい、お約束は良いから、
とっとと、村長さんに知らせてくれるかな。」
いつもの、やり取りをしている村人たちをスルーして、
リンが村人の一人に告げた。
「リンか、今日はどうしたんだ?」
「うちの、お頭が手配してくれた大工さんたちを、
村に案内して来たのよ。」
「大工さんて、広場に宿泊施設を建てるっていう、
あの話のか?」
「ええ、そうよ、だから村長さんを呼んで来てくれるかな?」
「おお!さすがサスケさん、仕事が早いぜ!
そう言う事なら急いで呼んでくるぜ!」
村人は走って村長を呼びに行ってくれた。
少しすると、
先程の村人に案内されて、村長がやって来るのが見えた。
「サン、リン、ロリー、ジュリー早かったのう、
もう、大工さん達を連れて来てくれたそうじゃな。」
「はい、ご紹介いたします、
こちらが、大工さん達のまとめ役である棟梁のゲインさんです。
ゲインさん、この人はケモイヤー村の村長のソン・チョーさんです。」
「ゲイン!」
「ソン・チョー!」
2人は駆け寄ると、ガッチリと握手を交わした。
「元気そうじゃな!」
「そう言う、お主も元気なようじゃな!」
「あの~、お二人はお知り合いだったんでしょうか?」
2人の様子を見てビックリしながら、
サンが問いかけた。
「いや、まったくの初対面じゃ、
何となく言ってみただけの事じゃ。」
「ワシも、何となく相手に合せてみただけじゃ。」
「その割には、息がピッタリだった様な・・・」
「何だ?このオッサンたち・・・」
幸い、大工のゲイン達と村人たちは、直ぐに打ち解けた様で、
さっそく皆で建築予定地の下見などをしていた。
「じゃあ、この広場に面した、この辺に建てれば良いんじゃな。」
「ええ、基本的に村を訪れた方々の、
お持て成しは広場で行うので、
この、広場に面した場所が良いと思いますので。」
「そうじゃな、この辺なら地盤がシッカリして居る様じゃし、
普通に地魔法で基礎を造れば、そのまま建てられそうじゃの。」
「そうですか、それは良かったです。」
「それでは、ワシらは明日からの工事の打ち合わせをするから、
これで失礼するぞい。」
建築工事中のゲイン達は、村長の家に世話になる事となっていた。
「お主ら、行くぞい!」
「「「「「おう!チョンピ~チョンピ~、仕事の振り~、
ブ~ブブブブブブブ~、チョンピ~チョンピ~」」」」」
「・・・おい、サン、あの大工さん達に任せて大丈夫なのか?」
「はい、仕事は確からしいので大丈夫だと思います。」
「それなら良いのだが・・・
そう言えば、ゲインさん達が作業している間、
サンたちは、どうして居るんじゃ?」
「はい、私たちは広場に足湯を作ろうかと思います。」
「足湯とな?」
「ええ、お頭に教えて頂いたのですが、
皆が集まる場所に、足だけ入れる温泉を作ると良いらしいんですよ。」
「ほう、サスケさんが言うなら間違いなかろうて、
人手がいる時は村の者に手伝わせるから言うんじゃぞ。」
「はい、ありがとうございます。」
「「「「キキキ~!」」」」
「あら、レッドたちも手伝ってくれるの?
ありがとうね。」