人生の墓場
「オークス様、
私とミルクが、この街で暮らす事の、お許しを頂けましたので、
街の教会で結婚式を挙げる御許可を頂きたいのですが、
宜しいでしょうか?」
「おお!それは良いな!
もちろん構わんぞ許可しよう、
ただし、その時は私も呼んで貰えるのだろうな?」
「もちろん、真っ先に、ご招待させて頂きます。
それと、その~、ご来賓客の事で、
少し、ご相談があるのですが・・・」
「何だ?」
「え~と、ご来賓の中に勇者ライ様がいらっしゃるんですよ。」
「勇者ライ様って・・・マッスル王国のライ国王か!?」
「はい、そうです。」
「何でまた、そんなビックネームが出てくるんだ?」
「はい、それが、ライ国王の王妃であるルクレツェア様が、
ミルクの幼馴染で、今も親しい友人なんですよ、
それで、ルクレツェア様をご招待したところ、
付添としてライ国王もご出席される事となりまして。」
ライがサスケと同じ地球から来たという事は、
ライにとっての重要な秘密なので、
ミルクと相談して、こういう話にしたのであった。
「なる程、王妃様との交友があっての事か、
そうなると、至急カメオークに連絡を取って、
国賓として、お迎えする準備が必要となるな・・・」
「いえ、オークス様、
ライ様は、今回はルクレツェア様の付添として入国するので、
冒険者として入国すると仰られてます。」
「目立ちたくないから、お忍びで入国するって事か?」
「ええ、ライ様方は王妃様も含めて、皆さん冒険者の登録をされてますので、
自由に他国と行き来が出来るんですよ。」
「そう言えば、昔の勇者イチローと一緒で、
元々は冒険者で、それから勇者に成られたんだったな、
皆さんと言う事は、他の奥方も観得るという事か?」
「はい、皆さんには大変良くして頂いたので、
ぜひ、ご招待したいのです。」
オークスの言葉にミルクが答えた。
「ミルクが良くして頂いたというのは、もしかして・・・
い、いや、私は知らない方が良さそうだな。」
「ええ、その方が宜しいかと存じます。」
「まあ、余り目立ちたくないと言う気持ちは、
私にも分かるから、今回はサスケの客として扱う様にするか、
非公式で良いから、ご挨拶の機会位は設けてくれるのだろ?」
「ええ、ライ様のご性格からして、
そういった扱いの方が喜ばれると思いますので、
ライ様に、お伺いを立ててみます。」
「うん?サスケはライ様にお会いした事があるのか?」
「はい、先日、お会いしました。
実は、ピロン領の地方にケモイヤー村と言う村があるのですが、
そこに、私が温泉と言う物を造りましたところ、
ライ様が、温泉を大変好かれているとの事で、
すぐに、見にいらっしゃったんですよ。」
「オンセンとは、どの様な物なのだ?」
「温泉と言うのは、温かい泉と書いてオンセンと読むのですが、
体の疲れが取れたり、肌がキレイになったりする効果がある、
大きなお風呂と考えて頂ければ宜しいと思います。」
「お湯に、その様な効果の魔法が付与されて居るのか?」
「いえ、大地の奥深く火山の熱で高温になっている場所に、
お湯が長い時間を得て溜っていく過程で、
大地の持つ力が、自然とお湯に滲み込んでいった物なんです。」
「ほう、大地の力か・・・
それは、確かに効きそうな感じがするな、
私も時間が出来たら、ぜひ案内して貰いたいものだな。」
「はい、今、街の大工さんに宿泊施設の建築をお願いしてあるので、
完成の暁には、必ずご招待する事を、お約束致します。」
「うむ、それは楽しみだな。」
サスケとミルクは、結婚式の正式な予定が決まったら、
直ちにオークスの元へ連絡する事を約束して、
領主の城を後にした。
サスケとミルクが辞去した城の居間で、
領主のオークスと、騎士団長のカタブツが会話を交わしていた。
「お館様、宜しかったのですか?」
「何がだ?」
「サスケ殿とミルク殿の事です。
お二方が善人で在られる事は、私にも理解出来ますが、
将来的にフェルナリア皇国とのトラブルを呼び込む事は、
十分に考えられますぞ。」
「あの見事なオリハルコンの剣を、そなたも見たであろう。
サスケが採掘に行ったと言っていた、
あの廃坑付近で、過去にオリハルコンが発掘されたなど言う話は、
聞いた事が無いぞ、
つまり、サスケはオリハルコンが採れる場所、
もしくは入手手段を持っているという事だ、
懐に抱えていても十分に有用性があると思うがな。」
「建前の方はそうとして、お館様の本心は?」
「あやつらの近くにいれば、何か面白い事が起きそうな気がしてな。」
「ハァー、お館様の事なので、そんな事であろうと思いました。
まあ、サスケ殿のお味方には、
マッスル王国のライ国王陛下も居られる様ですから、
大丈夫だと思われますが、
一応、皇国の動きには気を配っておく様に致します。」
「うむ、頼むぞカタブツ。
私の方でも、サスケの結婚式にライ国王が来られた際、
どの程度、サスケに肩入れされているかを探っておくとするから、
その結果によって、今後のサスケらの扱いを考えるとしよう。」
「はっ、畏まりました。」