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おもいで迷子  作者: 空乃 千尋
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 「ごちそうさま~っ! はぁ~、美味しかったぁ」


 夕食を食べ終わり、食後の挨拶。そして結論。やっぱりカレーうどんもいいものである。ちなみに、ママがうどんを茹でている間にお風呂はもう済ませてある。


 さてと……。


 「じゃあ、探すとしますか……」


 たまには諦めも肝心ではあるかもしれないが、所詮、《たまには》である。こればかりは負ける訳にはいかない。自分が負けたくないって思えたことから逃げ出すなんて出来るはずがない。


 思いっきり勢いをつけてドアを開ける。意気込みは十分だ。さぁ、いざ戦場へっ!


 「……」


 すでに戦場は廃墟と化していた。


 蘇る記憶。


 落下する隕石(私)。


 崩壊する地形(本の山)。


 そうして今ここに広がることになった惨状はもはや絶望的と言って過言ではないだろう。


 やっぱり、ともちゃんに頼んだ方が良かったかな? 流石にもう帰ってるだろうし。


 いやっ、負けるもんかっ!


 いずれにしたってこの部屋は片さなきゃいけないんだ。それに苦境を乗り切ってこそ勝利は更に意味を持つはずである。


 ブブブブ。


 携帯が振動し、メールが来たことを告げる。ん? ともちゃんからだ。


 「今日はごめん。昨日なにか忘れ物しちゃったって、ゆう君とママから聞いたんだけど、なに忘れちゃったのかな? 今ちょっと探しては見たんだけれども、それっぽいものは見つからなくって……」


 いや、この携帯を忘れたと思っていたんだけどなぁ。それは見つからないはずである。


 そういえばともちゃんママが連絡させるとか言ってたっけ。っていうか、もし携帯見つかってなかったら連絡も何も出来なかったじゃんっ! 何忘れたかってちゃんと伝えてなかったもんなぁ。ゆうをいじるのに夢中になってたから、すっかりボケてたわ。全く、ゆうの奴め。


 まぁ、結果オーライだからいいか。今回は許してやろう。


 理不尽な報復を受けずに済むことが、ゆう本人が知る由もなく決まったところで、とりあえずともちゃんにメールを返すことにする。まぁ、心配させても悪いしね。


 え~と。


 「ごめんっ! ありがとうっ! 大丈夫だよ! もう見つかったから!」


 と。よし、送信……。って、そうじゃなくって。そうだよ、せっかくともちゃんにメールするならアルバムのこと頼めばいいじゃないか。


 えっと、ちょっと消して、


 「ごめんっ! ありがとうっ! 大丈夫だよっ! ただ、卒園アルバム見たくなったんだけど、ちょっと貸してくれないかな?」


 と。よし、今度こそこれで送信。


 まぁ、たまには人に頼るのも大切だよね。いや、別に逃げた訳じゃないよ。ちゃんと片付けだってするし。いつかは……。


 ブブブブ。


 「え~、やっぱりそういうことなの? ダメだよ。それは(笑)」


 ん? はい? ダメ?


 えっ! なんでっ? 一体どうしたと言うんだろう? 別に普通にアルバム見せてって言っただけなのに、何でダメなんだ?


 そりゃ、私みたいに見せたくない写真があるとかならわかるけど。でも、昨日は普通に見せてくれてたじゃん。


 ん? あぁっ! 昨日っ!


 昨日、自分が何をしでかそうとしていたかにようやく気付く。そういえば、あのアルバム燃やそうとしたんだっけ。


 それは警戒もするはずである。


 でも、違うんだ。決して今度はそういうつもりではない。


 しかし、どう言い訳したらいいんだろう。夢のお告げ? いや、本当にそんな感じなんだけど、そんなことを言ったらただの痛い人になってしまう。え~、なんて言ったら誤解されないで済むかな……。


 あぁっ! 考えても埒が明かないっ! こうなったらいっそのこと今から直接見させてもらいにっ! ちゃんと会って頼めば、ともちゃんならわかってくれるはずである。


 思い立ったら即断即行。いざ、ともちゃん家にっ!


 勢い勇んで部屋を飛び出し、階段を駆け降りる。おっと、流石にパジャマのままでは行かれない。着替えなきゃ。


 部屋のクローゼットを目指し、もう一度階段を上る。最上段に向け、もう一歩を弾ませて二階に着地。私の部屋はこの廊下の一番奥なのだが、そこで足が止まる。


 ……、暗い。


 不思議なもので、他のことに意識が向いているときは全く気付かないものだが、一度気付いてしまうともうアウトである。


 ギシ……。


 一歩踏み出すと、老朽化した床が軋む。たかがか数メートルのはずだが、その先を隠している闇が、実際の距離以上の道がそこから続いているかのような気配を漂わせる。


 ギシ……。


 不自然な位の静かさがより自分の足音をより強調させ、自分の家のはずなのに妙なプレッシャーを感じる。今にも何かの足音が聞こえてくるような気がして……。


 ダンっ!


 ガチャっ!


 バタンっ!


 「はぁ、はぁ、はぁ……」


 恐怖に耐えかねて、全力ダッシュで部屋に飛び込んだのだった。ドアに寄りかかりながら、ゆっくりと尻もちをつく。大した距離を走った訳でもないのに息が乱れる。


 っていうか、こんなんじゃともちゃん家になんか行ける訳ないじゃんっ!


 無駄な時間を過ごしてしまった。


 さてと。


 「じゃあ、探すとしますか……」


 ちょっと前にも同じことを言ったような……。だが、その時より3割くらいモチベーションは下がっている気がする。


 しかし探さなければ始まらない。よっしっ! 一念発起して重い腰を上げる。いや、別に実際に私が重い訳じゃないからね。確かに、クラスの他の女子と比較したら多少……、割と重いかもしれないけど。でもほら、私には身長があるし。うん。だから仕方ない。仕方ないんだ。


 私、別に太っては……。


 ……、ヤバい。二の腕、少し掴めるな……。やっぱりダイエットは必要なのかもしれない。


 まぁ、それはさておき。とりあえず、一番多く本が固まっている場所へ身軽に足を運ぶ。確率で考えるならば、一番ある可能性が高いのはここだろう。


 一冊、二冊、三冊、四冊……。しかし、出てくるのはマンガばかりである。懐かしいなぁ、この本。確か小学生の頃に買ったやつだ。


 ん? でも一巻がないな。手に取った四冊は、三、五、六、八巻である。他のはどこに行っちゃったんだろう?


 しかし、よく読んだんだよね、このマンガ。最近読んでなかったけど、確かこの二巻で登場するあのキャラクターが好きで……。


 って、まずいっ!


 ページを開きかけた手を止める。このままだったら危うくマンガに読み耽って気付いたら就寝ってパターンである。


 危ない、危ない。


 更に数冊手に取ってみるが、他のタイトルのマンガが出てくるばかりで一向にアルバムは出てこない。っていうか、さっきのやつの一巻はどこにあるんだよ。今度探しておくか。


 しかし、マンガしかないな。他の本はどこに?


 ああっ! そっかぁっ!


 昨日探したときはすっかり忘れてたけど、そういえば一昨日の夜、簡単に本の整理をしたんだった。マンガの大陸、教科書の島、その他の山々。


 そして、どうやらここはマンガの大陸だったらしい。


 いやぁ、気付いてよかった。当てもなく探したらまた昨日みたいになってしまっていただろう。これなら割とすぐ見つかるかも。


 それじゃあ、あっちかな? 次に本が多く集まっているところへと軽やかに身体を運ぶ。


 さて、ここはどうかな? おっ、これは算数の教科書。じゃあここは教科書の島だったところか。ほら、これも数学の教科書だし、これも……。


 ってこれ、さっきのマンガの一巻じゃんっ!


 どうやら昨日の大災害で地層が大きく変動してしまったらしい。もはや当てなど何処にもない。


 そして、一度希望めいたものを眼の前にちらつかせられてしまうと、最初からないものと諦めていたときより絶望が増すものである。


 「ちくしょう……」


 口から零れ出た言葉には、もはやポジティブさの欠片すら感じられない。ダメだ。ショックが大き過ぎる。


 ちなみに私の負けず嫌いでポジティブな性格は、間違いなく好きなマンガから影響を受けたものである。当然、持っているマンガのジャンルもスポコンもの(しかも少年漫画)が多い。


 そしてもちろん、今手に持っているマンガもバリバリのスポコンもので、落ち込んだときとかにはよく励ましてもらったものである。


 まぁ、八巻で打ち切りになってしまい、あんまりに中途半端な終わり方をしてしまったので少し残念だったのだが……。でも、そう、この一巻ではこんなにへなちょこだった主人公がこれからどんどん成長していくんだよね。そうっ!この先輩との出会いから全てが始まっていったんだ。それで……。

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