番外編(12月24日)
クリスマスイブということで書いた話です。
九十九君と御巫さんのいちゃつき(?)に挑戦。したものの書いててこっちが恥ずかしくなり、短いです。
御伽を書いてる時に書いたものだと思われます。本編はシリアス真っ只中でした。
これはもうひとつの、御伽噺。
御伽集 番外
「やっほー九十九君、本編とは裏腹に明るい雰囲気を作るぜへいへーい」
「御巫、お前のキャラがわからねえ」
ある冬の寒い日、某月某日、言ってしまえばクリスマスイブの日のことである。
「キャラを作らないというのが私のモットーなの」
「そんなモットーやめろ、対応に困るんだ」
「嫌です」
「即答しやがった……」
「ところで九十九君、今日は何の日か知ってる?馬鹿な九十九君。いえ、大馬鹿な九十九君」
「わざわざ言い直すな……えっと、クリスマスだっけ?」
この前、妹達に付き合って買い物に行った時に、かなりクリスマスっぽいムードだったからな。
「残念、クリスマスイブよ」
「あんまり変わらねえよ」
「サンタというなのおじさんが煙突から入ろうとして、無残にも落っこちそして腰の骨を砕く日よ」
「え?そんな日だったっけ!?」
「そうして私は彼を見つけて、どうしたのって訊くと、煙突からかっこよく入ってドヤ顔でプレゼントを置こうと思ったって言うのよ」
「どんなサンタだよ……」
「だから優しい私は言ったの。腰の骨が折れたなら、首の骨も折ればいいじゃない」
「怖っ!それ死ぬよな!」
恐るべし御巫。サンタに恨みでもあるのだろうか。
小さい頃に夢を突然壊されたとか?
「いえ、私の家ではサンタさんなんかいなかったわ。妖怪さんならいたけれど」
「妖怪さん!?」
「焼きそばパンを買って来てって言うと買って来てくれる、とっても素敵な妖怪さんよ」
「それは俗に言うパシリという奴では……」
「言ってしまえばお父さんなのだけれど」
お父さん!
何パシられてるんですか!
「ちなみにこの時点で九十九君は私のお父さんには会ってないわよね」
「いつか会うことが!?」
それは驚き。
たぶんイケメンなんだろうな。御巫のお父さんだし。
「で、九十九君」
「ん?」
「クリスマスといえば?」
「……ケーキ?」
「もっとアバウトに」
「キリストの……」
「違う。そういう意味じゃない」
「えっと……」
御巫はため息をつく。
「パーティしましょうよ、ふたりで」
「やっほー九十九君!買い物に行こうっ!」
「や、やっほー?」
僕と御巫の間に突然朱雀が割り込んだ。
御巫はものすごく不機嫌そうな顔をした。
「パーティするなら買い物しなくっちゃね!ねぇ、御巫さんっ」
「余計なお世話よ朱雀さん、私と九十九君二人でするんだから」
「女の子いっぱいの方が九十九君も楽しいよ、ね。幼い女の子とかいたら楽しいよね」
「幼女がいるとか天国じゃね?」
「ほらっ」
御巫はさらに嫌そうに顔をしかめたが、本音だし。幼女とか最高じゃん。幼女幼女。
「鈴河に会いてーなー」
「疎ちゃんもいていいんじゃないの?」
「疎が鈴河を引き連れてくれればなー」
「話があまり噛み合ってないし、何故朱雀さんとかが来る話になっているの?」
九十九君はロリコンを少しは隠しなさいよ、と御巫は言う。
ロリコンは隠せないんだよ。
幼女がいると、テンション上がり過ぎて隠しきれない。
「いいじゃない、それに」
朱雀はいつもの笑顔で、御巫に向かって言った。
「私、今回のクリスマスパーティで九十九君を落とそうなんて思っているわけではないから」
「思ってるでしょう!」
「思ってないよぉ」
「ぜっっったい思ってる!」
「御巫さんと仲良くなりたいんだってばぁ」
「嘘よ、顔に嘘って書いてあるわよ」
「あはは、書いてないよ」
怖いよ、お前ら。しかも僕の取り合いとかおかしいぜ。僕の何がいいんだよ。
「じゃ、じゃあ皆でやろうぜ?せっかくのクリスマスだし」
「そうだよね、九十九君」
笑顔の朱雀を他所に、御巫は不服そうだったけれど、渋々と頷いてくれた。
「仕方ないわね……じゃあ朱雀さん、帰りにケーキの準備をしましょう。作るわよ」
「うん!」
「僕は何かするか?」
「じゃあ疎と買い物行ってきてくれる?疎に電話するから」
「おう」
そのあと、僕は疎と会った。
そして御巫と朱雀と別れ、疎と買い物に行った。
「御巫も満更でもないよなあ」
「ん?何がだ九十九先輩」
「いや、御巫さ、朱雀と仲悪そうに見えて……っていうか一方的に嫌ってるように見えるけれど、意外に嫌ってはないんだなというかなんと言うか御巫はだな」
「長い、簡潔に」
ぐっ……そんなこと言われても。
「御巫は思ったより朱雀を嫌ってない」
「なるほど」
よかった……たまに疎は僕に厳しすぎるからな……。こういう時、理解できるまで質問されたり聞き返されたりしまくるからなこいつ。
「確かに嫌っていたらああいう風に買い物に行ったりしないだろうな」
「だよねー!」
「九十九先輩、女子のようで気持ちが悪いというか気持ち悪いそしてキモい」
「ほぼ同じ内容だったが?」
「そんなことはない」
そうかな……、たぶん買い物終わるまでこういう対応なんだろうなあ。僕のガラスのハート割れないかな、大丈夫かな。
「あ、ここだ九十九先輩」
電車に乗って二つほど離れた駅で降り、駅からそう離れていないところに大きいデパートがある。そこに僕らは来ていた。
「ふむ、やはり少し混んでいるな。消すか」
「は!?」
「嘘だ。じゃあ私は行ってくる」
「いや、一緒に行くんじゃ……」
「九十九先輩、クリスマスと言えば?」
「え、パーティ?」
馬鹿、と小突かれた。だって御巫が言ってたんだもん。
「ま、そこらへんは考えるんだな。後で連絡する」
僕は疎に置き去りにされた。
えー……。どうすれば。
「うーん……とりあえず、適当に回ってみるか」
呟いて、僕は適当に店を回ることにした。
しばらくして、僕はあるアクセサリーショップで立ち止まる。
「クリスマス……と言えば……プレゼント、なのか?」
そういえばサンタがどうのっていう話をしたな。
「…………ふむ」
いいこと思いついちゃった。
「九十九先輩、終わったか?」
「おう……って、荷物持つか?」
「頼んだ」
しばらくして疎と落ち合い、疎の荷物を持つ。
「何かわかったか?クリスマス」
「まあな」
「ならよかったが。早く帰ろう」
僕は頷いて、御巫の家に向かった。
彼女の家に着くと、もう既に暗くなっていた。
「いらっしゃいませー」
と、朱雀が出迎える。僕らは客じゃないのだけれど……。
「疎ありがとう。ケーキはもう作ったわよ」
「さすが御巫先輩、何でもできるのだな」
「ほぼ私が作ったんだけれど」
朱雀は笑った。
御巫、料理苦手なのかな……おもしろい。
「九十九君後で殺す」
「え!?」
「いいな、御巫先輩、私もやる」
「私もー」
「朱雀もか!?」
ていうか僕、何気にハーレムじゃん。ウハウハだぜ。一種のギャルゲーじゃん!誰を攻略しよう(うち二人は僕のこと好きだけれど)!
「包丁スタンバーイ」
御巫が包丁を投げる姿勢だった。
怖い怖い!
「ごめんって!投げるな!」
なんか心を見透かされてるみたいだな……。
今日皆が凶暴だよ、どうしよう。
そんな不安をよそに、女子三人は夜ご飯の支度を始めてしまい、僕は暇人だった。
あまりに暇すぎたので、幼女がこの場にいたらどうしようという妄想をしていると。
「相変わらずの変態ですねぇ、九十九さん」
こ、この声は!
「うっわーい!鈴河じゃん!いぇーい!」
「五月蝿いですよ。九十九さんに召喚されたんですよ、天国から」
まじで!?僕すげー!
いや、待てよ。これは僕の妄想なんじゃ……!
「てーいっ!」
「ぎゃああああああっ!!滅びろ変態っ!!」
スカートをめくったら叩かれた。
はっはっはっ。痛いってことは現実だしその上見えた!
まさかのピンク!ストライプ!
勝ったぜ!
「自信満々に何を言っているんですか!私が生きていたら通報していました!」
「残念だな……お前はもう死んでいる!」
「北斗の拳ネタを引っ張り出さないで下さい!天国警察に通報しますよっ」
何だそれ!天国にも警察あるの?
「一秒で九十九さんなんかけちょんけちょんのぐっちゃぐちゃですぅ!!」
「果てし無くグロい!」
これからご飯なのに。食欲なくなっちゃうだろ、まったく。
「あーあ、せっかく九十九さんにクリスマスプレゼントをと思って降りてきたと言うのに……」
「まじで?プレゼント?お前のパンツか?」
「おえっ、今御伽集史上最強に気持ち悪いです!帰ります」
「待て待て、冗談だよ。気にするな」
「……気にしない方が異常ですよ。御巫さんもよくこんな人が好きですねぇ」
「御巫にはこんな気持ち悪い発言しないからな、嫌われるわけがない」
はーん、と見下したように言う鈴河。
別に、それ傷つかないもん。むしろ素敵だもん。もっと見下していいよ?
「九十九さん、メリークリスマスっ!!」
ごふっ。
鳩尾突かれた!
クリスマスプレゼント酷い!
「あ、でもご褒美か……」
「ええ……今のがプレゼントだと思われたらなんと言うか安上がりなんですが……」
「買ったの?」
「ま、まあ……」
へえ。鈴河もなんだかんだ言って優しいじゃん。
「はい、どうぞ。本当のプレゼントです。いえ、別に鳩尾パンチを五百回でもいいんですけどね?」
鈴河は肩から下げた小さいポシェットから、細長いプレゼント箱を取り出した。
「おお、ちゃんとしてる」
「クリスマスですからね。ていうか、普通は年上からもらうものでしょうけどね」
「キスしてやろうか?」
「やめてください気持ち悪い。あー気持ち悪い。気持ち悪いというかキモいです」
こいつ……まじで疎の妹だ。言うことが似てるんだけれど。見た目だけじゃなく言うことまで!
「ていうか九十九さんのファーストキスが死んでいる私なんて重いです!本編ですら重いのに、真っ暗いのに!黒闇陽殺戮衆のようにっ!!」
「黒闇陽殺戮衆ってなんだよ!」
怖いよ!
どーせ狂った奴らばっかなんだろ?
でしでしーとか言う奴いるんだろ?
「つーか何で知ってるんだよ」
ファーストキスがまだなことを!誰にも言ってないぞ!
「何でも知ってる隠ちゃんですから」
「そ、そうか……」
それセーフ?若干某物語シリーズの人物とキャラ被りませんか?
まあいいや!
「ちなみに中は栞ですから。どうぞこの物語の栞にでも使ってください」
「使い方はそうしないだろうが、そうか。ありがとな」
普通サイズの栞をこの話に挟むとかスケールがでかいぞ。
「じゃあ……そんなに下界にいられないので
そろそろおいとまいたしますです」
「まじか。悲しいぜ。九十九錦、人生最大の悲しみだ」
「あーはいはい、そうですかそうですか」
軽く流された……本当なのに!
「では、よいクリスマスを!」
「じゃあなー」
言って、鈴河は消えていった。
うん、また会えるだろ。本編では無理だろうけどな!
楽しい時間から少しして、料理が出来たようで、僕らは夜ご飯にした。
「あとはケーキだな!ケーキ!」
と、ご飯を食べ終わった後に疎が物凄く嬉しそうに言った。
結構な量があったのにまだ食べるのかよ。
「それは後でね」
「なぬっ!?」
がっくりと項垂れる疎をよそに、朱雀と御巫は片付けを始めている。僕だけ何もしないのも悪いので、手伝った。
一通り終わった後、台所からリビングへ戻る。
「朱雀、疎」
僕は朱雀と疎を呼ぶ。
「ん?なにかな?」
朱雀は笑って振り向いた。疎はケーキがまだないので不機嫌そうだったが。
「ほい、クリスマスプレゼント」
二人に僕はプレゼントを渡した。
「わ、ありがとう!」
「九十九先輩が気の利いたことを……天変地異だ」
「そこまでかよ」
ちなみに朱雀には文房具、疎にはキーホルダーだ。今更だが、疎には食べ物の方が良かった気がする。
「…………」
後ろから御巫の視線を感じる……。
「…………御巫、なに?」
「いえ、何も」
振り向いて問いかけると、御巫はそっぽを向いてしまった。
うーん、作戦成功するかな。
「あ、もしかしてー、私に浮気?」
と朱雀が嬉しそうに言う。
「いや、それはないけど」
「えー」
「はっ……私か?」
「んなわけあるか」
疎は自意識過剰だから。
「……別にいらないわよ、そんなロリコンからのなんて」
え、もしかしてさっきの会話聞いてたの?
「九十九先輩……まさか?」
疎が怪訝そうに僕を見る。
ふむ、まだダメだな。
物事にはタイミングというものがあるのだよ、疎。
「九十九君のばーかっ」
などという可愛いことを言いながら御巫は部屋を出て行った。
「「ばーーかっ」」
「お前らまで!?」
若干ショックを受けつつも、僕は御巫を追いかけた。
「よう御巫」
廊下にいた御巫に声をかけると、彼女は僕の方を見向きもしなかった。
「…………何よ。浮気野郎、ばーか、ロリコン、変態」
何こいつ。超かわいいんだけど。
あーあ。
僕は御巫の頭をプレゼントの箱で軽く叩いた。
「ないと思った?」
「………………思った」
消えいるような小さな声で彼女は呟いた。
「あげる」
御巫はプレゼントを手に取り、その場で開けた。まあ開けてくれないと困るんだけれど。
「……ネックレス?」
「そ。一応お前のから先に買ったんだぜ。ちなみに朱雀は文房具だし疎はキーホルダーだから」
「ふーん」
御巫は、イミテーションだけれど、透明な青の輝きを放つネックレスを取り出し、首につけた。
「似合う?」
「かわいい」
「…………もっかい」
「超かわいい」
「九十九君のばーか」
「はいはい」
御巫は笑って、僕を軽く叩いた。
作戦成功したから、満足だ。
「甘っ。あっま。ケーキより甘いぞ」
「そーだねぇ。私の入る隙がないよ」
「見てんじゃねえよ」
朱雀と疎が覗き見してやがる。超絶恥ずかしい。
「爆発させるぞこの野郎」
「怖いこと言うなよ疎……!」
あれか、リア充爆発とかいう奴か。お前ならやりかねなくて怖いよ。
御巫は僕の後ろで少し笑って、
「ケーキ食べましょうか」
「さんせーい!」
「よし、口直しだ」
「何のだよ……」
もう少しだけ、幸せな時間は続きそうだった。
せっかくだから、ここに鈴河の栞を挟もう。
ほんの少しでも、この時間が続くように。
幸せな時間で物語を止めておこう。
御伽集 番外 終幕
※本編とは全く関係ありません※