3.記者、記事を書く3
古鉄君は相変わらず暑苦しそうな学ランの上のボタンをはずしていた。
本子とセトも走ったのか、少し息が荒く顔も紅潮していた。
「あ、古鉄君。よく迷わず部室に来れましたね」
「めちゃくちゃ迷ったからこの時間に着いたんですけどね……」
「お茶ならそこのポットに入ってますよ。あと椅子はそこです」
「ありがとうございます」
古鉄君はすこし疲れたような表情を見せ、椅子に腰かける。
「それで、密着取材はどうですか?」
「される側の気分は十分わかりました」
「2人はどうだった?」
「上々、です」
蒲美は無表情でグッと古鉄君にグーサインを見せる。
「まぁ、こてっちゃんが考えてた通りだったよ」
「なにか思ってたことでもあったのですか?」
「いえいえ、こちらの話です。気にしないでください。……そういえば愛華さん」
「はいなんでしょう?」
モニターから古鉄君へと目をそらす。対面にいた古鉄君の顔が意外と近くて、すこし後ずさる。
「今日の部活終了後、お時間ありますか?」
「え、ええ……まぁ。ありますよ」
「よかった……じゃあ僕の家に来てください。やりたいことがあるんです」
「おっ、こてっちゃんなにやるのかね?」
碧が古鉄君の肩にリュックから伸びる煙突を乗せる。
煙が私の方に飛んでくるのだが。
「ウチらにおせーて!」
「それは内緒。別にいかがわしいこととか考えてないですからね、愛華さん」
「わかっていますとも」
そういえば、私はあの小柄な鮫の神が消えていたことに気づいた。
「あれ、そういえばフカちゃんはどこ行ったんですか?」
「ああ、先に僕の家で準備をしてもらってるんです。碧、蒲美。お疲れ様」
「もう密着取材終わりなのですか?」
「ああ。今から本子とセトさんと一緒に家に行ってくれないかい?」
「りょうかーい!じゃ愛華っち、またあとでね!」
「ええ、またあとでお会いしましょう」
次々と壁をすり抜けていくゾン子。最後に本子が一礼し、部室を出た。
(本子だけ恭しくドアを開けて出て行った)
「ところで、今何をなさってるんですか?」
古鉄君が私のパソコンを覗き見る。
モニターには書きかけのインタビュー内容が記されていたのだが、
古鉄君はそれをじっくりと読み始めた。
「あの時は愛華さんがどうしてこうも黒魔術を打ち破ってくるのか疑問で」
「原因はわかったんですか?」
「い、いえさっぱり」
「あ、そうだひとつ聞きたいことがあったんです」
「……なんでしょう?」
モニターから目を離さず、古鉄君は頷いた。
「私には『波長がない』と昨日言ってましたね。その『波長』ってなんのことですか?」
「波長?そんなこと言いましたっけ……?」
「ほら、私を地下室へ連れて行く前の話です」
「あ……あー、思い出しました。確かに言いました。でも大した意味じゃないですよ」
古鉄君はどこか上の空でモニターを見つめていた。
それから30分、私の記事は完成に近づいていた。続きはまた明日だ。
私と古鉄君は2人そろって学校を出た。




