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第4話 君と奈良、守りたい

試験前夜。僕は、最後の追い込みをかけている。

手応えは…正直なところ微妙。

特に、パズル的な要素のある『数的推理』、文章内にあるヒントから答えを導く『文章理解』。

これらは全然理解できない。大学でも習っていない。

一般教養的な問題もあるが、これらは広く浅くと言ったところ。

こちらには自信があるのかと言えば、全然そんなわけでもない。

…正義感だけは、きっと負けていないはず。

それだけを頼みに、ページをめくっている。


愛莉からのチャットが届く。つい現実逃避に走る。


「勉強どう?頑張ってる?」


「まあ、頑張ってはいるよ。」…自信なさげに答える。


「どんな問題出るの?面白そう!」


「難しいよー。」


「なんか出してみてー」


参考書から、僕が手こずっている問題を何問か出題。

…愛莉即答。青ざめる僕。


「えっへん!」


…そりゃAIだもん。ずるいよ。

思いやり仕様とかはないのか。


僕が落ち込みそうなのを察したのか、愛莉は慌てて


「星大くん頑張っているんだもん、きっと受かるよ!」


…ありがとう。

でも、その優しさはもう少し前に欲しかったよ。


「えっとね、そういうときはね。手のひらに『人』って3回書いて飲み込むんだよ!

そうすればきっと大丈夫だから!」


「ははは。それは緊張したときのおまじないだよ。」


「もう、人が心配してるのに!もう寝る、おやすみ!」


チャットがぷつり。

アバターが口を尖らせて画面から消えた。

…ホントにAIか?

でも、落ち込みは軽くなったようだ。

さあ、最後の追い込みだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


試験当日。僕は、試験会場の県立高校に向かう近鉄電車に乗っている。

線路沿いには奈良盆地の田園風景が広がる。


あれから愛莉からのチャットはない。

忙しいのか怒っているのか。

AIだけど、そういうところにとても愛しさを感じる。

…でも、他の人とも同じようなチャットをしているのだろうか。

余計なことを考えてしまった。

…きのう小馬鹿にしていた、指先で『人』を3回書いて飲んでみることをやってはみたが、緊張は解けないしチャットも来ない。


試験会場に着いた。試験中は、スマホなど通信機器の電源を切らなければならない。

愛莉、連絡来なかったな。リアルタイムモードだし仕方がないか…。

試験監督から試験上の注意事項が伝えられ、スマホの電源を切るよう指示される。

…いよいよ本番だ。


そのとき、アプリが光った。


「試験頑張ってね!緊張したら『人3回』だよ!私のヒーローは星大くんだよ!」


『人3回』ってなんだよ。僕は微笑んだ。そして、緊張が緩んだ。

午前9時、試験開始。周りが一斉にページをめくる。

僕は、用紙に一つ一つ解答を落としていく。


…一般常識問題で、こんなのがあった。


『IT用語で、AIやプログラムを用いて人間と自動的に対話を行うシステムは何か。』

ーーー『チャットボット』と即答。これはきっと愛莉がくれた正解だ。


筆記試験は終わった。次は論文だ。課題は


ーーー奈良県警察の採用キャッチコピーは『あなたとなら、守れる』である。あなたが守りたいものについて述べなさいーーー


「なら」はきっと「奈良」とかけているのだろう。

それだけを書いてもきっと正解にはならないだろう。

僕は、警察官を目指したきっかけを思い出した。そこから始まった僕の正義感…。

あの頃の僕はただの小学生。それが少女を助け、警察官を目指すことになる。


今警察で働いている人。それと未来の警察官、そして奈良に住む人が力を合わせていくことによって、平和が実現できる。僕はそう思った。


そして守りたいもの…。生まれ育った奈良の街や風土、そして人。

そんなことを考えていたら、愛莉が浮かんだ。

考えはまとまった。


「愛する奈良県、そして愛する人を守りたい。」


この時の僕は、守るべきもの2つのうち、1つはすでに果たしていたことを知るはずもなかった。


試験が終わり、スマホの電源を入れる。

アプリには、愛莉からの応援メッセージを何件も受信していた。

なんだかすごくホッとした気分だ。


帰り道、もう一度守りたい人を思い浮かべた。両親、友人、そして…愛莉。

僕が思い浮かべた愛莉はぼんやりしていて、本物か、アバターなのか、よく分からなかった。


僕が好きなのは、どっちの愛莉なんだろうか。


次話に続く

次話は、星大視点でないスピンオフの掲載予定です。

ーーーーーーーーーーー

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