第8話 星のヴェール
バンッ!!!
愛莉越しに、激しい衝撃が伝わる。
その瞬間、私は悟った。
愛莉の生を繋ぎ止められない。
もう、戻れない。
ごめんね。
私では、愛莉を助けてあげられない。
このあと私たちは、ある場所へ行く。
あなたの知らない場所。
でも私は知っている。
それは、私たちが出会った場所であり、
そして、これから別れる場所。
その前に、私にできることがある。
私の恋は、どうやっても叶わない。
だからせめて、あなたには幸せになってほしい。
私の想い、星大くんに届いて。
どうか、愛莉を助けてあげて…。
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星大くん。
あなたは知らないけれど、
ここは、私が生まれた場所。
愛莉が、私にその想いを託した場所。
私は星大くんと出会って恋をした。
そして、今度は私がその想いを愛莉に託す。
【私の恋はここで終わり。あなたの恋がここから始まる】
私の想いは光になって、
きっと、あなたたちの間に橋を架ける。
最後に、星大くんに届けたい言葉を、
そっと送るね。
ありがとう
だいすき
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国立奈良医大。立ちつくす青年が一人。
その青年は、長時間雨にさらされて疲労が限界に達しようとしていた。
それでも、必死に祈っていた。
朧げな意識の中、優しげな淡い光に包まれるような暖かさを感じた。
そのスマートフォンには
ありがとう
だいすき
の文字が浮かび上がり、そして消えた。
そのメッセージから、何かを受け取ったのか、青年は自転車に乗った。
ゆっくりと、ゆっくりと、進んで行く。
その上をヘリコプターが追い抜き、三輪山の彼方へ消えて行く。
南の空には、雨雲の切れ間に天の川が淡く輝く。
ベガとアルタイルが、天の川を挟んで向かい合う。
青年には、ヘリコプターの放つ光が、天の川を渡る星の架け橋に見えた。
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…横たわっている私がいる。
動けない、目も開かない。
最後の記憶は、車が迫っていたこと。
私は…どうなってしまったの?
側に光が見える。誰かが立っている。
目も眩むほど明るい光。あなたは…天使?私はもう、生きていないの?
やがて、その明るさが落ち着き、輪郭が見えてくる。
これは…私?あなたは…私なの?
ねえ、今まで夢に出ていたのはあなたなの?
あのとき、抱き合っていたのは誰?教えて!
私の問いかけにあなたは答えることなく、私に告げる。
【…あなたの恋が、ここから始まる】
…どういうこと?私の恋…あの人のことを知っているの?
あなたは徐々に輝きを鈍らせていく。そして、輝きが消えようかというとき、
【ありがとう、大好き】
そう言って、再び輝き出す。
…でも、その輝きは光の粒に変わり…そして、私に降り注ぎ…消えた。
光と共に、目まぐるしい映像が次々と私に注ぎ込まれる。
小さい頃の私、アイドルを目指した頃の私。
そして、ぼんやりとして見えなかった、あの頃の私と…
あの抱擁の相手は…星大くんだった。
はっきりと見えた。私が…今一番会いたい人。あなたが呼んでくれたあの人は、すぐ近くで、私に祈りを捧げてくれていた。
【私の恋が…ここから始まる】
あなたが伝えたかったこと、わかったよ。
あなたが…見つけてくれたんだね。
ここからは、私があなたの記憶を引き継ぐ。
これからもあなたと一緒に恋をする。
あなたと一緒に、あの人に会いにいく。
一緒に…幸せになろうね。
ありがとう。
光の粒子は、空に昇華して星のヴェールとなった。
…私は目を開く。ベッドに横たわっている。
夢を見ていた。でも、はっきりと覚えている。
そして、これから私がするべきこともわかっている。
私は…微笑んでつぶやいた。
「やっと…会えるね。」
星のヴェール 第1章 完
第2章に続く
第1章完結です。ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
小説家になろうに掲載していたのはいわゆる改訂版で、元々Xには少し違った形で掲載していました(Xも今は改訂版です)。
さて今後、物語は第2章に移行します。
星大とAI愛莉の約束は果たされるのか。
それではまた。




