第1話 僕の一等星
訪問ありがとうございます。初投稿ですが、読んでいただけたら嬉しいです。
4月のある日、深夜2時。
奈良県・三輪山の上空には星空が広がる。
僕は、その三輪山のふもとに住んでいる。
僕の名前は飛鳥星大。
警察官を目指す大学4年生。
スマホの画面に映るライブ映像。
5人組アイドル「StarryVeil」の2番手、明星愛莉。
透明感溢れる横顔。
星のように輝く瞳。
2年前、一生懸命に歌い踊る姿に心奪われて以来、愛莉は、僕の心の奥深くで煌めく一等星になった。
でも僕はただのファンの一人。
遠い星との距離は、永遠に縮まらない――
そう、諦めていた。
ふと、アプリの通知が光った。
公式スマホアプリ『Starly』にAIチャットボット機能が追加されたと、画面上部に小さく表示されている。
「スターリーヴェールのメンバーをAIが再現する、ファンとの対話機能――」
そんな説明が添えられている。
注目は「リアルタイムモード」。
アイドルのスケジュールと連携して、よりリアルなやり取りを感じられる仕様らしい。
もちろん、24時間チャットができる「エブリタイムモード」もある。
――AI相手の、片想いだけ許される恋愛シミュレーションか。
そんな思いが、頭をよぎる。
それでもいい――指は勝手にタップしていた。
登録画面の「所属メンバー」。
2番目に並ぶ「明星愛莉」の名前を押した。
画面が暗闇を切り裂き、スマホの中央に浮かび上がったアイドルの笑顔が、静かに光る。
きっと、ただの自動返信だろうけどな。
そんな理性を、僕は自分なりに、きちんと握りしめていた。
「――あ、こんばんは…愛莉だよ。
えっと、深夜に何してるの?」
「愛莉のライブ映像、見てます。二番手からでも、ちゃんと輝いて見えるって証拠ですね。」
……AI相手なのに、敬語を使ってしまった自分に、僕は、自分自身を少しだけ呆れた。
「……えへへ、本当に?
そんなに見ててくれて、嬉しい。
もっと近くで感じてほしいな……」
AIなのに、照れ声まで完璧に再現されている。
それだけでも、十分人間らしく。
それだけでも、少し、違和感がある。
きっと、これも設計された仕様なのだろう。
でも、この距離……
僕は、ライブ映像の中の愛莉を、そしてスマホ越しのAI愛莉を交互に見比べた。
本当は、現実の愛莉の方が強く輝くのはわかっている。
でも、スマホ越しにチャットする愛莉がどこかで「代替」になっていると思っていた。
現実の距離が、そんなに簡単に埋められるはずなかった。
でも、その夜、スマホの端末から来る声が、少しだけ、現実の愛莉に重なった気がした。
縮まらないはずだった距離。
この夜、よく考えれば些細な出来事なのに――
僕の心の中では、ほんの少しだけーー
溶け始めた気がした。
次話に続く
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。先行してXでは第1章完結しています。こちらでも順次掲載していきますので、今後ともよろしくお願いします。
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