001 / 目を覚ますと
初の異世界モノです。下手くそだと思います。
会話文多めです。
「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい! 今日は当たるといいね!」
「頑張ってみるよ」
「うん! 頑張れ!」
双子の姉は今日も元気だ。語尾が跳ねていることからもわかる。
対して僕はあまり気分が良くない。このところ、当たっていないからだ。
海に行くと、朝だというのに既に先客がいた。
「おはよう、おっちゃん、竜紀さん」
「おお、朔坊か。今日は当たるといいなぁ!」
そう言って豪快に笑うのは安田のおっちゃん。海釣り仲間だ。
「おはよう。朔坊の今日の狙いは何だい?」
そう言うのは竜紀さん。最近来るようになった比較的新米の海釣り仲間だ。
安田のおっちゃんは豪快で大雑把だが、釣りの腕は確かだ。
昔は、船に乗って1m超えの大きな魚を釣っていたらしい。
竜紀さんは、最近就職してその空き時間にここへ来ている。
僕の方が歴は長いが、釣り人としての腕は竜紀さんの方が上だ。
そんな2人に対して、僕――砂原朔矢は、ここ5回ほど当たってすらいなかった。
1番直近で釣れたのも小さなフグで、リバースするしかなかったから、家に持って帰って食べたのはだいぶ前だ。
「今日こそ大物を釣って見せるから、見ててよおっちゃん」
「ガハハ!威勢だけはいいな! 見せてみろ朔坊!」
その言葉に、少しムッとした。威勢“だけ”とは言わせないためにも、今日こそ釣らなければ。
そうしておっちゃんに啖呵を切ってから3時間。何も当たらず、昼食を取ることにした。
「朔坊、そう気を落とすな。こればかりはその時の魚の気まぐれだから。な!」
「うん……」
僕の心は折れかかってしまっていた。3時間、糸を垂らしていただけ。
時折竿を上げれば、そこには餌だけ食われた跡しか残っておらず、それも僕のメンタルにきた。
黙々とコンビニで買ったサンドイッチとおにぎりを食べ、針に餌をつけて海に垂らす。
クッ、クッと糸が引っ張られる感覚に気がつき、じっくりとタイミングを見計らう。
このタイミングを逃したり、逆に早かったりすると魚は逃げてしまう。
じっと、なるべく動かさないように気をつけながら待つこと数十秒。
それまでよりも強く糸が引っ張られ、竿がしなる。
急いで糸を巻き、針を引き上げる。
すると見えてきたのは、針に食いついたフグだった。
「ハッハッ、またフグか! 戻すしかないな」
「クソッ、なんで僕にはフグなんだ!」
はあ、もうやめよっかな、海釣り。生簀にでも行って乱獲してやろうか。
そんなことを考えながら、フグを針から取って海に返す。
餌をつけながら、安田のおっちゃんと話す。
「おっちゃんはどうやって釣ってんの?」
「ぁん? まあ、なんだ、その、……経験だな」
おっちゃんにアドバイスを求めた僕がバカだった。
「頼むよ、人生で一回は大物を釣りたいんだよ……」
本当に大物、1m超えは船で釣るしかないが、僕は船に乗れない。船酔いするからだ。
だから、こうして海岸の釣り場に来ては糸を垂らしているんだ。
50cmくらいの大物を釣りたいんだよ……。
「おい、朔坊! 当たってるぞ!」
「ほらほら、手伝うから! 大きいよ、こいつは!」
「うわ! やばいこれ、持っていかれる……!」
「耐えろよ朔坊! 網持ってくるからな!」
「くっ……! 僕ら2人でも重いなんてね。これは楽しみだ!」
「糸が、回らなっ……」
グイッと、僕と竜紀さんが息を合わせて引き上げ、おっちゃんが網を差し出す。
そうして釣られたのは――
2mオーバーの超・大物だった。
「うわぁ!? やば、誰か、助け……!」
「「朔坊!!!!」」
僕の上で、網に入った巨大魚が暴れる。
それに耐えきれず、僕は海へと落下した。
◇◇◇
「産まれましたよ! 奥様、よく頑張りました!」
「旦那様、奥様がついに! ついにお子様をお産みに!」
「シャル! よくやった! 赤ん坊の性別は!?」
「双子ですよ! 本当に、シャル様はよく頑張られました!」
「双子!? それで、性別は!?」
「女の子と男の子です!」
「なるほど、姉弟なのか……。 まあいい、それより、シャルは!?」
「私ならここにいますよ。焦りすぎですよ、あなた。 ……それで、名前はどうするのですか?」
「ああ、すまん、つい興奮してしまった。 名前は、エシリア。それと、アレンだ」
――それが、僕と双子の姉の名前が決まった瞬間だった。
何もせずに3年が過ぎた。何もせずに、というよりは何もできなかったのだが。
自分1人だけで動き回れるようになり(メイドの見張りという制約はつくが)、アレンとしての自我もはっきりした。
どこか朧げな記憶で、アレンではない自分がいたような気もするが、ほとんど何も思い出せない。
でも、今年1年で様々な収穫はあった。
まず、アレン・ホルト・ノクスという自分の名前がわかった。
父はヴァルディス・レイ・ノクスで、母はシャルロッテ・セナ・ノクス。双子の姉はエシリア・ツヴァ・ノクスだ。
そして、ノクス家は結構偉い貴族であることもわかった。
この国の爵位のうち、ノクス家はなんと王族分家のため大公家だった。
ちなみにこの国の名前は王国ノクスティア。
つまり、この国で2番目の貴族ということだ。
あとまあ、魔法を使うためには魔力が必要で、魔法属性がないと魔法が使えない、とか。
文字がやっと読めるようになり、最近は専ら書室に入って本を読み耽っていた。
◇◇◇
今、ノクス家はバタバタと忙しない。
理由は簡単。僕にとっては叔父である、ヴィルアス・レイ・ノクスが来るからだ。
ヴィルおじさんは、お父さんの弟であり、この王国ノクスティアの国王様だ。
少し前に他の貴族(伯爵家だが)が来たときはそこまで準備などをしている様には見えなかったが、今回は朝から、というか一昨日くらいからメイド、執事、果てはコックまで駆り出されて室内準備や掃除にあたっていた。
「アレン様、どこへ行かれるのですか!?」
「書室! 本を読んでくる!」
「それなら誰かを……。 でも手が足りてないからなぁ……」
1人でだって大丈夫なんだけどなぁ。まぁ、子供だから仕方ないけどさ。
「なら私が行くー!」
「エシル様……いえ、あなた様ではいけないのです!誰か大人を……」
「なら私が見ておくわ」
あ、お母様。お母様なら安心だ。よし、これならロンゾも納得……
「あ、シャル様、いえ、貴女様のお手を煩わせるわけには……」
しろよ。してくれよぉ。早く本を読みたいんだよぉ。
「いいじゃない。私だって我が子と触れ合いたいのよ。それに、今はメイドも執事も抜けられる状況ではないでしょうに」
「……そうですね。お願いしてよろしいですか?」
「もちろんよ。もし何かあったらすぐに呼ぶわ」
全く、ロンゾは心配性だからな。まあ、この性格だからこの家で執事長まで上り詰めれたんだろうけど。
「承知いたしました。書室から移動する際にもお声がけお願いしますね」
「わかったわ」
「ねぇ、アレン」
「? 何ですか、お母様」
「本を読むの、楽しい?」
「はい。特に最近は魔法に関する本を読んでいますね。とても興味深いです」
「そう。なら、私が王城から何冊か持って来てあげるわ」
「王城から?そんなこと……」
「できるわ。だって私、特別宮廷魔法師だもの」
そうだった。お母様はノクスティア最高の魔法師の1人だった。
「お願いします」
「ええ、わかったわ。それと、お母様はやめてくれないかしら」
「え?はい。なんて呼べば……」
「ママー!!」
「そうね、エシルみたいにママでもいいし、お母さんでもいいわよ。 それで、エシルはどうしたの?」
「えっとね、あのね、本読んでー!」
「ええ、いいわよ。……どれかにしましょう?」
3冊も持ってきていた我が姉、エシルをゆるく窘めてから僕の方に向き直る。
「それで、アレンは私のこと、なんて呼ぶ?」
「じゃあ……お母さんで」
「これにするー!!」
「わかったわ。こっちへいらっしゃい、エシル」
「うん!!」
そのあとは、ずっと読み聞かせをお母さんがエシルにしていた。
その間、僕はずっと魔法書を読んでいた。
まだ自分の属性がわからないから、できるだけいろんな魔法属性の魔法書を読んでいる。
早く属性を知りたい。魔法を極めて、いつかお母さんに魔法で勝つのが今の僕の夢だ。
朔矢としての記憶はアレンはほとんど持ちません。ぼんやり、前世があって姉がいたということを覚えているくらいです。




