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7/8

日常とは危険の隣人である。

めちゃ長です。


「オラァ、⚪︎ねぇ!!」


「アンタが⚪︎ねぇ!!」



ホテルの卓球場にそんな事件性マシマシの会話が響く。

ボールはラケットに強くひっぱたかれ、今にもへこみそうだった。

たまに入り口を通る人たちがこちらを見た瞬間に

小走りで走り抜けていくのを見ると申し訳なくなってくる。

そんな恐怖をみんなに与えている、二人。

それは.............

「何が、ビッチよ!.......こっの、クソ童貞!」

「お前に言われたくはねぇわ!」

夕夏と晋也だった。

二人の怒りが卓球場に立ち込め、殺伐とした空気に作り変えていく。

それにしても、得点係の怕維人を除いて全員が寒い視線を向けているのに全然収まらない。

そのとき、賢雄はちらっとその怕維人を見る。

目の前の試合を楽しんでいるのか目を輝かせて見ていた。

先生なのに止めないのかと思う賢雄だったが、

彼は知らない。

この怕維人こそが、この戦いを始めさせた張本人であることを……


◆◆◆◆◆


ホテルに着いた賢雄たちは新美の指示ですぐ風呂に入る。

ここでは何かイベントが起こったわけでもなく平和だったが、

賢雄にはしゃべれる相手がいなかったのでただひたすらに気まずかった。

湯船から上がった賢雄は自室へ行き、ホテル支給の部屋着に着替える。

「あぁ~、..........疲れた。」

部屋着を着た瞬間に突発的な眠気が襲ってきて、ベットにダイブする。

滑らかな肌触り、優しく包み込むような毛布、そしてベットの適度な反発感。

この3つが賢雄をいやすとともに、眠気を加速させる。

「.......あ~、たしかこの後、会議あったよな?.......あ~本当に眠たい。」

賢雄はそんなことを思い出して、片手を全力で伸ばしてスマホをつかむ。

それにアラームをセットすると、毛布をかぶり本格的に睡眠へ.........

「俺は悪くない.......この環境が悪いんだ。」

そう言いながら、賢雄は両眼を閉じていった。


◆◆◆◆◆


遠くでスマホが鳴る音が聞こえる。

重たいまぶたを開けた賢雄がアラームを消すと、時刻が目に入る。

『19:30』

あれ?おかしい幻覚だろうか?

確か賢雄は集合時刻の19時より10分早い18:50にセットしたはずだ。

「えっ、待って、それじゃあ…………」

賢雄はベットから飛び跳ねて、会議場所のホールへ向かう。

多分会議は始まっているが、行かないよりかはましだろう。

そんな思いで行くと.............


◆◆◆◆◆


と、今の状況に至る。

「今は4対6ね。」

そう言いながら怕維人は得点票をペラリとめくる。

やはり、すべてのものを武器として扱える夕夏が一歩リードしているらしい。

晋也は力任せにひっぱたいているが、夕夏は回転をかけてしっかりボールを落としている。

男子は不器用で女子は器用だという教訓はこういうところから生まれたんだろう。

そんなことを賢雄が考えていると、夕夏が台の隅を打ち抜きまた1点を獲得する。

「やったぁ~!」

「お、お”....まぇ”.......調子乗りやがって......」

晋也がギリギリと歯ぎしりをし、対照的に夕夏は晋也に誇ったような顔を向けている。

観戦をしていた賢雄もとうとう気になって、

晋也の後ろで静かに見ていた鳳翔悠馬に話しかける。

「ねぇ、悠真君。」

「ん?........どうしたの賢雄?.......あと、悠馬でいいよ。」

「そ、そうだな。........遅れてきた俺が言うのもなんだけど......この二人は何してるの?」

「いや~それがね..........明日の任務のポジションで2人がもめちゃって。」

「ポジション?」

「うん、行動役だったら例えば前でガンガン行く前衛と、

 後ろで支援する後衛とかね。」

ここで賢雄に不安が走る。

そう、自分のポジションが決まっているのではないかということだ。

賢雄自身そんなにガンガン行きたくなく、後方で前衛を支える場所にいたいが......

「あの~、悠馬?...........俺のポジションって?」

「あぁ、それなら賢雄がいない間に決まったよ。.........たしか....」

悠馬は顎に手を置いていると、思い出してしゃべりだす。

「.......前衛だった気がするよ。」

「おわったぁぁ~!」

賢雄は膝から崩れ落ちてしまう。

「なんで俺がそんな危険なところに⁉」

「えっ、だって訓練一位じゃん。」

「いやいやいや!!.....あんなんまぐれに決まってるじゃん⁉」

賢雄は手を振り全力で否定をするが、

悠馬は疑問を抱きつつ尊敬のまなざしを向ける。

「あれのどこがまぐれなの?

 最初は僕も君のことをなめてはいたけど、

 あの時あの場所での君の結果は明らかに君の実力だよ。

 君は努力ですべてを変えたんだ。」

「..........ありがと。」

褒められると恥ずかしくなってしまう賢雄だったが、

そんな風に思われていたことへの驚きも相まって何とも言えない感情になる。

「.......それでさ、結局あの二人は何でけんかしてるの?」

「あぁ、それは二人とも前衛になりたかったからだよ。」

「えっ、それって人数決まってるもんなの?」

「そうなんだよ。今回はスタンダード隊形で前衛3人の後衛3人になってて、

 今は前衛に七里先生、賢雄。

 後衛に小早川先生、穀瑠さんが入るから、1人ー1人かな?」

悠馬が賢雄にそう伝えると、賢雄はある疑問がわいてくる。

「あれ、小早川先生ってサポート役だったよね?

 自分の専門とこにじゃなくて行動役に出ちゃっていいの?」

賢雄は悠馬にそう聞くと、悠馬はけわしい顔になり考え込んでしまう。

「いや、う~ん。僕自身もそれは分からないよ。」

両手を上へ向け、肩をすくめる悠馬。

その姿を見て『五法』でも分からないのかと疑問がさらに深まる。

賢雄はチラッと新美を見る。

誰も言わなかったら、出張でこのホテルに泊まっているOLとほとんど遜色ない。

そんな感じに見えるが、本当に戦えるのだろうか?

別になめているわけじゃないが、心配になる賢雄。

しかし、そんなことを考えた賢雄にバチが当たる。

晋也が全力で打った球が、台でワンバウンドしてから賢雄に向かう。

「あっ.....」「あっ.......」

晋也と夕夏はボールを目で追うことしかできない。

そして、そのままボールは賢雄のおでこへ.......

「い”って”ぇぇ!!」

激突してしまった。

早くも赤い晴れが出てきてしまった賢雄。

とてもじゃないが痛いものは痛い。

しかし、その姿を見ていた晋也はすぐに切り替える。

「もう、あれは2ポイントじゃね~の?」

「はぁ~⁉......なんでそうなるのよ⁉」

賢雄への心配もよそに話は進んでいく。

当の賢雄はハンカチでボールが当たったところを押さえている。

本当は氷とかのほうがいい気がするが、

明日のためにできるだけ負傷は治しておきたい。

そう考えていた賢雄の後方から手が回され、おでこに氷のうが当てられる。

「.......賢雄君.......大丈夫ですか?」

後ろから投げかけられる鈴を転がしたような声。

賢雄はその声の正体に気づき、後ろを振り返る。

「...........ありがとう、夜蝶さん。」

「いえいえ、ご気になさらず。

 あと、私も悠馬君と同様に名前呼びで結構ですよ。」

今感じている痛みを忘れてしまうほど、可憐な笑顔。

そして、それに重ねての清楚感。

The女の子に心配されておでこだけでなく、顔までも赤く染まる賢雄。

そんな賢雄を見た雛は、おでこだけでなく顔全体にペタペタと当てていく。

「だ、大丈夫ですか?……………ちょ、ちょっと顔熱くないですか!?

 これ、私の使ったやつなんですけど.......匂い大丈夫ですかね?」

雛は賢雄に桃色の花が刺繍された白色のハンカチを顔に当てる。

「い、いや!.......だ、大丈夫だから!うん、大丈夫だから!!」

そう言って早口になりながら言う賢雄。

その時、卓球場に怕維人の声が響く。

「え~と、カウント『デュース』!」

そのコールにより全員が中央の晋也と夕夏の試合に目を向ける。

二人とも息が荒く、必死さがひしひしと伝わってきた。

しかし、このままでは明日の任務に支障が出てしまう。

全員がそう思っていた時、賢雄が思わず口を開いた。

「......あのさ、2人とも.....俺後衛行くから二人前衛でいいよ。」

賢雄の突然の発言に晋也と夕夏が目を丸くする。

しかし、2人は顔を合わせると賢雄に向かって言い放つ。

「なんでだよ。」「なんでそうなるの?」

「え、なんでぇ~?」

[お前ら前衛やりたかったんじゃないのかよ⁉]

急な手のひら返しに驚きつつ、賢雄は混乱し頭をかく。

そこへ、追い打ちをかけるように夕夏が言う。

「別に、前衛をしたくないってわけじゃないけど......

 あんた今のところ私たちの中で一番強いんだから行ったほうがいいって。」

「けどさ、俺後衛がいいし......」

賢雄は自分で言ったものの、こっぱずかしくなりながら答える。

その様子を見かねて怕維人は賢雄の後ろへまわり......


「バゴーンッ!!」

「イッテっ!」


背中を得点板でぶったたいた。

あまりに強くたたいたため、賢雄は背中を抑えながら床に倒れこむ。

「な、何するんですか⁉」

いきなりぶったたいてきた怕維人を賢雄は涙目で見上げる。

「あのさ~、賢雄。謙遜はいいと思うけど、自身は持ってこうぜ!」

「この業界は後衛に行くだけで自信がないとみなされるんですか?」

「いや~、そういう意味じゃないけど、

 ただ単に強い奴を前に固めたほうがいいかなって思っただけ。」

「............僕ってそれほどじゃないですか?」

賢雄はため息をつきながらもゆっくりと立ち上がる。

やはり、上には上がいる。

そんな気持ちでやっていかないと人は腐ってしまう。

そう思う賢雄にとって怕維人の考えは真逆だった。

「まぁまぁ、俺がいるから1番にはなれないけど、2番にはなれるんじゃね?」

「えっ……あ、はい。」

素晴らしい傲慢ぶりに思わず感心してしまう賢雄。

逆にこの仕事ではこれぐらいのメンタルでやらないとダメなのかもしれない。

自分が1番だと思うことで、保つことができるパフォーマンス。

しかし、その反面に欠点があることも知っている。

それは…………



「う〜ん、やっぱメンタル強化は最終的にバトルに行き着くんよ。

 やっぱ戦わせることでしか、得られない経験は絶対あるわけなんね。」



圧倒的な空気に対する読解力のなさである。

この先生は一体明日が生徒達にとって

どんな日だと思って戦わせているのだろう?

卓球場の空気が一気に冷える。

「………あれ?……俺っちなんかしましたっけ?」



「…………ふぅー……一回頭冷やしましょうか?」



賢雄は夜蝶からもらった氷のうの蓋をとって、怕維人の頭にぶちまけた。


◇◇◇◇◇


東の空から上がってきた太陽が賢雄の目をくすぐる。

それによりばたっと起きた賢雄だったが、時刻はまだ5:45分だ。

周りの男子達を見るとまだ全員が眠っていて、

カーテンを開けるのも気が引けた賢雄は洗面所に行こうとする。

辺りを見渡すとまるで修学旅行状態なのか、

バックなどが散乱していて足の踏み場がない。

賢雄は幼稚園の頃にやったケンケンパのように飛びながら避ける。

やっとのことで賢雄は辿り着くと、

鏡の前に置いてある自分の歯磨きを手に取る。

水でよくすすぎ、毛を整えてから磨き始める。

これが賢雄の朝のルーティン。

例えばプロ選手が大会の時に落ち着くためにする独自のルーティンがあるように、

人は動きを習慣化させることでいつも通りのパフォーマンスをすることができる。

賢雄はいたって意識はしていなかったが、

ここでそれが功を奏して無駄に落ち着いている。

目の前の鏡はいつも通りの賢雄を映し出す。

「……………寝癖やば。」

歯磨きを咥えながら寝癖を直そうと、クシを探す賢雄。

そこへ横から手が伸び、クシを差し出す。

「こ、こ、コレかい?」

タジタジして言葉に詰まりながらも、賢雄にクシを渡した男。

静函尚弥(せいかんなおや)

マッシュの髪が揺れて見え隠れする目が物語る、隠キャ感。

この特殊な人たちが集まるパケ校(パケット高校をさらに縮めたもの)で、

唯一平凡そうな見た目をしている。

「ありがとう、静函君。」

賢雄は片手を立てながら感謝する。

「き、気にし…なくても…いいよ。」

そう言って、賢雄の隣で歯を磨き始める尚弥。

その顔は……………

「…………緊張してる?」

「えっ⁉︎」

意図せず出た大声に遅れて口を塞ぐ尚弥。

「そ、そうみ…える?」

「う〜ん、なんかビクビクしてる感じがしたから。」

賢雄はそう言ってありのままを伝える。

実際に今の尚弥は手先が震え、どこか遠くを見ている。

サポート役ではあるが相当緊張しているのだろう。

「……大丈夫?」

「あ、ありがと……けど…そ、そんな心配し…なくていい。」

前を向きながら答える尚弥。

常時ビクビクしている尚弥だが、今回はさらに拍車がかかっている。

そんな状態な尚弥でも覚悟は決まっているように見えた。

それは目だ。

遠くを見ているようでも、覚悟が決まった目をしていた。

言うならば、家で怕維人に入学を誘われたあの時の賢雄のようだった。

「…………が、頑張ろうね。」

尚弥からそんな言葉が投げかけられる。

こんな時に言う言葉はただ一つ。



「…………おう!」



その声によって残りの二人も目が覚めた。


◇◇◇◇◇


「おはよっさん!……さぁ、みんな、準備はできてるかい?」

そんな声がホテルのロビーに響く。

ホテル内で朝食を済まし、

チェックアウトしたところで怕維人が声をかける。

「ようやく今日が本番って感じだね。

 先生は昨日夜更かししてけどみんなはしてないよね?」

何してんだよと思いながらもみんなは返事をする。

その返事を聞いた怕維人は話を進めていく。

「今日は行動とサポートで別行動をとっていく。

 行動の方は俺とに意味が指示をとって、

 サポートは良治が指示をとっていくから、

 わかんないことや、緊急事態は絶対に頼ること、いいね?」

そう怕維人が言うと、二人が前に出てきてみんなを見渡す。

「じゃあ、早速だけど行動役はこれつけようか?」

行動役の4人が怕維人の手の中にある4組のワイヤレスイヤホンを見る。

黒く光沢があるため高級感を感じるが、

怕維人はそれを一人一人に向かって投げつけ、話を続ける。

「このイヤホン万能でマイクついてるから、

 両耳にこれをつけることでそれぞれのサポート役との会話や、

 個人や全体への連絡が可能になるからね。」

確かに見てみると、イヤホンの横にマイクにある

あみあみのようなものがあるため、これでできるのだろう。

「続いて……」

まだ続きがあるように怕維人は言うと、

バックからサングラスのようなものを取り出す。

「なんですかそれ?」

賢雄はサングラスを指でさして質問する。

今から行くところは日当たりが強いわけではないので、

サングラスは関係ないと思うが……………

「チッチッチ、賢雄くん考えが浅いね。

 これは見た通りはサングラスだけど、少し違うんだ。」

怕維人は賢雄に言うと、タブレットを取り出し画面を見せる。

そこにはサングラスから見える景色が映し出されていた。

「ったく、賢雄。サポート役が指示を出すって言うのに、

 その状況がわからないと何もできないでしょ?

 だから、これをつけてサポート役と視覚共有をするってわけ。」

ちょっと怒られてしまった賢雄が黙り込んでいると、

夕夏が怕維人に質問を投げかける。

「じゃあ、服は?……服はどうするわけ?」

夕夏の発言にみんながハッとする。

確かに今、賢雄たちは私服だ。

なんか戦闘服でもあるのだろうか?

「えっ、ジャージ着ればいいでしょ。」

「えっ、ジャージでいいの?」

思わず夕夏がそんなことを聞いてしまう。

「だって、あのジャージって結構研究されて作られてんだよ。

 どうすれば人体が最も動きやすいかってね。

 実際に、男女で少し構造違うんだよ。」

生徒の驚く姿が楽しいのか、怕維人は喋りながら笑っている。

「とりま、着替えてきなよ。」

全員にそう言うと、怕維人はトイレを指差す。



「さぁ、トイレに行っといれ。」



ロビーに極寒が訪れた。


◇◇◇◇◇


全員が着替え終わってホテルの外に出ると、怕維人が誰かに電話をし始めた。

その十数分後になり、黒いワゴン車がやってきた。

そのワゴン車のステップに足をかけながら良治は言う。

『サポート役の4人はこちらですよ。』

そう言われて、1人、また1人と乗っていく。

賢雄はそれを見ていると、誰かに肩を叩かれる。

「………えっ、あ〜、お前かよ。」

「……だめなの?」

銀色の髪を後ろに束ねた蜂だった。

「……だいじょうぶ?」

「当たり前だ、任せとけ。」

賢雄は蜂に向けて軽くガッツポーズをとる。

それを見た蜂は安心したのか、ワゴン車に乗り込む。

良治と生徒4人を乗せた車にエンジンがかかった。

賢雄が手でも振ろうかと考えていたとき、車の窓ガラスが下げられ蜂が顔を出す。



「…………頑張るぞっ‼︎」


「あ、あぁ!!」


賢雄はワゴン車が見えなくなるまで、手を振っていた。


◇◇◇◇◇


別行動になった賢雄達は、怕維人と新美の引率により

バスやロープウェイなどを乗り継いで、黒部ダム手前の黒部平に来ていた。

近づくにつれて4人の体は緊張でこわばっていたが、

怕維人の一発ギャグのおかげなのか心のほうには余裕があった。

さっきまで乗ってきたロープウェイに別れを告げると、

一同は黒部ケーブルカーの乗り場へと向かう。

しかし、大人2人の後を同じ服装をした高校生たちが追う様子は、

平日の少ない人通りの中でもとても目立って見える。

「……………」

見られるという恥ずかしさに賢雄が黙り込みながら、

一番目立っているであろう人物へと視線を向ける。

「……ねぇ、賢雄あれなんだと思う?」

夕夏も同じことを考えたのか、前を歩いている新美を指さす。

いや、どちらかというと新美のバックをさしているのだろう。

それは大きなピザのような形のバックを肩にかけて、後ろに背負っていた。

新美とほぼ同じ大きさのそれを見て、みんなが気になる。

何が入っているのかと.......

「武器とか入ってんじゃないの?」

「いや、たぶんサポート役だから通信機器とか入ってるんじゃない?」

そんなことを賢雄と夕夏は話していると、すぐにケーブルカーの乗り場についてしまう。

ほとんど洞窟のようなところで、線路が奥まで伸びているのが確認できた。

数分待ったのち、暗闇の中から時刻通りにケーブルカーがやってくる。

赤と黄色を用いたこれによって、賢雄たちは黒部ダムにつくのだろう。

「じゃっ、乗ろうか。」

怕維人がみんなにそう言いながらケーブルカーに乗り込む。

ケーブルカーの横には駅員さんが立っていて、人数を数取器を使って数えていた。

カチッ!カチッ!という音が洞窟に響く。

そして、全員が乗り終えると駅員さんが運転席に行き、操作を始める。

運転席を除いて車内には賢雄たちのみ、つまり作戦会議ができるというわけだ。

「.....ん”ん。.........この先が黒部ダムだけど、着いた瞬間ばったり会うとかは

 たぶんないと思うけど一様もう一回言うよ。」

怕維人は座りながら前かがみになる。

「まず、今日のポジションは前衛は俺、賢雄、

 そして昨日じゃんけんで勝った晋也の3人。

 後衛は新美、思礼、夕夏の3人ね。」

ケーブルカーは動き出したが、怕維人は話を続ける。

「あっちでイヤホンとサングラスは着けんのは遅いと思うから、ここでもう着けて。」

怕維人にそう言われ、賢雄たちはしぶしぶ着用する。

サングラスはサングラスと言っているが、

サングラス特有の黄色がかった視界ではなく、

伊達メガネのように通常通りに見えるためあまり違和感はなかった。

イヤホンも周りの音がよく聞き取れ、ケーブルカーが揺れる音なども聞こえた。

そのため、隣からの夕夏の声もくっきり聞きとれる。

「すごいね........国立って.....」

「まったくもって同感です。」

一般の企業などではこんな製品はまずもって作れないだろう。

これぞお国の力ってやつである。

「みんな着けた?」

みんなに怕維人が呼びかける。

その言葉に全員が首を縦に振ってこたえる。

怕維人は全員がつけ終わっているのを確認すると、新美に声をかける。

「そろそろ半分でしょ?..........新美つなげて。」

「........分かった。」

そう言われた新美はあのピザのバックからタブレットを取り出し、

画面を何やらいじり始める。

「........終わったぞ。」

新美がそう言った瞬間、賢雄のイヤホンからピッ!という音が聞こえた。

それは賢雄だけじゃないのか、賢雄以外も同様に全員がイヤホンに耳を当てる。

数秒立ったのちイヤホンから声が通る。

【.....てすてす..........あぁ~、皆さん聞こえます?】

その声の主は良治のものだった。

「あぁ、くっきり聞こえてるぞ良治。」

怕維人は良治に返答する。

【それは良かった.........では生徒の皆さん、これからそれぞれのサポートと

 繋げますので少々お待ちください。】

一方的に告げた良治の声は一度消え、またピッ!という音が鳴る。

【.......賢雄..............OK?】

「うわっ、びっくりした!.....蜂か.....」

【なんかひどい。】

「ご、ごめん......そういうつもりじゃなくて......」

【ううん.......平気。】

突如聞こえた蜂の声に驚きつつも、賢雄は耳を傾ける。

【.......少し変わる。】

「えっ?」

少し変わると聞こえた言葉、それに続けてガタガタという音が鳴り.......

【.........賢雄君、少し失礼します。】

「良治さんっ⁉」

蜂から良治に変わった。

【いきなりすいません.......蜂さんとの通信前に少しお伝えしたいことがあります。】

「な、なんでしょう?」

【まず、賢雄君が喋っている言葉は振動に変換されているので、

 ちゃんと蜂さんに伝わっていますのでご安心を.......】

「そ、そうなんですね。」

【はい........そして賢雄さんのご存じの通り、蜂さんは一度に6字しか喋れません。

 なので、蜂さんはこれから簡略化してしゃべります。】

「か、簡略化?」

簡略化とは何か縮めるのだろうか?

そんなことを考えている賢雄に、良治は話かけていく。

【まず覚えてほしいことが、3つあります。】

「えっ、3つもですか?」

【はい、しかし覚えるといってもアルファベットですよ。】

「へ?アルファベット?」

【攻撃の『K』、防御の『B』、避けるの『Y』です。

 『K』は相手の体の部位を指し、『B』は自分『Y』は場所になります。

 まぁ、これは後々増えると思いますが今はこんな感じです。】

「..........待ってください.......ちょっとついていけません。」

【.....そうですね......例えば『K左上』と言われた際は、

 敵の左上を攻撃すればいいんです。】

良治の分かりやすい例えに納得をする賢雄。

「えっ、それじゃあ『B左足』とかは自分の左足を守ればいいんですか?」

【はい、吞み込みが早くて助かります。

 では、理解したようなので蜂さんに変わります。】

「はい、ありがとうございます!」

良治との通信が切れた後、すぐに蜂との通信が始まる。

【.......分かった?】

「あぁ、うん.......たぶん。」

【......心配かも。】

「まぁ、けどどうにかなると思う。」

【.......分かった....】

少し心配された賢雄だったが、何とかなると信じて蜂の話を聞く。

【.......周り見て。】

「えっ、周り?」

突如言われた言葉に疑問を持ちながらも、賢雄は周りを見渡す。

たぶん、このサングラスのことだろう。

サングラスから見える視界でしかあっちに送られないため、

周りを見渡さないと見えないのだろう。

【........うん、ありがと。】

ある程度周りを見渡し終えたとき、蜂から感謝を言われる。

「大丈夫、これやっぱ見づらいの?」

【うん、少し。】

あっち側からこれがどういう風に見えているかわからない賢雄だったが、

とりあえず見づらいということだけが分かり、

ちょくちょく周りを見渡すようにしようと心の中で決める。

.......ちょうど電車が走ってきて半分ぐらい経ったころだろうか。

いきなり車内に電話の音が鳴り響く。

ピロピロピロリン~!

「あっ、ごめん俺だ。」

怕維人のスマホに電話がかかってくる。

「あれほど、電源は切っておけと.......」

「ごめんな裁判官。」

「............相手は?」

「えっ、それ無視するの?........凩だよ。」

「それならたぶん大事な話だ、スピーカーにしろ。」

「えぇ~、お前って本当に凩にあまあまだよな......」

新美の言葉に文句を言いつつも、スマホのスピーカーボタンを押して電話し始める。

「はいはい、しもしも。」

〖先輩ッ!急にごめん、聞こえてるっ⁉〗

「お、おう......どうした急に焦って.......」



〖その車内から早く出てッ!!......全員死んじゃうよ!!〗



賢雄はその言葉にを聞き、とてつもない不安感に襲われる。

だが、怕維人はゆっくりとしゃべりだす。


「バカか、お前?......そんなんに俺が気付かないとでも?」

「えっ.......」

「全ては俺の手中だ。」


そう言って怕維人は電話を切る。

待って!という声も聞こえたが、怕維人は揺るがない。

ゆっくりと立ち上がると、それに合わせて新美も立ち上がる。

「お前ら、今すぐ拳銃(チャカ)出せ。」

怕維人自身も自身の得物を出しながら、生徒に言う。

並々ならぬ雰囲気に圧倒されつつ、賢雄達は素早く拳銃を構える。

........規則的に揺れる車内。

怕維人がゆっくりと上を見上げる。

「...........ずいぶんデカいな。」

その瞬間、ケーブルカーの天井からドゴッ!という鈍い音が鳴る。

そして、訪れる来客。



「ヒャハ!来てやったぜ国の犬ども!」



ケーブルカーの天井をぶっ壊し入ってくる大男。

両手には通常より一回り大きい斧が二つ握られている。



「敵遭遇、戦闘を開始する。」



怕維人から到底出ないであろう冷たい声で報告される。

.........そして戦いは始まった。




参考にしたいので、

耳や目が不自由な人が日常でどう過ごしているかできれば教えてほしいです。

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