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富山の黒とダムの狭間

ピロン!【富山空港には45分後到着の予定です。】

機内にアナウンスが響く。

賢雄は初飛行機という状態で、落ち着くために

機内放送で流れているクラシック音楽を聴いていた。

そんな賢雄だが、チラッと窓の外を見る。

いたるところに雲があり、幻想的な景色を作り出していた。

今の飛行機がいるのは上空28000フィート。

エベレストより少し高いぐらいの高度を通っている。

[雲の上ってこんな感じなんだな........]

雲を上から見たことがない賢雄は子供の時から

雲の上には雷神様がいると考えていた。

しかし今見ている雲は薄く、どこから見ても真っ白なのだ。

子供の思い描いた妄想と当てが外れたが、

賢雄はこれはこれでいいと思い、ずっと眺めていた。

ふと横から黒い雲が入り込み、窓の外は黒一色となる。

そして見えるのは、自分の顔だけ.........

「........鈴.........…大丈夫かな?……」


◆◆◆◆◆


「えっ、富山?」

兄の急な一言に鈴の顔が固まる。

「あぁ、富山だ。」

「えっ、........なんで?」

鈴の顔が疑問に満ちていくのが見て取れる。

「富山ってあの黒部ダムしかない秘境の地?[個人の感想です].....えっ、なに、旅行?

 それだったら、富山よりダ埼玉のほうが観光地あるよ。[個人の感想です。]」

それを聞いていた賢雄は妹がエグイことを言うなと思いつつ、話の本題を話す。

「......この前に兄ちゃん話したじゃん?.....課外プログラムの基準を満たした話。」

「あぁ、あの80点のやつ?」

「そう......で、そのプログラムが明日からあるってことを今日聞いたから........」

両者の間に沈黙が流れる。

数秒過ぎた後、鈴が手をたたき納得したように声を上げる。

「あぁ~!......だから()()丼なのか!」

「....たぶんそうだと思う。」

「な~んだ。てっきり森さんがカツを食べたいだけなのかと思っちゃったよ。」

鈴はそう言うと、リビングに向かおうと小走りになる。

だが、

「いや、そうじゃない。」

賢雄はそう言って鈴を止める。

「俺が行ったら、お前は一人になるだろ?.......そのことは気にしないのか?」

鈴はそう言われると、きょとんとしてしまう。

そして、腕を組みしばらく考えたのち賢雄に言う。

「う~ん.......ちょっと心配だけど.....お兄ちゃんが人の役に立っていればいいかな。」

鈴は悩みながらもそう答えた。

「........あっ!大丈夫だよお兄ちゃん。

 明日からも森さんが来てくれるから。気にしないで行ってらっしゃい。」

そう言った鈴の顔は笑っていたが、心の奥には寂しさがあるように見えた。。


◆◆◆◆◆


「あぁ~、着いたぁ~」

怕維人が腕を伸ばしながら手荷物受取所のを出る。

全員がそれに続いて出ると、目の前の看板が目に入る。

そこには大きな文字で『富山空港』と書かれていた。

「.......ふぅー。」

賢雄は反射的に息を吐く。

ついに来てしまったかという緊張感で武者震いがする。

しかし、これもまた始まりの第一歩と思う賢雄に後ろから声が刺さる。

「ちょ、ちょっと、服部君!」

「えっ?」

素早く後ろを振り向くとそこには

賢雄が羽田空港で買ったお茶を持っている夜蝶がいた。

「忘れてたよっ!」

「あっ、ごめん......ありがとう夜蝶さん。」

「どういたしまして。」

賢雄はそう言う夜蝶の姿を見る。

賢雄自身は人のことをまじまじと見ないタイプだが、

そんな賢雄でも目入ってしまう魅力が彼女にはあった。

整った顔に紫髪を後ろに流している姿はきれいという一言だけだった。

元々家的にお嬢様なのか、服にそれが出ている。

「服部君?」

「あっ、ううん。何でもないよ。」

賢雄がそう言うい終ると同時に怕維人が全体に声をかける。

「みんなぁ~!....えっとね..........このまま黒部ダムに向かってもいいんだけど......」

怕維人はそういうと手を合わせておねだりのポーズをとる。

生徒は何があるかわからず不思議に思っているが、

教師人は何が言いたいか分かったらしい。

「....お前.....まさか.....」「怕維人さん.......その時間あります?」

「さぁ、お前らつべこべ言わずに......ゴォ~!」


◇◇◇◇◇


今賢雄たちは空港内にあるブラックラーメン提供店の前に来ていた。

最初は空港の外に出るために動いているのが目的だと思っていたが......

「いや~、都外に出たらその土地のグルメ食わんとやる気でないでしょ。」

そう言い、怕維人は入っていく。

後ろで自分の生徒が動揺しているのにも関わらず……

「いらっしゃいませ~。何名様ですか?」

「え~と......11人です!」

「......はい、11人ですね。奥にご案内........えっ!11人!?」

驚きすぎて店員さんが二度見する。

当たり前だ、この数なんだから........

店員さんがあたふたしていると、奥からさらに店員さんが出てくる。

「せ、せんぱ~い.......」

「ちょ、ちょっと........11名様ですね?」

「はいそうですよ。」

「では、上の階の好きな席にお座りしてお待ちください。」

えっ?いけるの?

「あざま~す。」

怕維人はそう言うと困らせたのに悪びれもなく入っていく。

「本当に何も思わないの?」

賢雄の隣で夕夏が突っ込む。

さすがに聞こえず理解できなかった蜂を除き、全員が謝ってから二階に上がった。

県有が階段を上っていると、

「へ~、結構あるじゃん。」

先に二階に着いた怕維人の声が上から聞こえる。

賢雄もようやく二階に着くと周りを見渡す。

きれいな部屋に40席くらいがずらっと並んでいた。

「さぁ、好きに座っていいよ。」

そうみんなに言う怕維人は席に座ると、新美を手招きする。

その後、みんなが席に着いたとき店員さんがメニュー表をもって上に上がってきた。

「失礼します......こちらのメニュー表でお決まりになりましたらお呼びください。」

「あぁ、じゃ、もう決まってるんでいいですか?」もう決まっている。

その言葉がより怕維人に視線が注がれる。

「ブラックラーメンの大、11人前で。」

「えっ、」

「かしこまりました。もう一度繰り返します。

 ブラックラーメンの大が、11人分ですね?」

最後のチャンスだと思い、怕維人を止めようとする賢雄を新美が片手で抑える。

「な、なんで⁉︎」

「……大丈夫だ、奴を信じておけ。」

新美のその言葉に8人が考えながら待つこと数十分。

3人の店員さんが上がってきて賢雄達の前に黒い汁を用いたラーメンが置かれる。

「うっわ...........くっろ。」

誰かがそう呟くのを賢雄は聞き取る。

怕維人もそれを聞いたらしく、このラーメンの説明を始める。

「このラーメンが黒いのがそんなびっくりした⁉︎……うんうん。

 分かるよ〜。俺も最初見た時びっくりしたもん.........

 この富山のソウルフードのブラックラーメンは昭和22年の終戦時期に

 肉体労働者のために塩分を多くした、醤油マシマシのラーメンが提供されたの。

 で、それがきっかけ。」

「えっ?.......じゃあ、この黒いのは醬油なんですか?」

「そゆこと。」

この黒いラーメンの正体が分かった8人は安堵する。

しかし、言い換えればこれは超濃い醬油ラーメンということになる。

しょっぱくないのだろうか?

「さぁ、冷める前に早く食べたほうがいいよ。」

怕維人はそうみんなに促すと、みんなが目の前の割りばしを取って食べ始める。

「うっま!」

そう賢雄の目の前にいる夕夏が呟く。

「賢雄も食べてみなよ。」

夕夏にもそう言われたため、賢雄も一口いただくことにした。

だが、大である故にあまりのボリュームで、賢雄の箸が止まる。

どう食べればいいか迷って周りを見た賢雄は、

この店に連れてきた張本人である怕維人が視界に入る。

[えっ、.........何だあれ?]

賢雄はその不自然な状況にに疑問を抱く。

なぜなら、まだ怕維人はラーメンを食べていないから。

普通は連れてきた人は真っ先に食べないか?と思う賢雄。

しばらく見ていると、新美が怕維人に箸を割ってから渡す。

「ありがとう。」

「まぁ、いつも通りだからな..........」

そんな二人の会話に集中していた賢雄に、夕夏から声がかかる。

「賢雄?いらないなら食べちゃうよ?」

「あぁ、ごめん。」

謝りながら、思い切ってラーメンを持ち上げる。

それを口にすると賢雄は呟く。

「うまい。」

「でしょ!」

賢雄の言葉を聞いた夕夏が満面の笑みで答える。

夕夏はよほどこのラーメンが気に入ったらしい。

そんなこんなで、賢雄と夕夏は一心不乱に食べ続けていると、

夕夏の隣に座っている蜂が賢雄に紙を掲げる。

『賢雄.........これ凄くしょっぱいから食べてくれる?』

そう書いて、大半が残されたラーメンを前に出す。

ぎょっとした賢雄が慌てて聞く。

「えっ、しょっぱいの苦手だったっけ?」

「ううん......」

「俺多分きついんだけど.........食べれる?」

「..........無理。」

「まじか~.......」

そう嘆いていると、前の席から賢雄への批判が飛ぶ。

「賢雄!アンタさぁ、女の子が苦しんでるのに見捨てるの?」

「なんか.......夕夏って男女差別激しくない?」

そう思ったことを口にすると、睨んでくる夕夏。

これは危ないと思い、賢雄は話を逸らすがてらに理由を話し始める。

「いや......これはですね......蜂がしょっぱいものが苦手じゃないのに

 なんで食べられないのかなって疑問に思っただけで、決して見捨ててなんか.....」

「そういうこと?」

蜂は納得したように賢雄に尋ねた。

すると、新しい紙にすらすらと書き込んでいく。

『私は耳が聞こえないから、他の五感の感覚が人より鋭いの......

 だから、みんながしょっぱくないものも私はしょっぱく感じちゃうの。

 ほら、目が見えない人が音に敏感なのと一緒だよ。』

そうわかりやすい解説が書かれていた。

それに納得した半面、食べなくてはいけないという責任が生まれる。

しかし、最後に紙にはこのようなことが書かれていた。

『もし無理なら..........』

賢雄はその先の言葉を聞いて、迷わず決行に移した。


◇◇◇◇◇


「げっぷ~。」

苦しそうな顔で膨れたお腹をした怕維人が、店から出てくる。

「まさか、自分の生徒がこんなにも食べられないなんて..........」

怕維人は、自分のお腹を見ながら愚痴を漏らす。

実は夕夏以外の女子生徒はラーメンの量に耐えきれず残してしまい、

そこに蜂が『先生に食べてもらう』という鬼畜なことを書いたため、この状態である。

「大丈夫ですか、先生?」

「まぁ、まぁね.......ギリギリって感じ。」

そう言って心配する賢雄に、怕維人は口に手を抑えながら答える。

よろよろとした歩調で歩いていれば、誰だって心配になるだろう。

だが、そんなみんなの気持ちを気にせず、いきなりその場にある声が響く。

「おい。」

賢雄の後ろにいて、ずっと黙りっぱなしだった晋也が怕維人に言う。

「えっ?………どうしたの?」

「これからどうやってダムに行くんだよ?」

ぶっきらぼうに問う晋也に怕維人は教えようとしていたが、

自分もわからなくなったのかスマホを取り出しながら答えた。

「………えーとね…あ、そうそう。

 ここから…立山黒部アルペンルート…?ってものでいくよ。」

しどろもどろに答えている姿を見ていると全員が不安を抱える。

それは生徒だけでなく、大人も同じらしい。

「はあ、だからあれほど……」

良治が愚痴を言いながらスマホを持って調べ出す。

「……皆さん、怕維人さんのルートで合ってますよ。」

みんなが、特に怕維人がほっとしている。

そしてそのおかげで自信がわいたのか、怕維人はみんなの方を向き喋り出す。

「さぁ、飯を食ったことだし……行きますか。」

怕維人を先頭にして歩き出す。

目指すは黒部ダム、日本最大の水力発電の地。




投稿頻度落ちました。

すいませんでした。

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