入学式ってこういうもんだから。
ようこそ2話へ
「すず、大丈夫だったか?」
怕維人から教えられたルームナンバーを頼り
寮の自室に入ると、そこにはフリフリのワンピースを着鈴の姿があった。
「うんっ!大丈夫だったよ。
運転してくれた人も丁寧で、椅子もふかふかだった。」
「そうか......それならよかった。」
怕維人曰く鈴が乗った車は坂道と渋滞が少ないルートを通っていたらしい。
そのため遅くなるから早めに出発したが..........
こっちのほうが遅かったとは、驚いた。
「あっ、滑り台!滑り台大丈夫だったか?」
ふと賢雄は自分が猛スピードで滑り、ずっこけた滑り台を思い出す。
体が弱い鈴にあの滑り台は危険だろう。
「えっ?.......滑り台?........何のこと?」
まるで自分が発した言葉が意味不明のように返された。
「えっ、だって、滑り台で地下ここに来たんじゃないの?」
「........お兄ちゃん、さっきから何を言ってるの?エレベーターの間違いじゃない?」
「はっ?........エレベーターで、来たの?」
「....................うん。」
賢雄の思考が疑問と怒りに染まる。
賢雄にとってもあの滑り台は怖い思い出TOP5に入るくらいだった。
それを滑らなくて済むというエレベーターがあるというのに.............
ここで賢雄は次怕維人に会ったら一発お見舞いすることを決心した。
しかし、その決心は思いの外すぐに決行されることになる。
その男はドアをいきなり開け、言い放った。
「賢雄~!、俺らの学校は特殊だからもう入学式始めるぞ!」
手にはこの学校の制服みたいなのが握られている。
「ほら、賢雄!」
玄関から投げられた制服をキャッチすると、賢雄は言い放つ。
「ありがたいですけど........
妹から聞きましたよ。エレベーターあったんじゃないですか。」
2割怒りを混ぜながら怕維人に聞く。
「...?...........!!、あ~!」
最初は意味が分からなかった怕維人も、遅れて理解する。
「いや、あれには理由があってね......伝統なんだよあそこを通るのは。
健常者の入学生はあそこを通ることが暗黙のルールみたいなものなんだ。」
「その伝統で死にかけたんですが..........?」
「まぁ、俺じゃないからね。理事長に言ってくれよ。
そんじゃ!体育館集合だからな、遅刻だけはすんなよ!」
「あ、ちょっ!」
賢雄が制止する声を聞かずに怕維人は出ていく。
残された賢雄、鈴、制服。
その中、鈴が兄に声をかける。
「まぁ、とりあえず着替えてきたら?」
「.......そ、そうだな。」
◇◇◇◇◇
「うわ~!きれいな制服!」
着替えてきた賢雄に鈴が明るい表情を向ける。
「...........たしかに........制服のデザインはいいな。」
そう言い、賢雄は自分の着ている制服に視線を落とす。
黒色のブレザーに真っ白いワイシャツ、
その上に薄い黄色のネクタイが明るい雰囲気を出し、
青黒く落ち着いた色のスラックスが清楚感を醸かもし出している。
「私、その校章好きかも。」
「これ?」
鈴に諭され賢雄がブレザーについている校章を見る。
すっきりとした青に、桜型のものだ。
さすが国立といったもので、制服も随分手が凝っている。
「...........そういえば今何時?」
「ん?今は14時だよ、集合一時間前だからね。もう行っててもいいんじゃない?」
「うん。俺もそう思うけど.........」
賢雄は心配そうな目つきで鈴を見る。
「.......!あ~、私は大丈夫だよ。
なんか、ヘルパーさんみたいのが来るらしいから。」
「そうなのか?」
「だから、気にしないで..........
鈴はそう言うと賢雄を玄関まで押し出し、ドアを開ける。
いってらっしゃい、お兄ちゃん!」
「...........あぁ、行ってきます。」
鈴は感じる。
兄の背中はとても大きく、とても偉大であることを。
◇◇◇◇◇
黒鳥居を潜り抜け、右に曲がると体育館はすぐそこにある。
最近建てられたか、塗りなおされたか知らないが
赤いペンキがキラキラと輝いていた。
二階建ての体育館で、入り口の前までたどり着くと、
関係者は上へ、新入生は一階へと書いている看板がたてられていた。
その通りに賢雄は一階入り口に垂れ下がっている赤白の横断幕を潜り、体育館の中へと入る。
「でっか!なにこれ⁉」
賢雄は入るなり、体育館の広さに絶句する。
目測で長さ80メートル、高さ40メートル。
明らかに賢雄が前までいた中学校の比ではないのだ。
周りを見渡していると、体育館の前方にあるモニターに目が行く。
『前から詰めてお座りください。』
普通は出席番号順だろと思いながら賢雄は体育館の前へ足を進める。
一時間前なので、一番前の列は全部開いていたが一番最初というわけではなかった。
賢雄は3番目だった。そして前の二人はどちらとも女子だった。
(.........き、気まずい......)
異性×入学式×声が響く広い空間=超気まずい。
この完璧な黄金の計算式が賢雄の頭で完成する。
隣との距離は約1.5メートルといったところ。
ぜめて1メートル弱なら何か話しかけられたかもしれない。
だが賢雄はこの微妙な距離が入学式を厳粛に行うという意味が込められていると、
自分の独自の見解を見出し、下を向きながら今後行われるであろう
自己紹介のテンプレでも考えようとしていたところ............
「あの~..........もしかして服部賢雄君?」
「.........?」
右隣に座っていた女の子が、響かないようか細い声で話してきた
「はい?そうですけど.........」
名前が知られているため知っている人かと思い、
顔をよく見るとそういうわけではなさそうだ。
「あの~......失礼なんですけど.....あったことありましたっけ?
「えっ!......忘れt........ん”んっ!....ううん。一方的に知っているだけよ。」
「.....?…....一方的?」
「あぁ、ごめん。ちょっと分かりづらかったよね。地元が一緒ってだけよ。
けど、体力テストが連続で全国一位なんてみんな風のうわさでやってくるわ。」
賢雄は顔を赤らめる。
「そうか.......知っている方でしたか。」
しかし、恥じらいとともに緊張感がほぐれていくのを感じる。
「.....あなたの名前は?」
「えっ、ウチ?.......じゃない!私は........!」
じゃないという言葉があまりにも響いたため、二人は肩を浮かせてしまう
「あ、ごめん.....」
「だ、大丈夫。別に言いやすいほうでいいんじゃない?」
「.......ウチの名前は長部智夕夏っていうの。....よろしく。」
「うん。こちらこそよろしくお願いします。長部智さん。」
黒い髪を後ろに流しているが、ところどころギャル感が抜けない女の子。
そう賢雄は解釈する。
と、そこに夕夏が腕時計を見ながら話しかけてくる。
「時間たつの早いね、後20分ちょいだって。」
「えっ?」
疑問に思った賢雄が、周りを見渡す。
見えるのは、無数に並べられたパイプ椅子のみ。
「.........?......どうしたの?」
「俺ら以外にもいるはずだよね?
.............それなのになんでみんな来ないんだろう?」
その疑問に夕夏が便乗する。
「まぁ、気になるけどそのうち来るんやない?」
「そう、だよね?」
◇◇◇◇◇
全然来ない。
残り三分前である。
夕夏と話していたらこんなじかんである。
「えっ、もしかして三人俺らだけ?」
その言葉に夕夏は秒で否定する。
「そんなわけある?生徒三人なんて漫画の世界じゃあるまいし........?」
最後の感じに自信なさげを感じるが、賢雄も同じ気持ちだ。
そもそもこの学校は怕維人から聞くのが初めてだった。
もしかしたら、紹介制でめちゃくちゃ生徒数少ないんじゃないか?
そのような考えが賢雄の頭を駆け回る。
そんな時、ようやく待望していた音が背後から鳴る。
バタッ!という音がして横断幕が払いあげられ、複数の人影が現れる。
「うわっ、来たわこの場所.......もううんざりだな.......な、陽?」
「うん。まぁ、それに対しては俺もめんどくさく感じるよ........穀瑠さんは?」
「私はどうでも良い..........」
「ちょっと三人とも......もっと落ち着きをもとーよ。」
「.......いいよ。雛ちゃん。こいつらはもうほっといたほうがいい......」
ごちゃごちゃ言いながら5人が入ってきた。
まるで遠足なようなノリで来ているが大丈夫だろうか?
「ん?......前から詰めろだってさ、さっさと座ろうぜ。」
最初に言葉を発していた赤髪の明らかに陽キャ感キラキラな男が、
ほかの4人に指示通りに座るよう呼び掛ける。
言われた4人は返事をして座っていった。
「.........ねぇ、賢雄君。」
そんな5人を見ていると、身をこちらに乗り出し小声で
俺に話そうとする夕夏の姿があった。
「なんか、あいつらいけ好かなくない?」
「まぁまぁ、初見で決めるのは......」
たしかに場違いの雰囲気を感じるがそんなに気になることでもない。
その5人も今は黙っている。
最低限のモラルと価値観は持っているらしい。
「ねぇ、アンタ今あの人たちのこと酷く言ってなかった?」
「........ううん?ぜんぜん。」
夕夏に問われた賢雄だが、無自覚なのか平然と答える。
「そう?けどさ..........見て。」
そう言って夕夏は賢雄に腕時計を見せるように手を伸ばす。
集合時間ぴったりになっていた。
賢雄は時計を見た後、音をたてないようにゆっくりと顔を上げる。
......それと同時に体育館に聞きなじみのある声が響き渡る。
「あ~、あ~、てすてす。きこえてる~?」
その声の主は、あのおちゃらけ怕維人のものだった。
怕維人は壇上でマイクを持ち俺ら八人に語りかけている。
まぁ、先生だから当たり前か、と賢雄は思った。
「いや~お集まりいただきました推薦入学者の皆様、
本校にお越しくださりありがとうございます。只今より会式しま~す。」
そんなあいさつで始まった入学式。怕維人はさらに話を続ける。
「俺のスカウト者三名に、パケット常連の名家『五法』から一人ずつの指名で計8名。
これから元気にやっていきましょー.........はい!拍手!」
だだっ広い空間に線香の火のような勢いの拍手の音が響く。
「..........ありがとうみんな、ノリがいいね.......
あっ、えっと、この8人は推薦者なので、推薦者クラスに入ってもらいます。
そして、え~と、行動志望が4人、サポート志望が4人のため........」
怕維人が話していた時、それは起こった。
「あぁ、分かった。早く済まそうぜ。」
切り裂くように、ハイトの話を邪魔するように入ってくる声。
あの最初の赤髪のものだ。
「せんせー、結局言うと、俺らは普通合格者とは
別のクラスで別のカリキュラムで行動すんだろ。」
「.........まぁ、そうなるね?それがどうしたの吾車晋也君?」
吾車と呼ばれた男は、椅子から立ち上がり怕維人を見上げる。
「だからか?.......普通の奴らを除いての推薦だけの入学式を行う理由。」
「察しがいいね。さすが『五法』の名家出身なだけあるね。」
普通合格者を抜いての入学式?
ふつうそんなことをする学校があるだろうか?
「........まぁ、俺たち教員側の見解は普通と推薦の差別化をしておきたいんだ。」
「なんでそこで差別するんだ?」
「..........今は話すべきじゃないね。場所と時が改まってからかな?
さぁ、俺も話がしたいから座った座った。」
そう言われて不服な表情を浮かべながら吾車は座った。
確かに、不思議ではあるが納得はできる理由。
差別化をしたほうが後々なんかよいことでもあるのだろうか?
ここで県有はあることに疑問を抱く。
[.......けど、普通だったらそういうのって喜ばないか?
なんで吾車はあそこまで不服なんだ?]
そんなことを考えながら、賢雄は吾車が座るのを見る。
壇上の怕維人もそれを確認すると再度話始める。
「まぁ、言うことないし、いろいろかっ飛ばすけど.......
俺の自己紹介をしよう、みんな知ってると思うけど俺の名前は七里怕維人だ。
新しく1年推薦クラスを担当することになった。一年間よろしく!」
そう言い終わると、ぺこりとお辞儀する。
数秒頭を下げた後、顔を上げた怕維人はみんなに呼びかける。
「そんじゃま!早いけど教室いこっか?」
全員にそう呼びかけ、体育館から本校へ続く昇降口に向かう。
賢雄と夕夏はスピード感に取り残されつつも怕維人の後を追った。
◇◇◇◇◇
階段を上がり、廊下を少し進むとそこに教室はあった。
『S-1』と書かれている木札があり、
その下には丁寧に入学おめでとうと手書きで書かれていた。
「はいはい、みんなの愛しのクラスだよ~。さぁ!中に入った。」
そういわれ全員が中に入ると、書きかけの黒板アートが目に入ってきた。
何を書こうとしたのかは意味不明だが、熱意だけは伝わってくる作品。
怕維人はそれを素早く消すと、一人一人の席を名指しで決めていく。
その決められた席に全員が座るのを確認すると、怕維人は全員の顔を見て言う。
「今席に座っただろうけど隣にいる人が、
今から解散しない限り、ここを卒業してもほぼ永久的に同じペアだからね?
え~と、行動とサポートで一セット。俺の偏見で組んだから確認よろしく。」
永久..........賢雄はそう言われ、隣の少女を見る。
キラキラと輝く銀色の髪を後ろでまとめた、
いわばポニーテールが彼女という存在を際立たせていた。
確か彼女は賢雄や夕夏より早く来ていたはず。
そんな考え事をしながら彼女を見ていたが、
こっちを向いてくれず、ずっと黒板に貼られている座席表を見つめている。
「.......ちょっといい?」
「.............」
「?.............ちょっと?」
「.............」
呼びかけても返事が返ってこない。
(えっ.......俺なんかした?)
賢雄の心にダメージが入る。
見回すとほかの人たちは自己紹介ぐらいまでいっているのに、
自分たちだけ進展がない。
少し悲しそうな顔をしていると、
クラス内を見回っていた怕維人に肩をたたかれる。
「大丈夫?」
「これが大丈夫そうに見えているあなたの目は腐ってますよ。」
「......?」
怕維人が疑問に思っていると、賢雄が話す。
「まだ一回も話せていないんですよ。」
「あぁ、なる。任せとけ。」
怕維人は軽くそう賢雄に言うと、隣の少女の前に歩いていき手を振った。
そして、膝立ちすると少女の肩を指でたたき始めた。
「トンタッ、トントントン、トンタッタッ、タットン、トンタットントン、
トントントン、タットンタットンタットン。」
たたき終わると少女は慌ててこちらを向き、ペンと紙を取り出す。
そこに素早く文字を書き込むとこちらに見せてくる。
『お待たせしてすいません.......悪気はないんです、ごめんなさい。
私の名前は、石鳥蜂といいます。』
女子っぽく丸みがあり、きれいな細い字でそう書かれていた。
「別に気にしてないよ。大丈夫。
声に出すっていうのは恥ずかしい人もいると思うし、実際僕もだし。」
そう賢雄は蜂に言うと、蜂は困惑した顔色になる。
彼女の眼はずっと賢雄の口元らへんに集中していて、
なかなか目を合わせてくれない。
そこに素早く怕維人が入り込むと、手で何かごにょごにょと動かし始める。
その、ごにょごにょが終わると蜂はクスッと笑い、紙に何かを書いた。
そしてペンを置き、紙をこちらに向ける。
『私はもともと生まれつき耳が聞こえません。』
「えっ?」
驚いた。変な感じはあったものの、恥ずかしがっているだけかと思った。
「あ、ごめんなさい。その、失礼なこと言って.......」
賢雄はすぐに謝るが、言い切るより先に蜂に紙を突き付けられる。
『全然気にしていただかなくて大丈夫ですよ。
今のは私のせいでもあると思うので...
あ、話していただく際には確実性があるため、
ここに書いていただくと助かります。』
賢雄は自分のペンであわてて書く。
『すいません。本当に気づかいのない発言をしてしまいました。
ところで蜂さん。耳が聞こえないというのはどのくらいなのでしょうか?』
賢雄が書き終わると、蜂が答える。
『全く、0です。耳の鼓膜が最初からないので..........
あ、けど6文字以内ならまともに話せると思います。』
そう書き蜂はペンを置くと
「こんなふうに。」
賢雄の耳元でささやいた。
「うわっ!!.........びびった~。」
驚きと恥じらいで囁かれた耳を抑える賢雄。
その反応を見てくすくす笑う蜂。
おかげで賢雄の顔と耳は真っ赤に染まっている。
『喋るのお上手ですね。』
『はい、一音一音に集中することで、
皆さんと同じくらいの発音くらいにはなれますよ。
ですが、6文字が限界です。』
『それでもすごいですよ』
そんな風に書いていると、怕維人が手を叩くと同時に足を床に数回たたく。
振動による蜂への対応だろう。
この人、気が使えたんだと賢雄は考えを改める。
「だいたい自己紹介ぐらいまで行けたかな?
ここでちょっと謝っておきたいことがあって..........
俺まだ知らない人とかがいるのに、
よゆーで行動とサポートの説明のこと飛ばしてたわ。」
確かに何だろうとは思っていたが........
「ちょっとざっくりと説明するね。
まず、パケットで仕事をするにつれて二つの役職があって、
まず一つ目が行動役。これは戦闘とか体を動かす系だね。
二つ目はサポート役。行動役を支えながら調査、
任務中とかだったら案内とか助言とか、そこら辺の仕事。
で、今は行動役が4人、サポートが4人ね。
えっと、服部[男]、吾車[男]、長部智[女]、穀瑠[女]で4人。
そして、石鳥[女]、鳳翔[男]、夜蝶[女]、静函[男]でこっちも4人ね。
みんな大丈夫?理解できた?」
まぁ、大体は分かった。
つまり、賢雄のサポートは蜂だということだ。
よろしくとあいさつしようとした賢雄。
すると、左肩からトントンとたたかれる。
目を向けるとそこには紙をこちらへ向けた石鳥の姿があった。
『頑張ろう!!』
大きな文字でそう書かれていた。
子供かよ。そう賢雄は思う。
今日は少しこの学校とみんなのことが知れた。
それをうれしく思う反面心配にもなった。
本当にここでやっていけるのか、と。
だが、この言葉を見た瞬間、蜂の思いに触れることができた。
まるで、賢雄から過去のしがらみをすべて取っ払ったように。
賢雄はそれを感じると、無意識にペンを持ち書いていた。
書く言葉はもちろん........
『お互いにな!』
ちょっとキザっぽい感じがしたが、思いが伝わればそれでいい。
そう思っている賢雄に声が降りかかる。
それは六文字以内でしか喋れない女の子からだった。
「やるぞ、あいぼ!」
「......はは、う忘れてるし。」
満面の笑みを浮かべる相棒に俺はグータッチで返した。
◇◇◇◇◇
「あの怕維人先生?」
みんなが帰宅した放課後の教室に賢雄と怕維人の姿があった。
賢雄の用事はただ一つであった。
「なんか教えてもらわれてないこと多すぎじゃないですか?」
「へ~、フォイグザンポ~?」
「例えば『五法』とかですよ...........なんですかあれ?」
「う~ん。『五法』はね、パケット隊員を多く輩出する名家五つのことを指すんだ。
吾車家、穀瑠家、鳳翔家、夜蝶家、で最後の静函家。
この5つの家は幼少期からパケットになるための特殊訓練を積んでる家なんだ。
だから、パケットの本部からの信頼も厚くて、推薦生徒権があるんだよ。」
「すいせんせいとけん?」
いきなり出てきた意味不明の単語に賢雄の顔は険しくなる。
「この学校に推薦入学する生徒を選ぶ権利のことだよ。」
「へ~、それはすごいですね。
でも、それじゃあなんで怕維人さんのほうが推薦の権限が強いんですか?」
「..........どゆこと?」
「......どうして怕維人さんが推薦生徒権を3つも持ってるんですか?」
「う~ん。なんでだろうね?先生だから?」
顔をかしげながら人差し指を顎に持ってくる怕維人。
そこに賢雄が詰め寄る。
「ごまかさないでください。気になるんです。」
「ちぇー。...........はぁ、えっとね。それは俺が強いからだよ。
あっ、自画自賛とかじゃねーぞ。そこんとこはき違えんなよ。
漫画とかによくいる最強キャラ枠だからな。」
「..............えっ?あなたが?」
「そう俺が。」
学校の方は明らかに適材適所という言葉をご存じないのだろうか?
もし、この人が最強なら先生にすべきではない。
ていうか、こんな人が最強なら、この国終わっただろ。
いや、確かに強者感はあったけどさ..........
「気のせいかな。今ものすごくひどいことを言われた気が........」
ちょっと疑問そうにしている怕維人に言い放つ。
「この学園、安全性大丈夫ですか?」
怕維人が蜂の肩を叩くシーンはモールス信号を使っています。




