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第三話 幼なじみと応援団

「そう!応援団!学ラン着るやつよ!応援団に入りたくてこの学校受験したんだけど、入学してみたらもうずいぶん前に廃部になってたのよね。それで設立に向けて生徒会とやりとりしてて、やっと設立趣意書と約款が出来たから持って行ったの。そしたらね、こんなんじゃダメって言われちゃった。それで怒っちゃったの。あれは不当な圧力よ!きっとDSの妨害だわ!」


 行動力のあるヤツだな。俺たちまだ1年生だぞ。


「DSって何だよ?ゲーム機か何か?」


「ディープステートよ!知らないの?世界を裏から支配してる闇の政府だよ」


 山村によるとDSの魔の手は地方高校の生徒会にまで伸びているらしい。DSすげーな。


「その趣意書、ちょっと見せてよ」


 暗室のカーテンから山村の腕が伸びてきた。小学校の時はあんなに真っ黒で細かった彼女の腕は、普通の女の子の白い腕になっていた。ちょっと薄暗い照明に照らされてなんだかなまめかしい。俺は彼女の手にある趣意書の紙を受け取る。それを持つ指はぷにぷにしていてなんだかかわいらしかった。


「・・・・これ、趣意書?」


 俺は趣意書を見て眉根を寄せる。あからさまに、怪訝そうな口調になってしまった。


「そうよ!趣意書よ!文句ある?」


 どうしてこれで通ると思った?ていうか、この文章力で良くこの高校合格したな。市内では一番の進学校なんだが。


「趣意書、作るの手伝おうか?」


「えっ?手伝ってくれるの?でも、敵はあのDSよ!」


 それ、いいから。


 顧問予定の先生と一緒に考えれば早いんだろうけど、まだその先生も見つかっていないらしい。何人かの先生にお願いしてみたが、みんな別の部活の顧問をしているので承諾がもらえなかったそうだ。


「部活の設立についてのガイドラインの用紙とかもらっただろ。基本はそのガイドラインが要求する内容を書けばいいはずだよ。今持ってないようだったら後でもって来てくれたら手伝うよ」


「ねぇ、勇樹くんって手先、器用?」


 なんか急に話題が切り替わった。


「DSの手先ほどじゃ無いと思うけど、まあ、手先は器用な方だよ」


「何言ってるの?DSなんてあるわけ無いじゃない」


「・・・・・・・」


 なんだろう?この敗北感。


「ちょっとね、このホックがうまく留まらないの。勇樹くん、できるかな?」


 山村はそう言ってカーテンの隙間から真っ白いサラシとホッチキスを出してきた。なんだかいいにおいがする。


「!?いや、ちょっと、それは・・・・」


 山村は上半身裸だった。暗室の電球に照らされた山村の肌は淡く光っていて、見る者に神々しさすら感じさせてしまう。彼女は左手で胸を隠してはいるが、その大きく柔らかい物体が手の形に押さえつけられていて、15歳のあどけなさを残している表情とは対照的に男の原罪とも呼べる欲望を刺激している。


「大丈夫よ、左手で隠してるから」


「お、幼なじみだからってちょっと距離感近すぎない?」


「何照れてるの?意識しすぎだよ」


 何でもないように山村は上目遣いで言うが、隠されているからこそ男心をかきたてるものがあるのだ。例えるならピラミッドに封じられた真の聖櫃を追い求める学者のような心境だろうか。そんな欲望と戦いながら、俺は出来るだけカーテンの方を見ないようにサラシとホッチキスを受け取った。


「上半分のホックがとんでるでしょ。その内の2カ所くらい補修できればとりあえず大丈夫。サラシがないとブラウスのボタン閉じれないのよ」


 サラシと言っていたがやくざ映画に出てくるような包帯型の物ではなく、長さ1m・幅40センチくらいの一枚布だ。初めて見るがコルセットのようなものかな?まあ、コルセットもラノベの中でしか知らないのだが。


 手渡されたサラシのホックの部分や全体の作りを観察する。山村の肌に直接触れていたサラシだ。つまりは下着。ブラジャーのようなものだろう。その布地からは山村の甘い香りが漂ってくる。ちょっと(かなり)ドキドキしながら、ちぎれている箇所をホッチキスで補修する。ホッチキスの針が肌に刺さらないように止める向きにも注意した。


「ありがとう。助かったわ。一時はどうなるかと思っちゃった」


 カーテンから出てきた山村は、ブラウスの前を安全ピンで留めていた。こうしてみると、爆乳だと言うことは全然わからない。


「なんで、そ、そのサラシなんてしてたの?」


 聴いて良いものかどうかちょっと考えたのだが、やはり爆乳を隠していた理由は知りたい。気になる。


「う、うん、ほら私って小学校の頃ガリガリだったでしょ。で中学から急に大きくなっちゃって、ちょっと大きすぎるのってコンプレックスなんだよね。絶対に誰にも言っちゃダメだよ。不思議な力ってあるんだから」


 生徒会に一人で怒鳴り込むくらい積極的な山村にもコンプレックスがあるらしい。まあ、なんとなく贅沢なコンプレックスのような気もするが。それより不思議な力ってなんだ?ちょっと怖いんだけど。


「じゃあ、明日趣意書のガイドライン持って来いよ。一緒に考えよう」


「うん!明日持ってくるね!でも勇樹くんが一緒に応援団に入ってくれて良かった!じゃあ、また明日ね!」


「・・・・・・え?」



本作をお読みいただき誠にありがとうございます。

現在の投稿予定は以下の通りとなっております。

面白そう、続きが気になるといった方は、是非ともブックマークをして頂けると嬉しい限りです。

執筆のモチベーションに繋がります。

今後とも、応援よろしくお願いします


第一話 幼なじみと爆発

掲載日:2025年11月10日 07時10分


第二話 幼なじみと邂逅

掲載日:2025年11月10日 12時10分


第三話 幼なじみと応援団

掲載日:2025年11月10日 20時10分


第四話 幼なじみと涙

掲載日:2025年11月11日 07時10分


第五話 幼なじみと過去

掲載日:2025年11月11日 12時10分


第六話 幼なじみと初恋

掲載日:2025年11月11日 20時10分


第七話 幼なじみと大人の女

掲載日:2025年11月12日 07時10分


第八話 幼なじみと父の青春

掲載日:2025年11月12日 19時10分


第九話 幼なじみと新入団員(1)

掲載日:2025年11月13日 07時10分


第十話 幼なじみと新入団員(2)

掲載日:2025年11月13日 19時10分


第十一話 幼なじみとデリカシー

掲載日:2025年11月14日 07時10分


第十二話 幼なじみと事案

掲載日:2025年11月15日 07時10分


第十三話 幼なじみとコンプレックス

掲載日:2025年11月16日 07時10分


第十四話 幼なじみと幼なじみの彼氏

掲載日:2025年11月17日 07時10分



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