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第十七話 幼なじみとビデオテープ

「お邪魔しまーす」


 店舗には「リカーショップ仲山」の看板が掲げてある。小売り用の商品棚は道に面した一部にだけ置いていて、店舗面積のほとんどは飲食店向けのアルミのビア樽等の在庫が山積みになっていた。何回も前を通ったことはあったのだが、未成年でお酒にも興味が無いのでじっくり見たことが無かった。店の奥まで観察すると、なかなか本格的な酒店だということがわかる。従業員らしき人が何人か働いていた。


 俺たちは仲山さんに案内されて、店舗の横にある自宅の玄関に入った。一階が店舗で二階と三階が住居になっているようだ。


「遠慮無く上がって。ビデオデッキはお父さんにセッティングしてもらってるから」


 俺たちは二階の居間に案内された。20畳くらいはありそうな大きな部屋に、50インチほどの大型テレビと高そうなスピーカーが設置してある。アナログのレコードプレーヤーも置いてあった。仲山さんのお父さんは趣味人なんだろうか。ビデオデッキはテレビの前のローテーブルに置かれていて、その後ろから映像ケーブルが伸びている。


 テレビの反対側にはソファが置いてあるが、なんとなく座るのに気が引けて俺たちはラグに直接腰を下ろした。


「じゃあ、再生してみようか」


 “平成13年学園祭”と書いてあるビデオテープをデッキに入れてリモコンの再生ボタンを押す。電池は生きているようだ。そしてデッキからウインウインと機械の動作音が聞こえてくる。初めて実物のビデオデッキという物を見たのだが、なんだか新鮮に感じてしまうな。


 しばらくすると50インチのテレビに画像が映し出されてきた。ノイズがかなりあって画質が悪い。


 “昔のビデオってこんな感じなんだ”


 俺は技術の進歩に想いを馳せながら妙に感心してしまった。この25年間の進歩って侮れないな。


『日本ビデオ倫理協会 18歳未満の方への・・・・』


 俺は停止ボタンを押した。


「え?ちょっと、何で止めるのよ?勇樹くん」


 まずい。これは想定外だ。ラベルを貼り間違えたのか?いや、これはカモフラージュだ。家族に知られないように、巧妙に隠された秘宝で間違いない。


「いや、ちょっとこれはまずいんじゃないかと・・・」


 山村と仲山さんは青いバックスクリーンに白い文字で表示されたテロップにピンと来てはいないようだった。女子高校生に“ビデ倫”はなじみが無いだろうし“18歳未満・・・”の文字が一段小さくなっていたせいだろう。


「何で?学園祭のビデオを見るのが何でまずいの?ちょっとリモコン渡しなさいよ!」


 山村は体を寄せて俺からリモコンを奪い取ろうとする。俺は後ずさって抵抗するがどうしたものか。お父さんが隠れてアダルトビデオを楽しんでいたということ正直に伝えるべきだろうか?


 俺と山村がリモコンで攻防戦を繰り広げていると仲山さんが腰を浮かせた。


「デッキの本体にも再生ボタンがあるので押しますね」


 無情にも仲山さんは禁断の鍵を開けてしまった。なんてこった。


『新任女教師爆乳性教育 学習教材は“わ・た・し”』


 空気が固まった。山村もテレビの前で顎を落として固まってしまった。仲山さんは両手で口をかくし目をまん丸にして画面を凝視している。俺はすぐさまリモコンの停止ボタンを押したのだが、何故か反応しない。再生が停まらないのだ。よく見ると、リモコンの小さな液晶表示が消えていた。ちょっとだけ残っていた電池の電力が完全に切れてしまったようだ。


 俺がまごまごしていると、テレビは次のシーンに移り変わった。学校の廊下らしき場所を、ブラウスをパツンパツンにした爆乳女教師がいやらしい腰つきで歩いている。そして廊下のかどで男子生徒とぶつかりブラウスのボタンがはじけてたわわな果実があらわになった。


 どこかで見たようなシーンだな。


 ゴクリ


 ん?生唾を飲む音が聞こえた。聞こえたよ。山村と仲山さんの方を見ると、二人とも画面を見たまま固まっている。顔がまっ赤だ。こういうのに興味があるのかな?


 俺はリモコンを諦めてデッキに手を伸ばし停止ボタンを押した。


「な、だからまずいって言っただろ?」


 二人はゆっくりと俺の方に顔を向けて、コクリと頷いた。その動作がシンクロしていてかわいいな。


 念のため他のビデオも確認したが、残念ながら全てアダルトビデオだった。しかも、どれも爆乳女教師物。確か山村さんのお母さんは中学校の先生をしていたと記憶しているので、きっとお父さんの好みドンピシャだったのだろう。爆乳かどうかは知らないけど。


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