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第十三話 幼なじみとコンプレックス

「あーはははははは!おもしろすぎる!」


 小島は涙を流しながら腹を抱えて笑っている。これが抱腹絶倒というやつだろう。四字熟語がこれほどぴったり当てはまる光景はそうそう無いはずだ。


「クークククク!廊下でぶつかるって事、本当にあるのね。漫画の世界だけかと思ってた。陽佳里、食パンとかくわえてなかった?」


 それいったいどこのテンプレだよ。


「それで陽佳里の爆乳を揉んじゃったのね?どうだった?水原くん。感動した?」


 くっ、なんと言うことを聞いてくるんだ。俺はどもってしまって何も答えることが出来ない。顔が熱くなってくる。これはどう返答するのが正解なんだ?難易度高過ぎだろ。


 山村が爆乳である事は幼なじみの何人かは知っているらしい。急に大きくなったことがコンプレックスというのは、主に男子からの目線が嫌なんだそうだ。


「陽佳里も隠さなくてもいいのに。中学の時、男子に“ホルシュタイン”ってからかわれたのが原因でしょ?みんな陽佳里のことが好きだったんだよ。ほら、好きな子に意地悪するってやつ」


 なんとなく解る気がする。山村は確かにかわいいし、その山村の胸が急に大きくなったら中学生男子の視線は釘付けだろう。その気持ちを素直に表現できないのは、ラノベやアニメに精通している俺にはよくわかる。


「水原も覚えてるかな?永山って男子。あいつがしつこく陽佳里のことからかってたのよね。陽佳里のこと好きだったんだろうけど、あれじゃ嫌われちゃうよね」


「ほんとあいつ最低男よ。今思い出しても腹が立つわ」


 山村は口をへの字に曲げてあからさまに不快な表情を作っている。どうやら相当からかわれたようだ。


 ちなみに、同じ中学からは山村と小島と俺のあまり知らない小郷さんという女子三人だけこの高校に合格したらしい。市内の成績上位5%程度しか合格できないからそんなもんだろう。しかし山村、良く合格できたな。


「これがラノベだったらそこから恋愛に発展するのが王道パターンかな?」


「勇樹くん!絶対にそんな展開無いから!!それと仲山さんも秘密にしておいてね!!」


「そうそう、仲山さん。もし誰かに言ったら不思議な力で死んじゃうんだって」


 話を振られた仲山さんはキョトンとした顔をこちらに向ける。そして右手をゆるく握って口元にあてた。


「ふふふっ。みなさん面白い。幼なじみで仲がいいんですね。私も楽しく応援団、やっていけそうです」


 今日初めて見た仲山さんの笑顔だ。おそらくつらい事を抱えているんだろうけど、笑顔になるのは大事なことだよ。笑う門には福来たるって言うしね。


 俺たちはどうでもいい雑談をして饅頭を食べた。山村が紅茶のおかわりが欲しいと言うからお湯を沸かして入れてやる。仲山さんが応援団に入った理由なんてもうどうでも良くなるくらいに、くだらないことで笑い合った。高校生活ってちょっと楽しいかも。


「京子、今日は一緒に帰ろう。いいよね」


 山村と小島は同じ中学で家も近い。この学校から自転車で30分もかかる場所なので、二人自転車を並べて帰るのだろう。自転車の並走は交通違反だから注意しろよ。


「うん、いいよ!一緒に帰ろう!」


 山村の誘いに小島は笑顔でかえす。今日は彼氏と一緒に帰らないのかな?


「よかったぁ。また断られたらどうしようかと思った。いつもは彼氏と一緒に帰ってるの?」


 ブッ


 小島が紅茶を吹き出した。勘弁してくれ。


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