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ナツゴコロ

直哉×大地

 夏、ではないんだけど、ジリジリと夏に向かって一歩一歩近づくようなこの季節。海ではしゃぐ観光客も増えてきた。そんな中で大地が買ってきてくれたアイスは結構嬉しかった。

 え。たかってるわけじゃないですよ。大地の好意です。好意。



「なおやー、これでいい?」



 袋から出てきたのはカップに入ったチョコチップのやつ。大地が選んでくれたってだけで幸せなんだけど、やっぱりヒンヤリとした感覚は気持ちいい。思わず笑みを浮かべた俺につられるようにして、大地もふにゃりと笑う。幸せ倍増!とか一人で考えていると、大地のアイスが袋から取り出された。それは、練乳いちごとデカデカと書かれた、棒状のアイス。


「だ、だいち…」


「なに?」


「いえ、なんでも…」


 わけわかんないさーと小首を傾げ、パクリとアイスにかじりつく大地。が、想像以上に冷たかったらしくすぐ口を離してしまった。つめひゃい、とかなんとか言いながら少し間をおいて、赤くて小さな舌でペロペロとアイスを舐めだした。ちょっと、もう この子ったら、誘ってるようにしか見えないんですが…!



「なお?なんかしたさ?」


「へ? あ、ナンデモナイデス…」



 大地のかわいい姿に見とれていると、いぶかしげな視線を投げられた。慌てて自分のアイスに目を移して、一口パクリ。少し溶けてるなとか、おいしいなとか思ったのは、ほんの一瞬。

 ちらり。また大地に顔を戻す。暖かな気温でとろりと溶けて垂れた白い液体が大地の舌で掬われる。ちゅっ、なんてリップ音がまた余計な想像を掻き立てるんだ。ちっこい口で一生懸命ぺろぺろ。

 脳内で自動変換されてるのは言うまでもありません。何にって?いやん、聞かないでくださいよ。






「なお」


「えっ!?」


「まだなんも言ってないさぁ」



 変なのってケタケタ笑う大地がかわいすぎるって、マジで。あ、アイス一口しか食べてないのに半分溶けてる…



「それ、一口ちょーだい」



 そう言うなり伸びてきた手にあっさりとスプーンを奪われる。半個体半液体になったアイスが大地の口に運ばれる。すんなり果たされた間接キス。不意打ちにドキドキが止まらない。



「今度はなおの番ね」



 あーんと差し出されたのは、さっきまで俺がうらやましいと思ってたソレ。ここは大地の言葉に従うことにして、んぁっと口を開ける。すると、ニヤリと大地が笑った。



「くらえ!!」


「んンッ!? む、ぅ!」



 物騒な言葉が聞こえたと思った次の瞬間、アイスが喉の奥に突っ込まれた。いきなりのことで、思わず呼吸が停止する。アイスが引き抜かれてからは、ゲホゴホと咳が止まらない。涙目になりながら大地を見ると、べぇっと舌を出された。



「ヤラシイ目で見てたおしおきさぁ!」



 かぷり。先端をかじった大地は、楽しそうにんふふと笑った。

 もう、完敗です。








おわり


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