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フードへのこだわり

 俺は服をかえる事にした。

 光の雫はカドクアッタという古代遺跡付近にあるそうで、カドクアッタまでは森を抜けなければならいそうだった。

 未開の森に入る事になるんだ。動きにくいローブっぽい今の服よりもズボンの方が良かった。

 ラーシリア(ラーさん)には明日の朝、ゼシルの屋敷の前で合流する事にしていて、俺とイヴマリア(師匠)はロゼスザリアの町に出かけた。

 ゼシルの家でディナーを食べた後だったから夜空には星が出ていた。

 妖精の森(ミュアルの森)は夕方を過ぎるとほとんど真っ暗だけど、さすがは大都会ロゼスザリア、街灯や店の明かりで昼間のように明るかった。

 人通りも昼間とほとんどかわらないくらい人が多く賑わっていて、人がどこからわいて出てくるのか、夜だというのに何でそんなに皆用があるのか不思議だった。

 リョウザさんから聞いた町の服屋に入った。

 動きやすいタイトなズボンや上着を選び、試着室で着替えた。

「どう? イヴマリア(師匠)

 俺は試着室から出てイヴマリア(師匠)に見せた。

「下は良いけど、上はダメね」

「え? 何で?」

「だってフードがついてないじゃない」

「フードはもういいんだよ。俺もう魔法使いじゃないから」

 ていうか魔法使いの服って何でフードついてるんだろう?

 俺がさっきまで着ていた服は、元からフードがついていてそれをズボンとくっつけてローブ風に作り直したものだった。でも魔法使いのローブって標準でフードがついてるんだよね。男女関係なく。いつ、どういう時に使うのか考えてもわからなかった。

「フードは私がいるのよ」

「あ・・・・」

 フードはイヴマリア(師匠)がよく使っていた。

 自分の部屋だと主張するくらいだった。

「胸のポケットはどうかな?」

 今来ている服の両胸にポケットが一つずつあった。

 提案しておいて何だけどイヴマリア(師匠)の体が全部入らないのはすぐに見て取れた。

「やってみる」

と言ってイヴマリア(師匠)は胸のポケットに入ってみた。

 やっぱり下半身しか入らなかった。

 仮に全身入ったとしてもバランスが悪かった。例えば右側にイヴマリア(師匠)が入るとイヴマリア(師匠)の体重で右前にひっぱられて歩きづらかった。それと胸の真ん中のボタンに負荷がかかり、近い将来ボタンがはじけ飛んでいくのが容易に想像できた。

 イヴマリア(師匠)がフードを使う前はどうしてたんだっけ?

 肩に座ってたんだっけ?

 いや違う。肩に乗るようになったのは旅をするようになってからだ。その前は、妖精の森(ミュアルの森)にいる頃は木々が至る所にあったから小枝で休んでたんだ。

 でもフードがなくなると肩への乗る率が増える事になる。片方の肩ばかり座ると凝るから交互に座ってねとイヴマリア(師匠)に話した事もあった。

 フードは俺にとっても必要なものだったようだ。

 俺は今着ている服と似たような服でフード付のものはないか店員さんに聞いてみた。

 だが、なかった。

 今着ている服に特注でフードを付ける事ができると言われたけど値段を聞いてやめた。

 長方形の黒いポーチと、大きいボタンを二つ買い、ゼシルの屋敷に戻って自分で上着にフードを縫いつける事にした。

 でも店の人に付けてもらえば良かったとすぐに後悔した。

 服の費用はすべてゼシルが持ってくれるためそもそも金額を気にする必要がなかった。

 でもそれよりもやっかいだったのがイヴマリア(師匠)の変なこだわりに火がついてしまった事だった。

 俺が上着の背中に黒いポーチを針で仮止めする。俺が上着を着る。イヴマリア(師匠)がポーチに入って感触を確かめる。

「今度はさ、ちょっと斜めにずらしてみようよ」

 俺は上着を脱いで、仮止めしていた黒いポーチを外し、斜めにして針で仮止めした。そして俺が上着を着る。イヴマリア(師匠)がポーチに入って感触を確かめる。

ミカネル(ミカ)、ちょっと歩いてみて」

 俺が部屋の中を歩いてその時の感触もチェックする。

「左肩からポーチへは入りやすくなったけど、これだと片足に体重がかかるから立ちづらいなあ~ 全然休めないよ~ やっぱりポーチは水平が良いよね。でもボタンの位置はさっきより上にしてみようよ」

 俺は再び上着を脱ぐ、針でポーチを仮止めして・・・・最後は部屋の中を歩かされた。

 これを何度繰り返させられたか。

 イヴマリア(師匠)はフードの中で色んな格好をしているそうだった。

 例えば俺が歩く時、フードの中で寝ていると、以前のフードは逆三角形の形だったためイヴマリア(師匠)の体がくの字なるのだけど、この時俺の背骨に腰が当たって痛かったのだそうだ。

 今の長方形型のポーチだと、背骨に腰が当たらないポジションがあるそうなんだけど、今度は肩甲骨に頭がぶつかるそうだ。

 それとポーチから左右の肩へ乗る時のスムーズなアクセスも出来るか確かめてもいた。羽を使わずに手と足で登った方が疲れないんだそうだ。

 という事で様々な格好でのベストポジションを探していた。

 あの時店の人に付けてもらっていれば、不便ながらも我慢したに違いなかった。

 でもこの脱着式のポーチはつけて良かったと後々になってすごく思うようになった。

 イヴマリア(師匠)はフードで寝ている時、起こすとすごく機嫌が悪かった。

 イヴマリア(師匠)が寝ている時、イヴマリア(師匠)を起こさないようにローブを脱ごうとチャレンジするのだけど、上手くいった事がなかった。

 だから俺は宿屋に着いてローブを脱ぐ前に必ずイヴマリア(師匠)に声をかける。

 返事が返ってこなければ寝ている時で、イヴマリア(師匠)が起きるまで俺は椅子の背もたれに背を預けずに座るか、近くをぶらつくかして時間をつぶさなければならなかった。

 でも脱着式になった事でそれが解消できた。

 まず両ボタンの穴に棒を通す。次にポーチからボタンを外し、棒を机の端などにかけておけば、イヴマリア(師匠)が寝ていても起こす事なく、俺もすぐにベッドで寝転がったりする事が出来た。

 イヴマリア(師匠)が納得してようやく終った頃には夜中の深い時間になっていた。

「これで良いよね! 見てミカネル(ミカ)! ここにね水とか入れられるよ! こっちは何をいれようかな~」

 イヴマリア(師匠)が楽しそうに言った。

 黒いポーチの中には内ポケットと外ポケットが二つずつ付いていた。

 イヴマリア(師匠)は内ポケットの一つに水が入った小瓶を入れた。前のフードは収納なんか当然だけどなかった。

 このポーチは俺がかぶる事も出来ない。このポーチは最初から完全にイヴマリア(師匠)の部屋だった。



 翌朝、昨日夜寝るのが遅かったけど俺もイヴマリア(師匠)も早くに目を覚ましていた。

 イヴマリア(師匠)は俺よりも早くに起きていた。

 いつもと服装が違う事に気づいた。

「あれ? その服、昨日ゼシルからもらったやつになかったよね?」

 イヴマリア(師匠)はゼシルから服を三着もらっていた。

 最終的に四つの候補が残って三つに絞る時、イヴマリア(師匠)は選べなかったので、俺に決めてくれと言った。

 その中には今着ている服はなかった。

 イヴマリア(師匠)はゼシルのようなゴスロリの服装をしていた。

 緑を基調としたゴスロリの服だった。

 イヴマリア(師匠)の桃色の長い髪は、いつもは赤い紐で後ろで結ってポニーテールにしているけど、この時はおろしていた。

「昨日ね、ゼシルからディナーの後でもらったの」

「へぇ~、そうだったんだ。似合ってるね」

「そう?」

「うん・・・・服は緑だけどブーツは白なんだね」

 ロングブーツというやつだろう。

 (もも)の高さまであって、靴紐が足から腿まで編み上げられているデザインだった。よくもまあこんな小さな紐を通せたね。とてつもなく細かい仕事だよ。

「そうなの、白なの。ゼシルってセンス良いよね」

 イヴマリア(師匠)はゴスロリの服装を気にいったようだった。

ミカネル(ミカ)、髪のびたね。切ってあげる」

 いつからだったか忘れたけど俺はイヴマリア(師匠)に髪を切ってもらうようになっていた。

 妖精の森(ミュアルの森)に来た当初は、前髪と横は自分で切っていて、後ろは見えないので後ろだけでお願いしていたのだけど、いつの間にか全部切ってくれるようになった。

 バルコニーに椅子を出して俺は座り、イヴマリア(師匠)は袖をまくって、小さなハサミで俺の周りを飛びながら髪を切ってくれた。

 前は腰にさしていた剣で髪を切っていたのだけど、誤って俺の手の平を斬ってしまった事があってからはこの小さなハサミを使うようになっていた。

 当然だけど小さいから時間も手間もかかった。

 俺はもう全然気にしてないんだけどね。と何度もイヴマリア(師匠)に言ったのだけど、イヴマリア(師匠)は絶対に剣で髪を切ろうとしなかった。

「じゃーん、完成! 服に合わせて短く切ったよ!」

 鏡を見ると確かにいつもより短めになっていた。

「おお! 良いじゃない! ありがとう、イヴマリア(師匠)

 イヴマリア(師匠)は誇らしげに笑った。

 コンコン、とドアが控えめにノックされた。

「はい、どうぞ」

「失礼します。そろそろ出発になります。お客人お準備を」

 ゼシルの使いの人がやってきて言った。

「わかりました」

 俺は上着を着てフェニクスリボルバー(タイプ2)が入ったホルスターを腰に装着し、イヴマリア(師匠)と共に部屋を出て行った。

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