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王都からの招待状

 鴉人(あじん)の古城の一件から、妖精の森(ミュアルの森)妖精の岩山(アズロック)の妖精達は交流をするようになっていた。

 何人かの妖精の岩山(アズロック)の妖精達とジンゴロさんを妖精の森(ミュアルの森)に招待した。

 道中魔物が出て危ないから俺達がボディーガードをして送り迎えをした。

 ジンゴロさん達は妖精の森(ミュアルの森)で十日過ごした。

 ジンゴロさんの技術で妖精の森(ミュアルの森)は便利になった。

 ジンゴロさん達を妖精の岩山(アズロック)に送っている道中、意外な人から声をかけられた。

「お~い!」

 オカリナ奏者のいた町レトリーフに続く山道の入り口から少し上った所に物見(やぐら)が建てられていた。

 山賊に再び山道を奪われないように建てたのだろう。

 物見櫓にいる人が俺たちに手を振っていた。

 その人は櫓をおりて、「おーい、行かないで!」と言いながら走ってきた。

「あれは確か・・・・」

 顔には見覚えがあった。

 レトリーフ(オカリナ奏者がいる町)の人だった。

 名前は思い出せなかった。

「あ、ども、久しぶりです」

「こんにちは~」

 俺の右肩に乗っているイヴマリア(師匠)が手を振って言った。

「・・・ぜえぜえ・・・・・ふう・・・・やあ、久しぶり。遠くから灰色のフェニックスが見えたから、君らじゃないかって思ったけどやっぱりそうだったか・・・・いや、待ってたよ」

「待ってたって俺達をですか?」

「ああ、君たちがコムー山の賊を追い払って岩山の道を開放してくれただろ? 王都から君達に褒美を取らせるから来るようにって伝えに来たんだよ。君らがどこにいるかわからないから、ここを通るかもしれないって事で代わり番で待ってたんだ」

「山賊追い払ったのは俺らじゃないすよ。追い払ったのは火の精霊のタキビ君です」

 星の形をした火の特殊精霊タキビ、今は妖精の岩山(アズロック)のジンゴロさんの家にいる。

「まあでも君達の仲間みたいなものだよね?」

「まあ・・・そうですね」

 俺達の手柄ではないけど、仲間かどうかと聞かれれば仲間だった。

「・・・・ともかく伝えたからね。はい、これ王都からの招待状。確かに渡したからね!」

 レトリーフ(オカリナ奏者がいる町)の人は物見櫓に戻って行った。



「俺、行かない」

 妖精の岩山(アズロック)の中央部に俺達はいた。

 中央部は縦長の石がいくつかあって、それに俺は腰掛けていた。

 俺を囲むようにして岩の妖精や木の妖精の皆が座っていた。

「何で王都に行きたくないんだ?」

 ジンゴロさんが不思議そうな顔で聞いてきた。

「都会嫌い」

「王都はとても綺麗な城と町並みだと聞いた事があるぞ」

「都会怖い」

「怖いって・・・・褒美をくれるって行ってるんだぞ? 行ってもらってくれば良いじゃないか」

「そうよ~ 褒美よ~ 何かしらね~?」

 イヴマリア(師匠)が目を輝かせて言った。

「私も興味がある」

 ラーシリア(ラーさん)が楽しそうに言った。

 コムー山の賊を倒したのはタキビ君だけど、王都には俺とイヴマリア(師匠)ラーシリア(ラーさん)で倒したという風に伝わっていた。なので、イヴマリア(師匠)ラーシリア(ラーさん)も俺と同じように褒美が用意されているそうだった。

 ラーシリア(ラーさん)は、町にある木造の建物などを燃やしてしまう可能性があるので基本的に自分からは近づかないけど、本当は近くで見たかった。人の作った建物や町に興味があった。

 王都は床も壁も基本的に石造りだそうだし、許可も貰っているので人間の町に近づける事自体が嬉しいようだった。

 俺はこの王都に行く流れになっているのを変えたかった。

「でも実際にコムー山の山賊を追い払ったのはタキビ君だよね。タキビ君が褒美をもらうべきだよ」

「オイラ行かない。オイラここに住むって決めたんだ!」

 タキビ君は俺の右手にある大きな岩の上に立っていた。

 タキビ君は高い所が好きで大体高い所にいつもいた。

「行って戻ってくるだけだよ。ラーシリア(ラーさん)イヴマリア(師匠)がいるからちゃんと戻ってこれるよ」

「いやだ! オイラここを離れない!」

 タキビ君は頑なに妖精の岩山(アズロック)から出る事をこばんだ。

「でもさ・・・」

「いやだ!」

 タキビ君は俺が言う前にさえぎって言った。

 故郷を離れた事をよほど後悔しているようだった。

「タキビ君が行くとしても行かないとしてもあなたは行くのよ? 招待状もらったからっていったってさ、人間とのやりとりはあなたの方がスムーズに行くじゃない」

 俺の左肩に乗っているイヴマリア(師匠)が呆れ気味に言った。

 俺の役割をさりげなくタキビ君にまかせようと思ったのだがダメだった。

「私もイヴマリアと同意見だ」

 ラーシリア(ラーさん)も気づいていたようだった。

「あなた紅茶飲みたくないの?」

 イヴマリア(師匠)が俺の顔を覗き込んで言った。

 元々食に関して俺はあまり興味がなかった。

 だから基本的には食べ物は何でも良くて、妖精の森(ミュアルの森)での食生活は大豆と野菜ばかりだけど不満はなかった。

 でも唯一飲みたくなるものが紅茶だった。

 たまに「紅茶が飲みたいな」とつぶやいているのをイヴマリア(師匠)は覚えていたみたいだった。

「王都には変わった紅茶がいくつかあると妖精の森(ミュアルの森)の長老から聞いた事がある。何でも紅茶に果物を加えるのだそうだ」

 ラーシリア(ラーさん)は長老様といつも話をしているからどんどん知識が増えていっていた。

 しかし王都に果物を加える紅茶がある事まで知っているのか。俺は知らなかった。

 紅茶と聞いて俺の心は激しくゆすぶられた。

 もうずいぶん飲んでなかった。

 あの高貴な香りが鼻をよぎった。

 果物を加える紅茶・・・・そんなものがこの世にあったなんて・・・・それはぜひ飲んでみたい。

「今回はラーシリア(ラーさん)も招待されてるよね。何も心配ないじゃない」

 イヴマリア(師匠)が俺の肩をポンポンと触れて言った。

 それもそうだ。危険はなく、褒美をもらって、久しぶりに紅茶を飲める。言う事ないじゃないか!

「じゃあ・・・・行ってみようかな」

「行こう、行こう」

 イヴマリア(師匠)が言い、ラーシリア(ラーさん)がうなずいた。

「はい、これ」

 ジンゴロさんがメモ書きを渡してきた。

 メモ書きには工具や部品類が書かれてあった。

「ついでに買ってきておくれ」

「もう、しっかりしてるなあ」

「またフェニックスリボルバーをパワーアップさせてあげるから」

「うん、わかったよ」

 俺達は王都に旅立った。



 王都ロゼスザリア。

 王都という名の通り王様がいる所だ。

 三万年前、隕石から人類を含むすべての生物が魔力を得た。魔力を得た人間は魔法を使うようになった。魔法使いは体内にある魔力を火や水にかえる事が出来た。それらは色んな事に応用できた。農業にも応用する事が出来たため、農作物が干ばつで取れなくなるという事がなくなった。つまりこの世界は食料危機という事がなくなっていた。

 食べるものはあるけれど戦争がないかと言われればそんな事はなかった。

 お互いの主張がぶつかると人々はぶつかった。俺の前世の加藤頼道の時代と一緒だ。

 だがロゼスザリアは五百年間戦争を一度もした事がなかった。

 魔物大群が襲撃してきたっていうのはあったけど、隣の国にちょっかいを出す事もなければ、ちょっかいを出される事もなかった。強力な人達によって守られていたからだった。

 王都は大きかった。

 遠くからでも城が見えたし、町を囲う壁、門、何でも大きかった。

 当然行き交う人も多く王都に近づくにつれ、人とすれ違うのも多くなった。

 ラーシリア(ラーさん)は俺達のすぐ上を飛んでいたから、すれ違う人は最初ギョッとした。

 でも、物珍しく見る事も話しかけられる事もなかった。レトリーフではかなりの人に話しかけれたのに。でもその理由はすぐにわかった。

ミカネル(ミカ)、見て」

 イヴマリア(師匠)が指差した先には頭は狼、身体は人間の獣人がいた。

 誰も警戒する事もなければ、注目する事もなかった。

 さすがは王都、獣人も珍しくないようだった。

 ああいう人もいるのだ、ラーシリア(ラーさん)のような火の特殊精霊も珍しくないのだろう。

 ラーシリア(ラーさん)はこの距離で他の人間や獣人などあまり見る機会がないから、興味深げに見ていた。といってもラーシリア(ラーさん)は常識があるのでジロジロと見る事はしない。

 ラーシリア(ラーさん)は楽しそうだった。

 ロゼスザリアの門は小さかった。

 入口と出口に別れていて、それぞれ大小があった。大きい方は馬車が通れるくらい幅があるけど、小さい方は人が二人並んで入るのがギリギリの狭さだった。大軍に攻められた時は守りやすいかもしれないけど、出撃する際には混雑しそうだった。でもこれは考えられた作りだった。門を大きくする必要はなかった。ロゼスザリアの軍は空から出撃するそうだから。

 城の門の前に受付があったので招待状を見せた。

 門番が招待状に書かれている内容と俺らを見比べていた。

 確認を取るからといって一旦奥に引っ込んでまた戻ってきた。

「お待たせ。君達は通っても良いよ・・・・でも、そこのフェニックス? でいいのかな? 君は上空を飛んで城に直接行ってくれないか? 町の建物は基本的には石で出来てるけども扉や窓枠なんかは木で出来ているし、のぼりとかもあって火事になったら大変だからさ」

「・・・・わかった」

 ラーシリア(ラーさん)は少しガッカリしたようだった。

「しかし、君は身なりの割りにお金持ちなんだね」

 門番の人が俺を見て言った。

「え? そんな事ないですよ。何でそう思うんですか?」

「花の妖精が一緒にいるからさ。妖精を飼ってるんだろ?」

「違うよ。この人は私の弟子で私はお師匠様なの」

 イヴマリア(師匠)が俺の肩に上半身を預けて言うと、門番の人がそうなの?という目をしてきた。

「そうなんですよ。でも花の妖精を飼っていると何で金持ち何ですか?」

「花の妖精はさ、自由にさせてあげないとすぐに死んじゃうんらしいんだよ。例えば檻とかに入れておくと三日と持たないらしい。だからうんと自由にさせてやる必要があるんだけど、どんどん要望が大きくなるらしくてさ、よほどの金持ちじゃないと飼う事が出来ないんだって。繊細で我儘なのが花の妖精って俺は聞いてるよ」

「はあ~、そうだったんですか」

と言ってイヴマリア(師匠)を見た。

 繊細で我儘か、我儘は合ってるかもしれないけど繊細はどうかな?

「何~」

 イヴマリア(師匠)が俺のほっぺに手をめり込ませた。

「イタタタタ。何するのイヴマリア(師匠)

「今私の事繊細じゃないって思ったでしょ!」

「思ってないよ・・・・」

 こういう事をする人は繊細ではないよね?

「金持ちじゃないんなら町中では妖精はあまり見せない方が良いよ」

「え? でも妖精を飼うのは難しいんですよね? 危なくないんじゃないですか?」

「いや、危ないのは君の方だよ。金持ちだって思われるから」

「あ・・・・」

「まあ、城の中は大丈夫だけどね。町では気をつけた方がいいよ」

「わかりました。ありがとう」

「ミカネル、私は上空から城に向かう」

「うん、後でね、ラーシリア(ラーさん)

 ラーシリア(ラーさん)は飛び立って行った。

 俺とイヴマリア(師匠)は門をくぐって町の中心にある城を目指した。

 城では意外な人達と再会する事になった。

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